EX3 グリムリーパー10
「もう回復してる」
小龍に乗って移動しているとマグラがそう呟いた。
「え? なに?」
「前から思ってたけど、すごいしぶといな」
「へへん、って、この魔神の身体のお陰なんだけどね」
えっへんと胸を張る。
「移動の時間はあったと言っても、トスさま、ネックさま、2人の序列持ちとやりあっているんだぞ」
「そこはほら私の方が強いからってことだよ。あ、ネックさまとは相打ちだった、あ、でも結果的に生きてるから私の方が強い?」
「俺ってばとんでもないやつを助けちまったなぁ」
そのやり取りを横目で見ていた龍騎士がため息をついた。
「知らせは本当のようだな、トスさまとネックさまを下した者がいるというのは」
「はいはいはい!それ私です!」
「……有名な者でもない、たまに強いものが生まれるがここまで凄まじいものは……、だがまぁそれもおしまいだ」
「序列8位! 序列8位!」
「ふ、遠足気分は着くまでだな、お前たちは今、処刑場に向かっているのだからな」
「お、おい、待てよ、なんで俺まで!」
「龍の里を襲撃、そして龍脈を荒らした。同伴者も死罪は免れない」
「俺はやってない!」
「助けたからには助けた責任を持つことだな」
「……なんでおれまで」
「マグラ、私と一緒にギロチン耐久する?首の強さにも自信あるよ!」
「嫌だよ!」
一時間ほど小龍で移動すると目的地に着いた。
「ここは……神殿?」
そう連れてこられたのは重々しい石製の神殿だ。
「ここがお前たちの処刑の場だ」
「神殿が処刑場なんですか?」
「そうだ、この中に入って出てきた者は序列7位以上の者以外いない」
「ってことはもしかして、この中に」
「そうだ、この中に序列8位はいる、いや封印されている」
「封印?どうしてですか?」
「……外に出したが最後、この世界に新たな驚異が生まれるからだ」
「へぇ、じゃあ行ってきます」
「軽いな……お前もだ、いけ」
「俺もかよ、順番だろこういうのは」
「うるさいヤツだ、この場で殺してもいいんだぞ」
「ちぇ、わかったよ、行けばいいんだろ行けば」
「それでいい、あとお前もだ漆黒の」
「あー、はいはい、入るでござるよ」
「神殿を開け、3人が入ったら直ぐに閉めろ」
「はっ!」
龍騎士たちが扉を開く。地下に続く階段が続いている。3人が入ると扉が閉まる。下りながら話始める。
「ワクワクしますね」
「するかよ、……薄暗いな」
壁には魔光石が埋め込まれている、だが光が弱い。
「うーん、魔力が足りないみたいじゃないけど、元からこういう設定で作られた魔光石っぽいね、どうしてだろう」
「そんなことはどうでもいいけどよ、俺とアンタはどうすんだよ、巻き込まれちまうぞ」
「拙者は一向に構わないでござるが、そうでござるね」
ブラギリオンはマントから魔剣メメを取り出した。
「あー! 師匠の剣ですかそれ!」
「そうでござる」
「丸腰だと思っていたがマントが鞘なのか」
「そうでござる、拙者の愛刀でござる」
鍔の部分の一つ目がニヤけている。
「うわ、気持ちわりぃ、動いたぞ」
「レディになんてこと言うでござるか」
「ねー、師匠、それどうなっているんですか? マントの形的にそんな大きな剣が入ってるなんて考えられませんよ」
「マントも気合武装でござるし、メメも不定形でござるゆえ」
「へぇー!」
「それでその剣を取り出してどうするつもりだ?」
「もちろん斬るためでござるよ」
「え、師匠の剣技が見れるんですか!? 序列8位よりもそっちの方がワクワクします!」
「剣技なんてものは使わないでござるが『素手よりマシ』ってだけでござるよ」
「そうですね、素手より剣があった方が強いですもんね」
「え?」
「え?」
「あ、いや、まぁ『剣』の方が強いでござるね」
「師匠へんなのー! あははは」
(なんか勘違いさせちゃったけど説明するのも面倒だからそれでいいや、でござる)
「おい、見ろ、着くぞ」
広い空間に出た。
「わー、おっきい広場ですねー、相変わらず薄暗いけど」
「ここら辺からでござるな、じゃあ拙者とマグラ氏は端っこにいるでござるからー」
「はーい! 中央に行けばいいのかな?」
(さて『バーガー氏も挑んだ』このチャレンジ、突破出来るでござるかな)
「あ、奥の方から何かがでてきますね。あれは石像」
引き摺る音と共に現れたのは石像、禍々しい龍の石像だ。
「ガーゴイルですか、うわ!」
ガーゴイルの持つ菱形から光が放たれる。グリムの影が伸びて千切れる。浮かび上がり実体化する。
「……私の分身?」
出現したのは真っ黒な影のグリム。
「私自身と戦えってことですか!」