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EX2 オーバーライト22

挿絵(By みてみん)



「みんな……俺を助けてくれるのか?」

「イッヒはー、サガオのこと別に嫌いじゃないしねー」

「借りを返したあとリベンジしてやるです!」

「ま、まずは、あの人からやらなきゃって、理由じゃダメですか?」

「サガオ、一度だけ力を貸してあげるわ」


 ファングが笑った。


「はは、まさかサガオに魔王候補が力を貸すとはな。そんな真実もあるのか」


 オディットが答えた


「これは家族の問題よ。サンライト家と、ジュたちダークロード家の。さぁ、いくわよ、貴女たち」

「だから仕切るなって……ええい! 八咫烏(トリプルキック)モード、魔羽竜巻(マバネード)!」


 アヴドキアの翼から無数の魔力生成された鋭利な漆黒の羽が飛びたず、それらは意志を持ったようにサイクロン状に回転して飛び出していく。風属性魔力と闇属性魔力が合わさった大技だ。


「イッヒもやるよー、八岐大蛇(エイトヘッド)モード、八岐の吐息(エイトブレス)ー!」


 8つの頭からそれぞれブレスが吐き出される。雷属性、氷属性、炎属性などの8種の魔力が一つとなって放たれる。


「あ、ま、まって! 大百足(ワンフッドレッド)モード!爆裂甲殻虫(ボムバグ)砲!」


 イリポーンの角に虫が集まり砲台の形になる。装填された弾も虫で、爆発して燃えることで種族を増やす爆裂甲殻虫(ボムバグ)だ、しかも見たこともないサイズだ。それをコロニーごと発射した。バッタの脚力で蹴り出したのだ。


「ジュは既に撃ち終わっているわ」


 空から何かが降ってくる。


「ジュは外さない。さっき撃ったものが星を巡って帰ってきたわ」

「まさかあれは」

衛星(サテライト)魔王砲」


 外したと思わせたものが一つとなり帰ってきた。


「撃ったあとも操作出来るのか!?」

「いいえ、出来ないわ。ただこの未来に掛けただけよ」


 勇者サイドと魔王サイドが共闘する未来を読んだというのか。


「大博打が好きなのか!」

「そうかしら、結構確率高かったわよ、貴方チョロいから」

「心外だが、今は心強い!」


 全てのパワーが勇者斬超光(ブレイブスルーオーバーライト)に乗る。


「いけええええええええええ!!」


 ファングを押し始める。


「……この威力、これもまた真実か……」


 月下咆哮を上回る。光が大地を包み込む。勇者魔力が魔王候補たちの魔法を中和して被害を最小限に抑える。





「はぁ、はぁ、倒した……」


 この携帯を維持するのも限界だ。キラーキラーマークIIに戻る。


「ぐ……魔力がほとんど残ってないのだ」


 背後を見れば魔王候補たちも今の一撃に魔力を出し切ったのだろう。かなり疲弊している。各モードも解除している。


「さて、というわけで」


 オディットが語る。


「ジュだけが魔力を温存したままこの状態に持ってこれたわ」

「……そうか、あれは技能(スキル)よりの魔法……しかも星を巡らせてくる魔力を増大させたから本人の消耗はないに等しい」

「ふざけやがるな……です」

「羽を出し切ったのはわかっているわ」

「イッヒももう燃料ないよー」

「ぬ、ヌーも戦える虫全員出しちゃった……」

「ふふ、ジュが魔王ね」


 ここまでなのか……。


「そいつはどうかな、オディット」


 岩を吹き飛ばして現れたのはファングだ。


「あれで生きているのか!? まさか回避したのか!?」

「直撃したぞ、サガオ」

「なんたるタフネスなのだ」

「ふ、俺のタフさは想定外か? オディット」

「いえ、満身創痍の貴方くらいどうとでもなるわ」


 キラーキラーマークIIの内部が無理やり開かれる。


「コスモ!? 出てはダメなのだ」

「ほう、ターゲットが出てくるとは、どういうつもりだ?」


 コスモはヒタヒタと歩き、ファングの前に行く。俺たちも追うが消耗が激しく追いつけない。


「素直に死ぬ気になったか、コスモ」

「……な」

「なんだ? なんと言った?」

「……るな」

「聞こえないぞ、もっと大きな声で言え」

「じゃまするな!!」

「ッ!?」


 コスモの右腕に漆黒線状魔力がまとわりつき筋肉の役目を果たす。そして近づけてきていたファングの腹部を思いっきり殴り飛ばした。


「ぐあ!? この程度で……ッ!?」


 衝撃が終わる前に、さらに吹っ飛んだ。


「これは精神力と魔力が螺旋状に渦巻いて推進力を生み出しているな、コスモ」

「わたしは、ひとと、まじんの、こんけつ、ひとのおもいは、どこまでもつづいていく……とおくまで、とんでって」

「ぐ、強力な力だ、見余ったというのか、この俺が、この俺が真実を……ふ……飛び去るのが真実か、帝王さま」


 何度も衝撃がファングを襲い、地平線まで飛んでそして見えなくなった。


「なんて能力なのだ。それがコスモの漆黒線状魔力の性質」

「うん、ぐるぐるぱんち」

「ネーミングは置いておくのだ……。この戦いで完全に成長しきったということか、ファングが与えた魔力で成長が早まったんだな」

「もう、いたくない、このくろいの、うごかすの、へただった、だけ」

「そうか、だから体に変化はないのか」


 発現して間もないため操作できずに内部から漆黒線状魔力が蠢いていた、それが成長痛の原因。


「これでみんな、まもれる、でも、みんな、だました」

「オディットを脅したのか」


 オディットが降りてきた。


「脅してね……そうね、脅されたわ」

「でもコスモは最初薬で眠らされていた、能力も発現したばかりで戦うどころではなかったはずだ」

「あのね、一つ勘違いしてるわよ」

「何をだ?」

「ジュたちは姉妹、自死するなんて言われたら脅しに屈するに決まってるじゃない」

「え、何を言って……だって、魔王になるために殺そうと」

「そんなの殺す気でやって丁度いい子たちだからに決まってるじゃない」

「え、ええーー」

「殺す気でやっても死なないと信頼しているからこうしてやっているの。だからコスモがそう脅してきたら乗るしかないのよ。命懸けのお願いを聞かない姉妹がいる? 拙いコスモの思惑にジュの嘘でコーティングしてあげたのよ」


 ヒマリが呟いた。


「真実と嘘を混ぜたものが一番厄介って」

「その先を言ってなかったわね。その嘘を暴くと何故か皆満足して、その先に行かなくなるものなのよ、隠された扉があるとも知らずに。騙されたかしら」


 完敗なのだ。



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