EX3 グリムリーパー11
広いドーム型の空間を所狭しと駆け回り剣戟を繰り返している。グリムとシャドーグリムだ。
「俺たちはなんで平気なんだ?」
「光を斬ったでござる」
「はぁ? 光を? そんな……いつ斬った?」
「もちろん光ったときでござるよ」
「冗談だろ、光を斬るなんていみわかんないし、斬ったところもみてないぞ」
「まぁそれはそれとして、グリム氏は毎回苦戦するでござるなー」
「それはアンタが強い奴らとマッチングさせているからだろ、こんな奴らと戦わせるより、もっと下済みをさせたりとか」
「それじゃダメなんでござるよ」
「どういうことだよ」
「そんなので強くなるのは当たり前、当たり前の強さなんて無意味でござる」
「どうしてそこまで強さを求めるんだ」
「それはーー」
「2人とも避けて!!」
「な!?」
シャドーグリムが飛んできた。2人とも回避した。
「お、やるでござるね、同等の強さを持ってコピーされるシャドーを一蹴するとは」
「はい! 強くなりました! ていうか私ってあんな癖のある戦い方してたんですね、我が身を見て身嗜みを整える、ですね!」
「なんの名言でもないぞそれ!」
「マグラもシャドー作ってもらったらいいのに」
「いいんだよ俺は!」
ガーゴイルが持つ菱形が再び光を放とうとする。グリムはクナイブレードを投擲、菱形を破壊した。
「これでもうシャドーは作れないですね、あ、でももう少し自分と戦いたかった、あーあ」
「名残惜しそうにするなよ」
「やってしまったでござるね」
「師匠?」
「見るでござる」
ガーゴイルの影が伸びる。ガーゴイルのシャドーが現れる。
「自分自身のシャドーを作ったってことですか?」
「封印が解かれはじめているでござる。あの中に封じられていた……言っちゃうか、影写龍シャドーミラードラゴンが菱形を破壊したことによって解き放たれはじめているでござる」
「ええええ!」
(本来の処刑法は自分と同じ強さを持つシャドーを作らせて殺すという方法、しかしそれを超えられた場合、菱形が無防備になってしまう、随分とお粗末な封印でござるね)
「こうなったらマグラ氏は拙者と外に出るでござる」
「師匠! 待ってください!」
「ござ?」
「あれが外に出ちゃったらどうなるのですか!」
「全てが影に染まり『神々の誓約』が発動するまで世界が侵食され続けるだけでござるよ」
「それは困りますね!」
「お前がやったんだろ!」
「マグラは師匠とそこにいて、これは私の相手ですシャドーさまを『神々の誓約』なんかにやらせはしない!私がこの手で倒します!」
シャドーが完全に実態化する。
「シャアアアアアアアアアアア!!!!!」
鳴き声だけで神殿が揺れる。グリムは臆する事なく突っ込んでいった。
(では改めて勝負です!)
シャドーの目が怪しく光る。グリムが倒れる。
「か、体の影が……体を拘束して……かはっ!」
口を閉じる。
(僅かな影でも操作できるんだ、服のシワ、光源の裏側、そういった影全てを意のままに操作できるんだ)
漆黒線状魔力を体から放って影の拘束から外れる。
(動いてる影は物理的な干渉を受けるようになってる。でもすぐに影が捕らえてくる、止まったらダメだ!)
それはまるで舞だ。グリムは剣舞することで実態化した影を即座に切り離す。
(踊りは体力を使います)
シャドーはお構い無しに周囲を攻撃し始める、自分の影を鋭利に伸ばして神殿を破壊し尽くすつもりだ、出るのに時間は掛からない。
(どうすれば……)
「振り切ったほうがいい、でござる」
(師匠……? 振り切ったほうがいい?)
「そうか!」
グリムは周囲の魔光石を全て破壊する。光源が無くなり真っ暗闇になる。
「シャアアアアアアア!!!!」
「完全に光がないなら、それは影じゃなくて闇ですね!」
(感覚を研ぎ澄ませ……)
グリムは反響する音をキャッチすることにより周囲の状況を正確に把握する。
「そこだ!」
クナイブレードを投擲。悲鳴が聞こえる。
「もう灯りをつけていいでござるよ」
ブラギリオンが拾った魔法石に魔力を注ぎ光らせる。砕けたガーゴイルが倒れていた。
「グリム氏の勝ちでござるーー」
「師匠!」
「ござ?」
「助言は必要なかったです……」
「師として教えたまででござる」
「……ぷくー」
「露骨に怒らないでほしいでござる、さ、封印し直すでござるよ」
「シャドーさま、まだ生きているんですか?」
「この程度では死なないでござる、こうして菱形を整えてやれば」
「砕けた菱形が元に直った!?どうやったんですか?」
「『斬り結んだ』だけでござるが?」
「……悔しい、全然わかんない……」
「『理』はムズいらしいでござるからな」