EX3 グリムリーパー9
斜めに放たれた噴火の吐息は大地を削り山々を蒸発させた。
「……ッ」
グリムの身体は空中に打ち出されていた。軽鎧は燃え尽き肌が顕になる、全身が深い火傷を負っている、特に手足が酷い、炭化している。
(……た、耐えられた〜〜)
痛みに耐えながらも安堵する。ただし致命傷を避けるために手足を失った。焼けて塞がれた口をベリっと開き大きく息を吸い込む。
「すぅーーーー!! はぁーーーー!! すぅーーーー!! はぁーーーー!! ふぅ、すぅ、はぁすぅ、はぁ、ひぐぅ……」
(あの中で呼吸していたら内側から焼かれて死んでましたね……)
グリムは空中で魔力操作をして緩やかに減速しながら次の手を考える。
(頭を狙って穴に入れば、回避不可のシチュエーションで吐息を受けてしまいます……あれ……? これって勝てない?ダメ……ネガティブにならない、痛みで弱気になるな、私はまだ頑張れる、手足の再生に魔力を集中)
芯から再生させていく、ボロボロと灰が剥がれていく。手足を動かす。
(これで動ける、もう限界だから、どこかで休んでまた再戦をーー)
「……うそ」
ネックが空を飛んでいる。超高速でグリムの真上に行くと、空洞から光を放ち始めた。
「うわぁ」
2発目の噴火の吐息は真下に放たれた。
星全体を揺らす一撃がグリムを襲う。もう防御姿勢も取れない。全身が炭化していく。
「クールタイムが短いのは、龍脈を練る期間を与えてしまったからでござるね。そして巨大だからといって鈍いというのは大間違いでござる、ネック氏はああ見えても龍でござるからね。さて、グリム氏は完全に失神しちゃったでござるね」
「失神どころか、あれじゃ死んじまっただろ」
「ここからでござる」
「何たる体たらく、何たる体たらくだ!」
巨大クレーターの中心で超再生を繰り返すグリムが言った。また口調が変わっている。
「『クモ』『コウモリ』と使って尚も払えぬとは……」
ネックが空洞を大地に押し付けてグリムを逃げられないように閉じ込める。
「しかし、よくここまで近づいてくれた」
今度は軽鎧ではなく、重鎧を魔力生成する。重戦士の出で立ちになる。
「とぐろを巻き、構える」
本日2発目のネックの噴火の吐息が放たれる。
「おおッ!!」
吐息を全てその体に吸収する。体が真っ赤になるも耐えている。放射が終わる。
「返す」
溜め込んだ魔力をそのまま弾き返す。カッと光るとネックの筒の部分が砕け、頭部が破壊される。溜め込んでいた力が暴発、周囲100kmに甚大な被害が及び、拡散された吐息が無差別に放たれる。
「……絶食は得意だが、これは……」
グリムはその場に倒れてしまう。
「相打ちでござるな」
ブラギリオンとマグラがいた。
「そんなこと言ってないで運ぶぞ」
「まぁ及第点でござるなー」
(さらにもう一人増えたでござるな)
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日も暮れたころ、開けた岩場にグリムたちがいた。グリムは横にされて焚き火の近くに置かれている。マグラはグリムの手を優しく握り続けている。
「う……ん……」
「目覚めたかよ」
「……マグラ? ……う、うごけない……」
「そうだろうな、栄養失調もいいとこだからな」
「……手握っててくれたの?」
「勘違いすんなよ。そんいうんじゃないからな、これは俺の魔力を流して……えーっと、元気を分けてやってんだよ」
「ありがとう、マグラの魔力、あったかいね」
「……それにしてもよくネックさまを倒せたな」
「あ、勝ったんだ、私」
「相打ちでござるな」
「師匠……」
闇からブラギリオンが現れた。
「……そう、ですか、相打ちですか」
「一応聞くけど、まだ続けるでござるか」
「もちろん、やらせてください」
「そうでござるか」
「次は序列8位ですよね!ネックさまよりも強いなんて想像がつかないです」
「だ、そうでござるよ」
「え?」
周囲を取り囲む人型の龍族たちがいた。魔法武器と魔法防具に身を包んでいる、精鋭部隊だ。
「ええええ、囲まれてますよ、これー」
「……そうみたいだな」
「お前か、ネックさまを落としたのは」
「貴方はーー」
グリムに槍が向けられる。
「質問はこちらから、一方的にだ」
槍を持つのは取り囲む龍族の中でもさらに上位の装備を纏う龍騎士だ。
「ふーん、違うみたいですね」
「何を……ッ!?」
フラフラと立ち上がるグリム、一見すれば弱々しい少女にしか見えない。だが放つオーラがそれを否定する。
「お前、何者だ!」
「私はグリムです、序列8位はどこにいますか?」