EX3 グリムリーパー19
「ぐ、ぐおおおおおお!!!」
マグラの体が押しつぶされていく。自身の中で増大させた重力によって自滅しようとしている。
「……俺が潰れる前に、お前を潰してやる!」
迫る星々をノヴァは眺めている。
「ボッ!」
ノヴァが龍体になる。
「紅炎新星!!」
ビックバンと終焉が同時に起こった。終わりと始まり。互いに相殺し合う。
どれだけの時間が経っただろうか。ブラギリオンは宇宙空間に寝転がっている。
「決着でござるね」
「がっは……」
倒れたのはマグラだった。僅かに残った(マグラがグリムを守るために残した)星の欠片に落ちていく。
ノヴァは瞬く間にその炎を全快させた。
「終わりの先はない。逆に始まりに終わりはない。消耗戦になった時点でウチの勝ちなんだよ、マグラ」
「……まだだ……がっ!!」
立とうとするも足がボロボロになって砕け散る。グリムが受け止める。
「悪いな、勝てなかった」
グリムはマグラを抱きしめる。
「マグラの磁力と重力は元がなければ何も出来ない」
「炎だって燃料が必要なはずだ」
「ただの炎ではない、人の想いは燃やし尽くせない、それはお前たちもよく知っているだろう。お前たちがウチの炉に燃料をくべている」
「まさか」
「そう想いは消えない、全てを失ったとしてもそれは未来永劫消えることがない、なんたって始まってしまったのだから」
完全決着だ。グリムとマグラという強者を相手にしても結果を見てみれば決定打どころか後遺症一つ負わせられなかった。
「さて、グリム」
「待て……」
マグラが這ってノヴァを止める。
「グリムは、グリムは関係ないだろ……ノヴァは俺を殺しに来たんだろ、それだけでいいだろ」
「何を勘違いしている」
「は? ……だって俺が力を使ったから『神々の誓約』が発動してーー」
「はぁ、勘違いしているようだが、ウチが罰しにきたのはグリムの方だ」
「な、なんだと!」
「それをお前が入ってきてしっちゃかめっちゃかにしてくれたんだろう」
「何を……グリムは神じゃないだろ!」
「確かに認められるにはそれ相応の『逸話』が必要だ。しかしこうしてウチが出張っているということは、神クラスとして認められる功績をしっかり順を追って獲得し、そして見事、世界の驚異として認められ、誓約を発動させるまでに至った」
「……ッ」
「言い返せないだろう、それだけの事をしたんだろう。罪は知らないが、罰するのがウチの使命だ。悪いことをしたら炎に燃やされる。誰でもわかる抑止力。それを欠いては世界が危うい」
「わかった」
「おい、グリム!」
「私はトスさまの里を襲い、ネックさまを倒し、シャドーさまの封印を解き、ノーさまを落とし、そしてマグラに力を使わせた」
「ほー、そこまで序列通りにか。それは認めざるを得ない。ウチから『一本』取っただけはある。じゃあ燃やすぞ」
「はい」
「グリム! ぐ、動け俺の体!」
「無駄だ、魔力も底を尽き、すべてを吐き出したお前に何が出来る。大人しくしていれば消滅までは免れることが出来るぞ」
「そんなの知ったこっちゃーー」
「ござるんるん」
「!?」
ブラギリオンがいつの間にか立っていた。
「お前は……なんだ、一緒に飛ばされてきたと思ったらマグラはグリムしか庇わないし、それでも無傷であの灼熱と重力が吹き荒ぶ宇宙空間を漂っていたな」
「それは別に大したことではないでござる」
「ではなぜここにいる」
(魔王さま、見殺しでもいいと言っていたでござるが、それでは少々、剣としても冷たすぎるでござろう。握られた分、確かに熱を持つのでござる)
「えーっとでござるね。双方の話し合いの元、落ちどころを探るっていうのはどうでござろうか」
「却下だ、焼却する他ない」
「ですよねー、ならそうでござるなー」
「話すつもりはない」
「ならばこうするだけでござる」
ブラギリオンがメメを抜いた。
「やるというのか」
「いや、(拙者が勝つから)意味ないし、でもってグリムには罰を与えないとだしで、こうする他ないでござろうよ」
「師匠」
「拙者直々に、最後の試練を与えるでござる、いいでござるな」
「はい」
即答したグリムは瞳を閉じた。
「その覚悟、あっぱれでござる」
グリムの胸にメメを突き刺した。