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EX2 オーバーライト23

挿絵(By みてみん)


 王国、王城内。


 ここは会議室も兼ねた大広間だ。その時その時で部屋の模様替え(特にテーブルの位置やサイズ、椅子の数)が行われる、今は丸テーブルに椅子が4つ対になるように置かれている。


 事の顛末を報告し終えた俺(形態はキラーキラーマークIIセカンド)は席に着く。他の席に着いている3人に目を向ける。


 クゥさま、クロスケさま、グレイブさま。四騎士が揃い踏みだ。口火を切ったのはクロスケさまだ。


「カカカ、いい思いしたな。俺もそのトゥルーファングってのとバトりてぇもンだ、いやバトるか、どこにいる」

「知りません、かなり遠くまで飛ばされたようで、あの後も帰って来ませんでした」

「カッ、俺も魔界に行くか、遠征だ、遠征。大隊長どもだけじゃやっぱり不安だ」


 クロスケさまを無視してグレイブさまが話し始めた。


「それでだサガオ」

「はい」

「家族は全員揃ったのだな?」

「はい、揃いました、誰一人欠けることなく」

「うむ、ならいい。後のことは任せろ」

「いえ、そういうわけには、俺は二度も私情と言える内容で魔界に行って被害を……」

「ーー被害を誰が被った?」


 遮ったのはクゥさまだ。気づけば俺は無意識に背筋を正していた。


「サガオ」

「はい」

「聖騎士の本懐は?」

「は……聖騎士とは守る者のこと、守護者です」

「そうだ、そしてお前は家族を守る者だ、誰一人欠けていないのならば。お前はよくやったんだ。よく守ったな、えらいぞ」

「はっ……!」


 なんたる寛大な……頭が上がらない。


「それはそれとして、だ」

「え」

「あのクソ猫は一体何をしているんだ、お前、勇者パーティだよな、あいつのパーティメンバーなんだよな」

「は、はい」

「エリノアの動向が気になる、私たちと同程度の獣人を連れているとなると警戒するしかない。なによりイズクンゾ因子とも言える漆黒線状魔力の保持者だ、あれは危険だ」

「そ、それはそうですが、漆黒線状魔力を持っているというだけで危険と判断するのは」

「お前の中にいるコスモのことを考えての発言ならやめておけ、それも危険な存在に変わりはない」

「ッ!?」

「身構えるな、危険な存在だが、それでもお前の家族、それを無下にするほど私たちの頭は固くない」

「失礼しました!」

「ただし、コスモのトレーニングは皆でする」

「というと」

「……正直、魔王の魔力保持者を鍛えてみたいという教育者としての本能がな、その、疼くんだ。嫌か?」

「滅相もございません、むしろこちらからお願いします。あ……コスモいいか?」

「うん、つよく、なりたい」

「カカカ! いいねぇ、ヒマリもいいツラしてるし、そのガキも期待大だぜ。バーガーとアイナのときみたくまずは俺がーー」

「大馬鹿者、クロスケがやったら何が起こるかわからん。また変なくせがついてしまったらどうする」

「あー、てめぇクゥ言いやがったな、前はおめーが来るのがおせぇからバーガーどもも俺が面倒見てやったーー」

「うるさい、昔のことをネチネチと、それでも男か貴様、絶対に私から教えるクロスケのクセを抜くのに地味に苦労したからな」

「どのクセだよ。偏ったかもしれねぇが……基礎は磨いてやっただろうが!」

「それはだなーー」

「うるさいぞ2人とも!!!!!!!!!!!」

「「グレイブが一番うるさい!」」


 コスモの教育順で揉め始めてしまった。


「あの、落ち着いてください」

「ああ、話を進めるか、今の件は後回しだ。それで魔王候補の話だが」

「はい。あの場は事なきを得ましたが、いずれはあの中から3代目魔王が生まれる可能性が高いかと。王国としてはどのような対策をなさるおつもりで?」

「好きにさせておけ」

「ほっておくのですか?」

「ああ、それが魔界だ。それになろうとしてそう簡単になれるものじゃない。初代魔王イズクンゾ、2代目魔王ダークネス・ドラゴンさまときている。相当ハードルが上がっているんだよ」

「では、新たな魔王が出てくるまでは、そのままと?」

「そういうことだ、それに魔王が出たら出たで、こちらには勇者がいる」

「バーガーとアイナですね」

「カカカ、楽しみだ」

「何がですか?」

「あいつ人に戻って、今頃アイナと盛ってるはずだぜ」

「はっ……」

「次期魔王が産まれるなら、次期勇者も産まれるもンだろ」



____________________________________________________________



 報告し終えた俺は自室に戻る。ヒマリとダリアがお出迎えだ。


「ただいま」

「おかえりなさい、おにぃちゃん」


 出迎えてくれるヒマリを改めて見る、立派になった。気づけば抱きしめていた。


「わふっ。お、おにぃちゃん!?」

「こんな立派な妹を持てて俺は幸せ者だ」

「な、なな、なに、いきなり、そんな。うぅ」

「俺の中にいるとこうやって抱きしめられないからな」

「そう、だね」


 体が勝手に動いた。ヒマリにデコピンした。


「いた!」

「ヒマリ、ばっか、ずるい」

「こらコスモ、漆黒線状魔力を使って俺の体を勝手に動かしちゃダメだろ、謝りなさい」

「……ヒマリ、ごめん、なさい、しっと、しちゃった」

「いいよ。おにぃちゃんのカッコ良さ分かってるなら」


 ダリアが鼻を擦り付けてくる。


「主人、最後でいいので俺も……なでてほしい」

「まったく、お前たちは、甘えん坊さんなのだな!」











____________________________________________________________











 魔界。


 ここはアヴドキアの魔王城(仮)。山のように巨大な樹木に、これまた巨大な鳥の巣を思わせる建造物が乗っている。しかし内部はしっかりとした作りになっており外見ほどの異様さはない。


 黒を基調とした絢爛豪華な部屋で、魔王の娘たちがお茶会を開いている。


「って、なんでヤーの城に集まってやがりますか!」

「そんなの決まってるじゃない、イリポーンの巣は全焼したし、ロイーズの洞窟は崩壊した、ジュの屋敷には呼びたくない。ここしかないのよ」

「最後の理由、ふざけんなです!」

「それ以外にも何故か魔物も魔人もいないって言う理由があるのだけれど、どういうことかしら? 龍でも魔人でも連れてくれば、あの場でももっと戦えたんじゃないかしら?」

「痛いところを突きやがるです……前に操られると弱体化するって言われて、それから支配なしで下僕を増やそうとーー」

「あっははははははははは!!」

「な、何がおかしいです!」

「自分の力で部下を作ろうとしているのね。それで誰か着いてきたのかしら?」

「今は説得中です……」

「誰を説得しているのかしら、雑魚ならついてくるでしょう」

「雑魚なんて要らねぇです、強者だけでいいです」

「ふぅん」

「ねーねー、2人ともー」

「何かしらロイーズ」

「どうして集まったのー?」

「それはね」


 オディットが指を鳴らすと、ドアが開かれる。現れたのはーー


「エリノアじゃねぇですか!」


 アヴドキアとイリポーンが席を立ち警戒する。それもそのはず背後にはファングもいる。


「やーやー。やってるにゃあ」

「オディット、ハメやがりましたね」

「先に言ったら集まらないじゃない」

「当たり前です! 裏切り者じゃねぇですか!」

「あ、ここ座っていい?」

「勝手に座るなです!」

「ヒッヒ、落ち着けよー、なんかやる気じゃないみたいだしー」

「そうだよ、ミーは(はにゃし)合いに来たんだよ」

「どういうことです」

「ほらミーらってまだまだ一人だと弱いじゃにゃいか」

「そんなわけねぇです、強ぇです」

「この場でファングにタイマンで勝てるやついるのかにゃ?」

「……それは、まだです」


 ファングは黙っている。


「ミーは身の程を知って欲しかったんだよ」

「だからファングを送り込んだと言いやがりますか」

「うん、そうだよ。オディットには見透かされてたから、対象にしにゃかったけどね」

「……ぐ」

「アヴドキア、ジュが美しいからってそう睨まないでくれるかしら?」

「そういうつもりで睨んでるわけじゃねぇです!」

「ミーが言いたいのは(みんにゃ)で協力しようってことだよ」

「そんなのゴメンです!」

「まーまー、そういうにゃよー。そのためにミーは帝国を作ったんだからさ」

「イッヒたちのためー? つまりどゆことー?」

「魔王ににゃると人族や龍族と殺り合うことににゃる、帝国にゃらはぐれ者たちの集まりとはいえ元王国民の連中だから王国も手が出しにくい。未熟にゃミーたちの時間稼ぎの場として最適じゃにゃい?」

「そ、そんな先のことまで考えてたの? でもヌーはファングに殺されかけたよ?」

「言っただろう、いたぶりたくなるーー」


 エリノアにビンタされた。


「黙ってろ」

「失礼しました、帝王さま」

「やりすぎちゃったし、サガオが来たっていうハプニングもあったけど、こうするのがミーの目的だったんだよ」

「ふーん、話はわかったけどー、コスモだっけー、あれはどうすんのー?」

「あの子はミーたちと違って汚れてにゃいからにゃ、ほっとくよ」

「で、でも、ファングに殺せって……」

「……ちょっと興が乗っちゃってにゃ、ファングにゃらミーの真意を理解して手加減してくれたよにゃあ?」

「はっ! 全力で殺しにいきましーー」


 エリノアにビンタされた。


「いや、それはそいつ悪くねぇです」

「ほら、そう言わにゃいと茶番ににゃっちゃうしさ……ミーも必死だったし、それにサガオにゃらにゃんとかしてくれるって信じてたし」

「相変わらずのクソ猫っぷりです。ヤーたちにはそれでいいけどあいつらにはちゃんと謝りやがれです」

「今度会ったら謝っとくよ、それでミーのところに来てくれるかにゃ?」

「エリノアの下につけってことですか?」

「いや、ミーと対等の待遇と地位で迎え入れるよ。だってそんにゃ地位よりーー」


 エリノアがバツの悪そうな顔をする。


「お前らの方が大事だからにゃ」

「な、何言ってやがり、ます、か」


 2人とも赤面している。


「あはは、お茶が進むわね」

「おいオディット、人の顔みてお茶啜るなです!」

「ねーねー、どっちでもいいけどー、イッヒはお腹すいたよー、一番力使ったのイッヒだよー」

「あ、あの……ヌーも現在進行形で大怪我してるんだけど……ち、治療したいな……」

「決まりだにゃ。とりあえずミーのとこに来て、力をつけたら魔王を目指せばいいってことで」

「一件落着ね」



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