EX3 グリムリーパー15
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「……」
龍宮城が落ちていく、ノーが落ちていく。
空に佇むはグリム。その表情に感情はない。地上にいるブラギリオンが感慨深く言う。
「あれが本当のグリム氏でござるな」
(ノー氏の槍を受け完全敗北する瞬間に覚醒、その後は圧倒的な強さでノー氏を倒したでござる。やっと主人格が出てきたでござるな)
「可愛げはなくなったでござるが、その分強さは序列7位を容易く屠るほどまでに上がっているでござるね」
「あれが本当のグリムだっていうのかよ」
「さぁどうでござろうな」
グリムが降りてくる。
「か、勝てました〜!」
表情はあどけないものに戻っている。
「グリム、か?」
「はい、そうですよ?」
「聞いていいか?」
「はい?」
「このまま、死ぬか頂点に立つまでやるんだな?」
「もちろんですよ! 次は序列6位です!」
「そっか、そうだよな、そういうやつだもんな、お前は」
「マグラ? どうしたの、なんだが様子がおかしいーー」
グリムが吹き飛とんだ、岩に叩きつけられる。
「……かはッ!」
「悪く思うな、こういうやり方も『有り』なんだろ」
「けほけほ、まさかマグラが?」
「ああ、俺は力龍マグネットグラビティドラゴン、序列6位だ。そんでお前を止めてやれるただ一人の、雄だ!」
(まったく気づかなかった)
「でもなんで村で省かれてたの?みんなもマグラの正体を知らなそうだったし」
「知っているのはもう序列持ちたちだけだ。そしてあの扱いは俺がそう『望んだ』んだ」
「どうして」
「俺からだ」
「え」
「俺以降からは力が強すぎてどうしよもなくなるんだ」
「だから角を折ったの?」
「角も潰した、家族を殺っちまった俺にはこの姿が相応しい」
「魔力生命体……殺した年齢で姿を止めているってことだね」
「そうだ、角も折って、成長も止めて、どん詰まりな俺が序列持ちなんて公表できるわけがないだろ」
「そんなことないよ!力がある人は誇らなきゃ!」
「へ、おいおいどうしたよ、叫んでるだけで、先手を食らったのに悠長に話しちゃったりしてよ、それで俺を殺せるのか?」
マグラが手を向けるとグリムが宙に浮いた。
「言っとくが、グリムがガチっても俺は殺せないからな」
(引き寄せられる、重力を操作してる!?)
「重撃」
グリムの腹部を撃ち抜く一撃、防御姿勢もまともに取れないまま吹き飛んでいく。
(一撃で、私たちが……、これではまたグリムさまが……)
(もう無理だ、マグラは強い、解き放つしかない)
(それじゃあ私たちの意識が……さっきも一瞬だったから、帰ってこれたのに、これではもう守れない)
(ああ、マグラと戦えば完全に目覚めるだろう)
(我らが主)
(魔神、グリムリーパーさま)
(ああ、ダメ、私たちの神様、どうか、どうかお静まり下さい)
「……」
「お前が本当のグリムかよ」
グリムの氷のように冷たい表情に涙が伝う。
「な、泣いてるのか」
「……別れの涙」
涙も拭わずにグリムはその透き通った瞳でマグラを見つめる。マグラは頬を赤らめる。
「さっきのよりも無愛想なやつだな、俺の事は分かるのか?」
「ずっと、見ていた」
「他のやつらはなんなんだ?」
「私の守護者たち」
「守護者? グリムの方が強いんだろ?」
「私から、守ろうとした」
「誰をーー」
グリムは一瞬でマグラの前まで移動する。腹部の傷は服ごと再生されていた。
「構えて、じゃないと死ぬ」
「ハッ!」
グリムの手刀がマグラの腹部にヒットする。しかしマグラはその場で微動だにしない。グリムの拳が消えていた。
「俺の内側はブラックホール、触ればそうなる」
グリムは一瞬で手を再生させて2撃目を繰り出す。回し蹴りは、マグラの首に触れた途端その部分だけ消滅して切り取られた足が転がった。マグラが構える。
「磁鉄撃」
周囲にある鉄を多分に含む岩が何万本もの針に変形する。そして高速で飛び回りグリムに降り注ぐ。しかしグリムの皮膚を引き裂くことは出来ない。
「皮膚も、目も、内蔵も全て規格外、正しく神クラスか! ならよ!」
マグラは両手を広げる。
「俺のトラウマで殺してやる」
(重力と磁力がマグラに集中している)
「俺は覚醒したときに暴走した。それを止めようと俺を抱いてくれた父さんと母さんは俺の中に吸い込まれて跡形もなく消えて死んだ。これより先の奴らにお前が殺されるくらいなら、俺が殺してやるよ」
グリムはその場で俯き黙っている。
「逃げないのか? まぁ逃げようたって無駄だ、こうなったら最後、光すら逃がさないからな。でも、今やめるって言うならーー」
「ありがとう」
「なっ!」
グリムは飛び込んだ、マグラの抱擁を受けに行く。