EX5 魔王と勇者8
「それはパンではなくバンズという」
振り返るとそこには勇者パーティの魔導師、ジゼル・ダグラスがいた。
「ジゼルなの!」
「スー。遅いよ」
「ごめんなさいなの」
「でも世界を救ってくれてありがとう」
「うんなの!」
ジゼルは近くの切り株に腰掛ける。
「ジゼルは朝から何をしていたの?」
「瞑想」
なるほど、たしかに洗礼された魔力だ。ジゼルは「あっ」と何かを思い出し「ちょうど良かった」と呟く。
「魔王にいいたいことがあった」
「元魔王だ。なんだ、申してみよ」
「ディザスターと一騎打ちをした」
「元九大天王のディザスターとか」
ジゼルがここにいるということは。
「倒したのか」
「倒した」
「あの九大天王でも最硬を誇るディザスターをか」
「頭を砕いてやった」
素直に感心した。元部下がやられたと言うのに我に負の感情は一切湧いてこない。
「私とディザスターには因縁があった」
「殺したのか」
スーが「違うの」と否定する。
「僕の中には来てないの」
「頭を砕いて満足した。自慢の硬い頭を砕いてやった。それだけで最硬の魔人は死んだも同然」
情けか。いや、例え同じ戦場で味方として戦ったとしても因縁はそう忘れられるものではない。一騎打ちをしたということはそういうことだ。
「単騎で九大天王を倒すか。勇者パーティは我ら魔王軍が束になっても勝てない存在になってしまったな」
「そういうこと」
スーが感慨深く頷く。
「みんな自分で決着をつけているの」
「そのようだな、皆が前に進んでいるのだな」