EX3 グリムリーパー2
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「俺様がぶち殺されたあとの話だが」
時は戻ってバーガーが再びこの世界にハンバーガーとして転生しなおした頃。スカリーチェが調理した神クラスを頬張りながらイズクンゾはそう切り出した。
「魔王さまが殺られたあとでござるか」
「そぉ〜よ」
「拙者との約束を違える気でござるか」
「バカ言え、そんなつもりはねぇよ。なんたって俺様は最強だからな」
確かにとブラギリオンは腕を組みなおす。
(魔王さまは最強だ、それは間違いない)
しかしそれはブラギリオンが求める方向性の最強とは違う、また別のベクトルの最強なのだ。
「約束も契約も守らねぇ俺様だが、お前との口約束だけは守るぜ」
「ござるか」
「んで俺様はその死ぬまでの過程でブラギリオンクラスになるはずだ」
「というと」
「俺様の考えでは……これはまだ確信はないんだが」
「悪魔の脳みそのオリジナルを持つ魔王さまが予知できない事象があるとは」
「そうだ、それが物語っている、その事象に俺様は殺される、だろう」
「あー」
ブラギリオンは合点がいった。
(『あれ』のことを言っているのか、認識できないはずなのに、あの白い世界にいるあれの存在を薄らとでも考えている、あとは何か僅かなヒントでもあれば魔王さまは到達する)
ブラギリオンは心底感心した。
「ブラギリオン、お前の夢は俺様が叶えてやる、どんな形になってもな」
なんだかんだ言いつつも魔王さまならやってくれると、ブラギリオンは信じていた。自分と対等に渡り合える真の強者を眼前に用意してくれる、と。
「それで俺様が死んだあとの話だがな」
「……魔王さま」
「スカリーチェどした?」
「お話の途中ですみません、ですがもう聞き捨てなりません。先程から死んだあとと仰られてまスが、私が命に変えてもお守りしまス」
「お前にゃ無理だ」
「……ッ!」
「ばーか、そんな顔すんじゃねぇよ、ウケるな、ギャハハハハハハハ!」
スカリーチェを抱き寄せる。漆黒線状魔力が全身を這いまさぐる。
「んっ、く……魔王さま……はぐらかさないで……ください……ふぅ、んっ」
「お前にも役目がある」
「それは、なんでス……か。はぅ、なんでもしまス……」
「お前がしたいことをしろ、100年も待たせたからな、最後は好きにさせてやるぜ」
「それでは……くあぁ! ……漠然としすぎていて……」
「ブラギリオン」
「は」
「俺の娘を一人頼むわ」
「娘でござるか」
「そうだ、いま動かしてる奴らじゃねぇぞ、まだガキだ」
「魔王さまが死んだ後にその子の世話をすればいいんでござるか」
「世話なんかしなくていい、お前についていけなきゃ見殺しにしてもいいぜ。ただ俺様の最高傑作になるんじゃねぇかなって思ってよぉ〜」
「誰でござるか?」
「グリムってやつだ、俺様の七つの大罪のうち『憤怒』を産みつけた個体だぜ」
「怒りでござるか」
「ああ、俺様からも色々プレゼントを送ったが、それらも不確定要素のせいでおじゃんになりかねねぇ。とりあえずの保険だ」
「承知したと言いたいでござるが、契約が切れたあとの話になりそうでござるな。その時の拙者の気分に左右されると先に断っておくでこざる」
「それで構わねぇよ、全ては俺様の手のひらの上だぜ、なんたって悪いのはいつも俺様だからな!ギャーーッハッハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
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