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EX3 グリムリーパー6

挿絵(By みてみん)


「あー、こんなことになるなんて、また怒られちまう」

「マグラってよく怒られるの?」

「まぁな、色々やらかして村八分ってやつだ」

「ふぅん、みんないい人そうなのに」

「いい人だからさ」

「どういうこと?」

「なんでもないよ、で、トスさま倒すって本気なのか?」

「もちろん」

「どうしてだ、トスさまになにかされたのか?」

「ううん、強くなりたいから強者を倒すの」

「はぁ? ……ああ、バトルマニアってやつか」

「違うよ、他の方法で強くなれるならそうしてる。自分の強さって他者と比べてみて初めて実感できるものだから、強い人と戦って勝てばとりあえずはその人よりは上なんだなって確認できる。言わば確認作業……って、あれ、言葉にできた!」

「なんだよ、今までは自分の行動についていけてなかったみたいな物言いだな」

「実はそうなんだ……強くならなきゃっていうのが先行してて、それになんとか食らいついてる感じ」

「若者っぽくていいことだ」

「マグラも子供じゃん!」

「達観してんだよ、色々と」

「へぇー、よいしょ!」

「もう動いていいのか、って、おい!どこに行くんだ?」

「トスさまのところに再戦しに!」

「嘘だろ、ついさっき峠を越えたばかりだぞ、どうせやるならしっかり休んでからやればいいだろ」

「それはリアルじゃない」

「なんだよリアルって」

「戦いは公平じゃない。公平なのは試合だけ。戦いはいつもどちらかに傾いてる状態から始まる」

「でもやれる準備を怠るのは戦いとしてどうなんだ、戦いは戦う前から始まってもいるんだぞ」

「……」

「な、なんだよ、ジロジロみやがって」

「天才だ!!」

「馬鹿じゃねぇの!」

「あ、でも不利な時の戦いも捨て難いし、悩ましい、でもそれいいね」

「やっぱりバトルマニアだ……」




 グリムは屋根を伝って誰にも見つからないように音もなく移動する。


(やることは決まった、魔力生命体に対する決定打と、あの毒の対抗策も)


 グリムは一番高い建物の屋上に登ると里全域に聞こえるほどの大声で叫んだ。


「トスさまーー!! 再戦よろしくお願いしまーーす!!」


 ポシェットに手を突っ込む、即座にポシェット内で漆黒線状魔力を使い道具を作り出す。


「いけー! 爆弾!」


グリムの華奢な身体からは想像もつかない遠投能力で団子サイズの爆弾を無数に無差別にばら撒く。


「起爆!」


 一斉に爆破させる。小型だが爆発力はそこそこあり、一つで家屋が吹き飛ぶ威力だ。爆音に続いて龍族の悲鳴が聞こえ始める。


「やってくれたな……」

「トスさま!」


 トスは毒液形態となり、ものの数秒でグリムの場所まで移動してきた。


「里に手を出したんだ、覚悟は出来ているな」

「もちろんです! 今度はきっちりとどちらかが死ぬまでやりましょう!」

「あのとき殺しておけばーー」


 トスの言葉を待たずにグリムは急接近する。背後で生成したクナイブレードで斬りあげる。トスは避けようとすらしない。


「無駄だ、俺は魔力生命体だ」


(このくらいの毒の空気ならもう耐えられる、ヤバいのは直でくらうこと)


「起爆!」


 『降ってきた爆弾』がトスに直撃する。


「ぐ『事前』に真上に投げていたのか!」


(俺の無味無臭の毒霧の感知範囲外から……、ち、無意識に横に広げていたせいだ)


 ホコリを払うとグリムの姿が消えていた。


「どこだ!」

「やっぱり!」


 すでに地上に降りていたグリムが叫ぶ。


「仲間がいるところだと毒煙はそんなにバラ撒けない!」

「あのガキぃ〜」

「瓦礫の下の人たちは全員生かしているから避難が済むのを待つのは愚策ですよ!」

「小娘……」


(今回はガチってことか、たしかに俺の毒は外敵に対して無類の強さを発揮する、だがこうして内部に入られると途端に扱いにくくなる、いくら中和出来るとはいえ里の者に俺の毒を浴びせるわけにはいかない)

(これであの蠱毒結界は使えない)


 グリムは高速で移動しながら爆弾をトスに投擲し続ける。


「こんなもの何発受けようが無意味だ」


(相手の言葉を信じるな、信じるのは私の直感)


「俺相手に遠距離戦を望むとはな」


(兵士たちに避難をさせているが、あいつが避難先に向かえばそれも無意味、やはり短期で決めるしかない。俺のやりにくい方へ戦局を導いてやがる)

(魔力生命体にも質量のようなものがあるはず、このまま削り切れば消滅させられるかも)

(爆弾で身体が霧散する、隙を作るわけにはいかない、アレでいくか)


「よっ! はっ! と!」


 次々に爆弾を投擲していく。


(漆黒線状魔力はまだまだ余裕がある、これならーー)


「ッ!?」


 何者かの腕が瓦礫から出てきてグリムの足を掴もうとする、跳躍して回避した。


「あっぶなーってええっ!?」


 現れたのはトスだ。グリムは横目で屋上を見る。


(上にもいる、双子? いや、こっちが本体っぽい)

(毒人形(ポイズンドール)を使って爆発の隙に入れ替わったが、この不意打ちも回避するか)


「逃がさないぞ小娘」


(逃げません!)


 クナイブレードを高速投擲。トスの頭部に風穴が空く、再生する気配はなし。


(偽物! 本体はーー)


 周囲の瓦礫からグリムを囲むように複数のトスが現れた。


「お前の壊した民家を使って取り囲んだ、因果応報だな」

「しまっーー」

「蠱毒結界!」


 トスの毒人形(ポイズンドール)たちが柱状に変化する。小規模な蠱毒結界を作り出すことに成功する。


(私のしたことを全て利用してくる、序列持ちは伊達じゃない!)

(このまま殺しきる)


「……ぐ、ぅ」

「こいつ前より毒の効きが悪くなっている……」


 グリムはポシェットから爆弾を取り出し投げつける。トスは別の場所に再出現した。


「そんな爆弾当たったところでなんともないが、この空間では俺はどこにでも移動出来る、反撃は不可能だ」


(起爆!)


 煙が周囲を包み込む。


(これは爆弾ではないな。煙玉か?何が目的だ……ぬ)


 トスの動きが鈍くなる。


(調合に手間取ったけど、頑張って生成した『実体化させる煙玉』効果あり!)


「ぐ、なんだこれは。ぐはっ!!」


 魔力生成したクナイブレードでトスの胸部を突き刺す。


「こんな……ことが……」


 さらに二本目のクナイブレードでトスの頭部を貫く。


「……ぎゅ、ぐ……」


 トスは沈黙。蠱毒結界が解除される、毒の濃度が急速に低下していく。


「……ぷはぁ!!」


 グリムは呼吸を整える。


「勝った……勝ちました!!」

「見事でござる」

「師匠!」

「その煙玉はオリジナルでござるか?」

「はい、この煙玉の煙に触れると、液状化や気体化といった物理攻撃が効きにくい相手を、目に見えないほど細く加工した漆黒線状魔力で縛り実態化させることができるんです!」

「敵に合った道具の生成でござるか、分析力をもっと鍛えて初見時にも作れるようになればもっと強くなれるでござるね」

「はい!」

「……が……」


 トスは生きていた。


「あー、ギリギリで魔力生命体に戻って致命傷を回避しましたか。煙の効果結構短いですね」


 即座に煙玉を用意する。


「……はぁはぁ、やめろ、俺の負けだ、これ以上は戦うつもりはない」


 液状だが粘土が高く動きが鈍い。


「わかりました。一回見逃してくれたので、これでチャラです!」



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