EX4 人類最強の七人11
カセキくんの一撃によって巨大な空洞ができた。
「けほけほ、……むちゃくちゃな破壊をしたようね……、エリノア?」
エリノアはオディットを庇うよに瓦礫を背負っている。
「何してるのよ、ジュなら一人でも」
「撃っちゃだめだよ、こんにゃ開けてるところで撃ったらバレちゃうよ」
本来なら瓦礫ていどエリノア一人で破壊できる。だが今は隠れなければならない状況なため、技を使えないのだ。
「どこだぁ!」
破壊音がする。近づいてきている。神性魔力を纏った建築物が減ればここもいずれ特定される。
「ぐぎぎ、重いにゃーー」
「どこか隠れる場所を探すわ」
「オディット、ミーが時間を稼ぐからーー」
「稼ぐのはお金だけにしなさい、2人で逃げなければ今はよくても後々負けるわ」
「じゃあ手伝ってよーー」
「計算に集中するから……もう少し頑張ってね……」
「ぐぎぎぎぎーー」
オディットの額に汗が流れる。
「こんにゃことににゃるにゃら、ファングを置いておけばよかったにゃあ」
「……それも……これも……この状況ならそうすると……パロムに読まれた……からよ……三騎士の件をここでも利用する……なんて……」
オディットの頭から湯気が上がる。
「オディット、オーバーヒートしてるよ」
「数億パターン読んでるから……ここから最善の手を……ジュたちが生き残れる……最善を……」
水晶魔王砲は精神力を放つ技能だ。それをオディットは今日だけで1000発以上撃っている。まさに精神をすり減らす行為だ。思考力は低下し、熱を持った脳は意識のシャットダウンを求めている。それを見たエリノアが笑いだす。
「にゃはは」
「何を……笑っているの……」
「あのオディットがこんにゃに追い詰められるにゃんてにゃ」
「無様でしょう……」
「いいや、ミーも覚悟決めたよ!」
瓦礫を押しのける。
「そこにいたかぁ!」
カセキくんがズンズンと接近してくる。
「何を……してるの……」
「考えてもダメにゃときは、その場しのぎをするしかにゃいにゃ!」
エリノアは四肢に『魔爪』を展開する。
「はぁーー!!」
周囲の瓦礫を利用して高速移動する。しかしカセキくんの視線は切れない。
「速い獣にはこれだな瞬足恐竜!」
カセキくんの足の骨が伸びる。バネのようにシなる足でエリノアに追いつく。
「にゃ!?」
「恐竜口撃!」
ガチン! とエリノアの肩に噛み付く。バキバキと音を立てる。
「うああーーッ!!」
「水晶魔王砲!」
「ふん!」
エリノアを天井にぶん投げると、水晶魔王砲を回避する。
「無駄だ、いかような砲撃もこのフォルムにはカスリもせんわ!」
「うにゃあ!!」
天井で受身を取ったエリノアは、天井を蹴りカセキくんに接近する。
「恐竜鎧!」
カセキくんの体が鎧のような骨に覆われる、さらに鋭利なトゲも生える。
「ぎにゃッ!!」
「恐竜金槌!」
カセキくんの尾の先のコブがエリノアを襲う。
「衝撃吸収水!」
オディットの魔法だ、カセキくんとエリノアの間に水のクッションが魔力生成される。しかし一撃で弾ける。
「泡蓮華!」
コンボ魔法だ。弾けた水が無数のシャボン玉になる。カセキくんの視線を遮る。
「邪魔だ!」
爪で引っ掻く、破れたシャボン玉から小さなシャボン玉が無数に出現する。
「水晶魔王砲!」
シャボン玉をレンズにして軌道を変える。不可避の射撃だ。
「小賢しいマネを! ぐ!」
膝裏を撃たれ跪く。エリノアが魔法巻物に魔力を走らせる。
「鋭利!」
折れずの剣に鋭利な魔力を纏わせる。カセキの首を断ち切る。
「おっと!」
カセキくんは両腕で頭を掴むとはめ直す。
「少しは腕がたつようだが、魔王にはほど遠いぞ!」
「猫又モード!」
エリノアに漆黒線状魔力の尾が追加される。
「単眼魚モード」
右目の水晶眼に魔法陣が映し出される。
「お前はピンチになると能力が強化される特異体質、そしてそこのお前は魔法精度と出力増加か、最初から使えばいいものを、俺相手に様子見するとは!」
「エリノア、わかってるわね」
「言われなくても!」
「何の話だ?」
『カセキくんは知らないだろうけど、漆黒線状魔力の過度な使用は立場の逆転を招くのさ』
「自らの魔力に支配されるというのか?」
『魔力とはなんなのか、古来よりの謎だけれど、あの漆黒線状魔力には一つの明確な意思があるんだ』
「意思?」
『魔王さまの意思さ』
「……なんと、イズクンゾめしぶといにもほどがある」
『ボクらが言えたことじゃないけどね、でもまぁ確かにボクから見てもイレギュラー中のイレギュラーであることに間違いはないね』
「ならば魔王因子が欲しければ奴らから奪えばいいんじゃないか?」
『イズクンゾの魔王因子と、エリノアたちの魔王因子は似て非なるものさ。オリジナルでなきゃダメなんだ』
「そういうものなのか」
『そういうものさ、だからそれは要らない』
「じゃあ食ってもいいな!」
───────戦闘開始から10分経過。増援到着まであと50分。