EX4 人類最強の七人10
「一段落したにゃー」
「うかうかしてられないわ」
暗い道を進む。チョウホウ街内部は入り組んだ迷宮に変貌しているのだ。
「さっきの、どうやって気配を消したんだ?」
「そういう技能よ。水晶の魔力透過作用を利用したーー」
「あー、長ったらしいのはゴメンだよ。今まで隠してた技能までミーに見せちゃって良かったの?」
「あの場ではそうするしかなかったし、仕方ないわよ、それに貴女に見られても問題ないでしょう」
「まぁにゃ。……それでさ、パロムの狙いってにゃんにゃの?」
「……そうね、スカリーチェと関係があると思うわ」
「スカリーチェと? あー、そう言えばパロムとスカリーチェは同じ元魔王軍のはずにゃのに敵対してるっぽいにゃ」
「スカリーチェが守っているものをパロムが狙っていると考えるのが妥当ね」
「スカリーチェが守ってるもの? 想像もつかにゃいにゃ。あいつが大事にしてるものにゃんて魔王以外ーー」
2人が顔を合わせる。
「「それだ(よ)!!」」
「魔王因子だわ、スカリーチェは魔王討伐戦のときに魔王因子を持ち逃げしているわ」
「にゃるほどにゃ。それをここに隠しているんだにゃ!」
「でもおかしいわね」
「そうだにゃ、大切にゃものにゃら、肌身離さずに持っていそうにゃもんだにゃ、スカリーチェほどの実力者にゃら尚更」
「ジュたちがそれを先にみつけてしまえば、この勝負にも勝機が見えてくるわ」
「たしかにうかうかしてられにゃいにゃ!カセキくんがミーたちを探すのに飽きたら、魔王因子を探し始めてしまうよ!」
「焦ることはないわ。パロムは魔王因子を傷つけたくないからカセキくんに派手な動きをさせないわ、それに不安分子のジュたちを野放しにはしないはず、それを利用してやりましょう」
「にゃにをするの?」
「時間がないのはパロムも同じってことよ」
____________________________________________________________
「どこだー? 小賢しい技を使おうとも太古の狩人であるこのカセキくんからは逃れることはできないぞー!」
『気をつけることだね、カセキくん』
「小娘の攻撃なんぞでやられる俺じゃないぞ!」
『今回の戦いの勝ち負けはキミの勝敗ではないんだ、今回は制限時間付きのフラッグ戦なんだから』
「ならその魔王因子ってのはどこにあるか、わかったのか?」
『いま探してるよ』
「パロムが見つけられないならないんじゃないか?」
『ここは創造神ビルディが作った建造物、構成物質に神性が付与されているからスキャンもしにくいのさ』
「隠すには打って付けの場所というわけだ、ならなぜ今まで探さなかった」
『これだから脳筋は困るね』
「まだ脳みそがないからな」
『候補を一つ一つ潰すよりもボクの頭脳で見つけ出した方が効率がいいだろう。それにここは魔界といっても特異な場所でね』
「特異な場所だと、どういうことだ」
『人族の街なのさ、魔界に唯一進出している、だから下手に探りを入れるわけにもいかなかった』
「ならばあとは探し出すだけだな、たしか糸のようなものだったな」
『最後に確認したのは、ね、何かに加工してたりするかもしれないから先入観は捨てることだね』
「ふーー、スキャンしにくいならしやすくしてやろう!」
カセキくんは構える。
『待ちなよ、下手に崩されるとかえって探しにくくなる』
「ならばどうすればいいんだ!めんどうだな!」
地団駄を踏む。
『来る!』
「お?」
壁を貫いて水晶魔王砲がカセキくんにヒットする。体勢を立て直す
「細い……が」
『絞った一撃だね、まともに受けると塗装が剥がれてしまうよ』
「壁越しに狙うとは考えたな」
『それだけじゃないね、軌道も直線じゃなくて何度も曲げられているよ、着弾地点から逆算するのは難しいね』
次々に水晶魔王砲が襲いかかる。カセキくんは壁を破壊しながら進む。
『どこに行くのさ』
「同じ場所にいては狙い撃ちにされるだけだ」
『どうやってこっちの場所を特定しているのか、とか少しは考えないのかい?』
「ああ? くっ!」
下から飛び出た水晶魔王砲が顎にヒットする。
「なぜ俺の場所がわかるんだ!教えろパロム!」
『音だよ、地面を伝う振動でこちらの位置を特定しているんだ』
「そんなことが出来るのか!」
『エリノアだね、獣の感覚器は鋭いよ』
____________________________________________________________
離れた部屋の一室で、四つん這いになったエリノアは耳を床に当てている。
「前進10メートル」
「照射……命中」
次々に照射する。
「いつまでも無力化される水晶魔王砲ではないわ、命中」
「尖らせてるんだにゃ、これにゃら場所も特定されにゃい、一方的に削れるよ!下3メートル」
エリノアが音でカセキくんの位置を特定、オディットの正確無比な狙撃で壁の破壊を最小限に抑えながらカセキくんを削っていく。
____________________________________________________________
「ぐ、本来の肉体なら露知らず、骨のみでは厳しいぞ、パロム!」
『その体での受肉は得策ではないからね。うん、しかたないタイムリミットだ、切り上げよう』
「いいんだな!」
『うん、派手にやっちゃってよ』
カセキくんの鼻先と右額、左額に角が生える。
「恐竜角撃!!」
周囲の建物を吹き飛ばした。