EX6 ハンバーガー転生3
「王さまがそういったのか?」
「うん、ていうかその感じだと前任者と会ってない?」
「会ってないな」
産まれてから守るっていうなら一年前から来てることになるのか。こんなわかりやすい鎧、見かけたらすぐにわかるはずだが、タスレ村に駐在してたりするのだろうか。
「……あ、ここにいます……」
「ひっ!?」
テーブルの下からだ、影に隠れて何かいる。アリサが100のほうで叱る。
「王さまの勅命と心得よ!」
「はいぃ……」
テーブルの下から出てきたのは巨大な女性だった。
「……あ……聖騎士大隊長の……オンブルと申します……」
大きい体を小さくしてオドオドしている。この人が聖騎士大隊長の一人なのか?
「……一年間お世話になりました……」
「お世話してないよ! なに? ずっといたの!?」
「……はい、ずっとみていました」
「あれも?」
「……あれとは」
「夜の……」
「……それは……音だけですが……」
「そ、そっかぁ」
照れちゃうなぁ。アリサが再度俺に聞いてくる。
「ね、身辺の護衛についてもいいでしょ?」
「うーん、ベビーシッターてきな感じならいいかなぁ」
「聖騎士大隊長をベビーシッター扱い!?」
「いやさ、俺たちって夫婦揃ってご飯作れないから、そろそろ離乳食も食べさせてやりたいしさ」
この一年間セニャンたちに頼りっきりだったからなぁ。子育てが落ち着いたら。親孝行しなきゃ。
「いやだよ、私はあくまで王様からの崇高な使命で動いてるんだから」
「ですよねー、じゃあお引き取り下さい」
「そういうわけにいかないよ」
オンブルは勝手に守護ってくれてたからよかったかもな。俺たちの育児は俺たち家族でやる! ……でもご飯は作ってほしい!
「頑固ね、ならアイナさまから落としちゃおう」
「バッガッガ! アイナは俺の意見に従うぜ」
「亭主関白バーガーじゃん」
「い、いや、それはアイナの性質と言いますか、アイナに別の意見があるなら俺も尊重するし」
「あたふたバーガーじゃん」
「……ちょっといいですか……?」
オンブルが申し訳なさそうに右手をあげる。俺はクラウンをぷにっと縦に振る。
「……この一年間のあいだに何度か魔物が近くに来ていました……」
アリサが「えっ!?」と驚く。
「そんなに驚くことじゃないさ。青猪程度なら近くまで来ることはあるぞ」
「……いえ、見たことのないタイプでした……」
「守ってくれたのか?」
「……幸い、魔物は夜に行動するタイプだったので……私は影の中なら音速を超えて動けるので、その……勝手ながら始末しました……」
「ありがとう」
俺が目を見て言うと顔を逸らしながら顔を赤らめる。
「その見たことのない魔物ってのはちょっと気になるな、うーむ、これは家族会議だ、聖騎士大隊長を飼っていいか、のな」
「扱いどんどんひどくなってない!?」
「オンブル、ちなみにその魔物たちの中で一番高いランクはどのくらいだ?」
「……Aランクです……」
Aランクか、モーちゃんと同じ。うん脅威だね。これは──
「緊急家族会議だ!」