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EX3 グリムリーパー17

挿絵(By みてみん)



「私、共闘したことないからどうすればいいか、分からない」

「お前の戦いは沢山みた、俺がエスコートするから存分に殺れ!」

「わかった」


 グリムはクナイブレードを構えて走り出す。マグラは両腕のブラックホールを投げ飛ばし、グリムと並走させる。


「俺のブラックホールは制御されているから、周囲への被害はない!ただ触れると削られるから気をつけろ!」


 グリムは黙って頷くとノヴァにクナイブレードを突き立てる。


 ガキンと硬い金属音。


「質量を持った炎」

「? なんだなんだ、腕試しか、受けて立つぞ!」


 ノヴァは見事な大ぶりの拳を繰り出す。グリムは腕を掴み、力を受け流しノヴァを地面に叩きつけた。そのまま関節技に持っていこうとするが、ノヴァはスクッと立ち上がる。


(なんて力)


「なんだいまの! でも同じ手は通用しないぞ!」


 またしても大ぶりの拳を繰り出す。全く同じ技でカウンターを入れられた。


「! なんだこれ!」

「同じ技が効かない相手はよくいるけど、同じ技が同じように効く相手は会ったことがない……」

「あーもう! ごちゃごちゃうるさいなー!」


 ノヴァが叫ぶと周囲の温度が上昇していく。


「グリム、熱耐性はあるか?」

「大丈夫、ネックさまとやったときに獲得した」


(限度はあるけど、灰になったりしない)


「むむー、これで死なないなんて凄いな! お前で……えーーっと何人目だっけ?」


 考え込むノヴァの腕をブラックホールが削り取る。


「何これ!」

「削ったところを狙え!」


 クナイブレードが腕の切断面に突き刺さる。ノヴァは不思議そうな顔をしている。両腕を失い、欠損部にそれぞれクナイブレードが深々と突き刺さる。その傷は胴体に到達している。


「畳み掛けろ!」


 キョトンとしているノヴァにさらに追い打ちを掛ける。クナイブレードを生成して硬い体を叩く。


「あれ、あの黒い玉がヤバい、当たると……どうなるんだっけ? あれ腕がない、なんで!?」


(ここまで無知だと可哀想になってくる)


 しかし手を弛めることはしない。無知だがその火力は本物だ。


「下がれ!」


 マグラの叫びに合わせてグリムは後退する。入れ替わりでマグラが飛び出す。


「じゃあな、ノヴァ」

「え」


 マグラの拳のブラックホールがノヴァの頭部を飲み込む。頭部を失ったノヴァはその場に倒れる。周囲の熱が急激に下がっていく。白い息を吐く。


「殺した、俺が」

「ううん、私たち」


 傍らに立つグリムを見て力なく笑うマグラ。


「序列5位を殺したから『神々の誓約』は解除されるかな」

「どうだろうな、今まで『神々の誓約』から逃れた奴はいないからよく分からんな」

「次は序列4位が来る、とか?」

「だとしたら本当に俺たちは終わりだ、次が来る前に逃げるぞ」

「逃げるってどこに」

「それは……ブラギリオン?」

「ござざ、どこに行くつもりでござるか?」

「師匠」

「『グリム氏』から呼ばれるのは初めてでござるな」

「私はもう戦いたくなくなりました」

「なぜ」

「戦う必要がないから」

「ふぅん」


(結局なんのために力を欲していたのか、わからず終いでござるか)


「それともまだ戦えと、そういいますか?」

「いや、無理やり戦わせて強くなるならやるでござるが、それは今回なさそうでござるからなぁ、残念でござるが終わりでござる」

「ありがとうございます、師匠」

「拙者は何もしてないでござる、そうなったのはお主の因果でござろうて、さて」


 ブラギリオンは離れていく。


「ノヴァ、いつまで倒れているでござるか」

「!?」


 振り向く、ノヴァの身体がメラメラと燃え上がり始めた。


「これは……この魔力の上昇は!」

「お主の因果、お主のやったこと、それら全てを精算せずして何が力でござろうか。一度力を求めたものは、その力の理に縛られて逃れることなど不可能でござろうよ」


 ノヴァの頭部が炎で形作られ、そして再生する。その姿は正しく不死鳥フォニックス、その眼光は猛禽類のように鋭くなっている。


「ここは、そうかそうか、お前たちがウチの炉を、『知恵の焼却炉』を停止させた愚か者たちか」


(ノヴァの話し方が変わった……)


「なんだ、頭を潰しておかしくなったのか」

「お前はマグネットグラビティドラゴンか、無知なウチはお前なんぞに負けたのか」

「な、人の名前を覚えているだと」

「察しの悪い奴らだ、ウチは自身の力を抑えるために敢えて頭の中に知恵を燃やし続ける炉を作り、知力の上昇を抑えていたのだよ」

「なんでそんなことをしたの?」

「『知恵熱』で宇宙を蒸発させちゃうからだよ」

「!?」


 ノヴァか指を弾くと静寂の世界が訪れる。


(う、動けない、時を止められた……いや時間操作魔法なんて最初に対策した、だから止められても動けるはず……これは……)


「ウチは火を司る龍。火は人間に知恵を授けた」


 静止した世界をコツコツと進む。


「これは時止めではない、熱を奪い全てを停止させた。故にいくら時間操作耐性をその身に刻もうとも無意味だ」


(全く動けない……このままじゃ殺られる)


「止められないものもあるだろ」


 マグラは動いていた。


「重力と磁力は止まらない。そうだろ、ノヴァ」


 両者が睨み合う。


(重力と磁力、そうか)


「そうだ、グリム、俺が『あのとき』与えた魔力を思い出せ」


(重力を体の中に作る。それと漆黒線状魔力に鉄の性質を持たせて磁力で操作……これなら)


「動ける」

「上出来だ、グリム」

「静止した世界に無理やり入り込んでくるとはな」



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