表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/212

EX3 グリムリーパー7

挿絵(By みてみん)



 龍の里、長の家。トスとグリム、そしてマグラが部屋にいる。


「……なんで俺まで呼ばれてんだ」

「侵入経路を調べた、痕跡を辿るとお前が匿っていたことが分かった」

「ごめんマグラ。私のせいで村八分から村十分になっちゃうね」

「勝手に追い出しきるなよ!」

「それで、グリムは強いヤツと戦いたいのだな」

「はい!」

「序列9位と合わせてやろう」

「やった!いいんですか?」

「ああ、これ以上この里で暴れられては困る」

「私をなんだと思ってるんですか!」

「意思のある自然災害」

「酷い!」

「というわけでマグラ、グリムを案内してやれ」

「はぁ!?なんで俺が!」

「厄介払いだね!」

「お前が言うな、トスさまお願いだよ、面倒ごと押し付けないでくれよ」

「ダメだ、それにそれくらいしないと里のものたちの不満も溜まる。お前が一番わかっているだろう」

「……わかったよ」

「どの道、序列9位には勝てん」

「ワクワク……」

「ワクワクすんな……はぁ、人の気も知らないで俺は村の端っこで慎ましく暮らしていたいだけなのに……」





 マグラを連れて、里を出る。里の外でブラギリオンが待っていた。


「誰だあんた」

「……ござ?」

「師匠、次は序列9位ですよ!」

「ござるね」

「師匠って、あんたがグリムをけしかけてんのか?」

「もー、マグラったら、この人はあんたじゃなくてブラギリオンさまですよ、私の師匠で修行に付き合ってもらっているのです!」

「ブラギリオンって言えば、あの四天王のか」

「そうですよ、すごい人なんです!」

「やい、四天王、何企んでるかしらないけどな、こんなやつ育てて何しようってんだよ、また戦争でも始めるつもりか」

「必要とあらばでござるな」

「うわぁ、戦争! ワクワク……実戦の極致!」

「だからワクワクすんなよ!」





 数日後。龍の領域をひたすら進む。かなり深く入っている。大気ひとつとっても整った高貴な魔力に満たされている。常人ならば自然と背筋が伸びるだろう。


「なぁ、グリム」

「なんですか?」

「いやな、序列9位のこと聞かなくていいのか?名前もまだ言ってないけど、もしかして知ってんのか?」

「いえ、まったく知りません」

「知りたくないのか? これから戦う相手のこと、名前くらい気になるだろ、教えてやってもいいぞ」

「んー、龍族の人たちって名前にヒントがあるパターンが多いからなぁー」

「事前情報なしでやりたいってか、ほんとお前はとんだバトルマニアさんだな、この称号お前にやるよ」

「そんなことないもん。私、自分より弱い人とはやらないもん、たぶん」

「たぶんって、それに強さなんてどこまでいっても終わりなんてないぞ」

「そうだね、上を見ればいくらでもいるのはわかってる。でもそれが止まる理由にはならないのもわかってるんだ」

「そうかよ、勝手に言ってろ、そろそろ着くし、見れば諦めもつくだろ」


 一際高い山の山頂、とんがった形になっているため、周囲を一望できる。


「うわぁ、雲海が広がってる、島みたいに山の先っちょが出ているね!」

「着いたぞ」

「え、ここなの? どこ、序列9位どこ?」

「もう見えてる」

「え?あ!」


 山が動いている。グリムたちのいる山も揺れる。まるでクジラのように雲海から超巨大な龍が現れた。


「紹介する、偉大なる龍脈龍、タートルネックドラゴンさまだ」

「おっきい!」

「そうだろ、ネックさまは滅茶苦茶デカい、お前みたいな人間サイズじゃどうしようもないな」

「マグラもちっちゃいじゃん!」

「俺はいいんだよ」

「でもなんでいまネックさまは気づいたんですか?」

「言っていいのか?」

「あ!ダメ! 言わないで!」

「忙しいヤツめ」

「気づいてもらえてよかった、じゃあ早速!」


 背中に腕を回して、クナイブレードを魔力生成する。


「対戦よろしくお願いしまーーす!!」


 飛び降りていった。


「ここもネック氏の身体でごさるから、でござるね」

「おー、よくわかったな、もう聞こえないから言うけど、ここら一帯は全部ネックさまだぜ」

「のようでござるな、拙者らはもう少し離れるでござる」





 グリムは山を高速で駆け下りる。最中に作り出した爆弾を一面に放り投げる。


「地面の揺れ方的にここら辺はもう身体かな? とりあえず、起爆!」


 後方で激しい爆発、しかしなんの反応もない。


(山肌をいくら削っても僅かなダメージすら与えられない、というか『身』まで届かない、それにこれだけのサイズ、身体を痛めつけても意味がない、やっぱり狙うは急所(あたま)!)


 ネックが行動を開始する。


「うわ!?」


 凄まじい地震だ、天と地がひっくり返る。


「身体に乗ってるから……ネックさまの動きに連動して揺れるんだ……」


(規格外すぎる、でもこれだけならトスさまの毒でも勝てるような気がする)


 グルグルと回る世界で、滞空時間の方が長い中でグリムはそう思考する。


「山を震わせて岩で磨りつぶす、見たまんまの技だ」


 岩を真っ二つにしながらも移動する。


(頭に行かせないようにしてる、本当に大きいだけっぽい)


 迫る岩や土砂を避けながら進む、本来なら進行不可となっている場所でもどんどん進んでいく。


(相性かな、これだけ大きいと毒が効かないって感じ? この妨害に阻まれるならたしかに厄介かも、体力と切り開く武力と殺しきるパワーがあればトスさまより楽だ)


「あ……」


 空を見る、巨大な『山』が落ちてきた。


「あーー、これは……ちょっとヤバいかな……」


 噛み合わさるように山と山がぶつかり合う。







「世界一険しい山登りでござるなー」


 はるか遠くでお茶を啜りながらブラギリオンが呟く。


「グリムはたまたま毒に強かったからトスさまを倒したけど、ネックさまは違う、単純に大きくて偉大な方だ。ちょっとやそっと山を削いでも薄皮にも満たない」

「それは難儀でござるね、ネック氏こそが登竜門と言うわけでござるね」

「そういうわけだ、全てに秀でているのが前提条件、無理だよ。あんた師匠ならここでの修行はやめさせろよ」

「そういうわけにもいかないんでござるよ」

「どうしてさ」

「ここで下りるようなら、そもそも弟子失格でござる」








「すごい! 山舐めてた!」


 トンネルを掘ってグリムが出てきた。


「山をぶつけてくるなんて、規格外すぎる! トスさまといい、もしかして神クラスですか? 単体で世界を滅ぼせるタイプですよね!」


(でもなんだろう、この手応え、トスさまを破って自信がついてるのかな)


「頭だ、頭に辿り着けさえすれば、殺せる!」


 走りながら魔力を練る。さらに爆弾をばらまく。


「……次の波が来る!」


 土石流がグリムを飲み込もうとする。爆弾を前方に投擲、即座に起爆する。


(下手に空路を使えばまた対空で山をぶつけられる。背中に沿って移動するのがベスト)


 天変地異だ、山で起きる災害を全て投入してくる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ