EX5 魔王と勇者9
ジゼルが立ち上がる。
「私の言いたいことは言った。着いてきて」
「どこに行くの?」
「宴の会場」
「え!?」
「瞑想して2人を待ってた」
「えー! みんな帰っちゃったんじゃないの!?」
「サガオの身体が大きくて。バーガーの家だと狭いから別の場所でやってた。それに。スーたちが来るって聞いて帰るやつはいない」
やや歩いた丘の上でキャンプが行われている。仁王立ちしているサガオが我らに気づく。
「ジゼルが2人を連れて帰って来たのだ!」
オタマでフライパンをガンガンと叩く。
「スー久しぶりなのだ! ネスさまもよく来てくれたのだ!」
「待たせたな」
「元気そうなの!」
サガオの口が大きく開きコックピットが剥き出しになる。中にはヒマリ・サンライトと、あとは誰だ?
「お初にお目にかかります。私はヒマリ・サンライト。そしてこの子は姉妹のコスモ・サンライト、と愛犬のダリア・サンライト」
「はじ、めまして、ネス、さま」
「げに恐ろしき魔界の主」
「うむ。魔界流の挨拶まで心得ているとは」
あの大戦争で大切な者を亡くした者もいるはずだが、そんな感情は一切表に出さないか。……ならば敢えて言うまい。
「んにゃあーー、朝っぱらからうるさいにゃあ」
伸びをしたエリノアがハンモックから降りる。
「おはようなの!」
「んにゃんにゃ、腹減ったろ?今ご飯温めてやるよ」
「やったの!」
周りを見る。立派な斧牛が牧草の上で寝ている。
「モーちゃんなの!」
スーはモーちゃんに抱きつく。
「んもぉ〜」
モーちゃんは斧型の角でスーを傷つけないように器用に担ぎ背に乗せる。こうしてみると普通の斧牛よりも逞しい個体だ。
アイナが木から降りてきた。
「スー、ネス、お久しぶりです」
「わぁ! 大人なアイナなの!」
我らにとって10年など一瞬だが、感覚を合わせる。
「皆、そんなに見た目が分かっておらぬな」
「私はエルフ族なのでこの姿のまま成長が止まります、エリノアとコスモは半魔人なので変わりにくく、サガオは機械だし、ヒマリはマナーの盾の加護で歳を取らないです、モーちゃんは魔物で、ダリアは魔犬だし、ジゼルは若作りしています」
「俺だけ先に逝くぜ、遺影」
「変にゃこと言うにゃよにゃー、未成年にしか見えにゃいよ」
「なるほど、スーも不死身だから、この勇者パーティは長寿なものが多いのだな」
「はい、バーガーさまも魔力が補給され続ける限りはこの世界に留まれます!」
「そういえばバーガーが見当たらぬな、どこにいる?」
「バーガーさまは息子と一緒に家にいます」
息子……だと……。