EX2 オーバーライト19
「にゃあサガオ、そのままオーバーフローしてたらほんとに魂剥がれて死んじゃうよ」
「命を張ってでも家族は守る、それが大黒柱なのだ!」
「もー、しょうがにゃいにゃあ。ミーはとてつもにゃく忙しいんだよー」
「それは手間を取らせるのだ!」
「ファング、あとは任せる、真実を持って来い」
「はっ!」
エリノアはマントをはためかせ高速で離れていく。オディットは背後で観戦モード。俺とファングの一騎打ち。いや、俺たち家族とファングの一騎打ちだ。
「サガオ、どうして俺が帝王さまに仕えているが知りたくないか?」
「……くっそどうでもいいのだ」
「俺は獣姫エリシアさまに仕える予定だった」
「自分から言っていくのか……」
「人族で言うところの四騎士のポジションになる、そう父から言われて育った。だがそうはならなかった」
「イズクンゾか」
「そうだ、イズクンゾは突然現れた。そしてエリシアさまを孕ませて、子を産ませた後は食い、産まれた赤子は攫っていった。1年近く王宮に住み着かれた、だがイズクンゾに獣人族の抵抗なんてそよ風にもならなかった、俺の父は真っ先に食われた。当時まだ若かった俺は戦うことすら出来なかった、自分の力の無さを嘆いたものだ」
「そうだったのか」
「もうあんなことがないようにと修行にあけくれた。守るもののなくなった俺は、獣人族の里を抜け、世界を転々とし、誰も攻略できなかった真実の試練を乗り越えた、そのころ帝王さまを見つけた。一目でわかった、エリシアさまと瓜二つだったからな。そして俺は真実を見抜くためにバーガーと王国に向かう道中の帝王さまを試した」
「試した?」
「捕まえたミミックを道に置き、その真意を試した」
「そんなことしていたのか」
「何度かスルーされたが、ミミックを担いで先回りし、道に設置し直した」
「そんな手の込んだことをして何を知りたかったのだ」
「言っただろう、真意だ。結果として帝王さまはまたたびに夢中になった」
「……それで何がわかったのだ」
「知らないのか? ミミックは対象が求めているものを感じ取り、箱の中に溜めた泥に魔力を流し込んでそっくりなものを作り出す。帝王さまは金が大好きだったはずだ、それなのにまたたびが出た。つまり金はイズクンゾに捧げるために集めていたに過ぎず、カモフラージュとして、金にがめついキャラを演じることで集めやすくしていた」
「ミミックのときは俺はいなかったが、そう聞くと、そんな気がするのだ」
「帝王さまがスパイなのは知っていた、つまり帝王さまは完全にイズクンゾ側」
「あのときはそうだったな」
「だから俺は黙認した、世界が滅ぼうとしても、誰も救わず、全てを見殺しにするとな。俺自身も一切の抵抗をせずに闇の軍勢に殺されると決めて、サガオたちの戦いをシェルターの中で見ていた」
「そうだ、獣人族もあの中にいたのだ」
「しかし帝王さまはイズクンゾを裏切り、王国側に着いていた。俺は酷く後悔した、もっと近くにいれば、気持ちの変化にも気づけたのにと。全てが終わったあとに帝王さまの元に行き、今に至るというわけだ」
「だからファングは勇者斬でダメージを受けなかったのだな」
「俺は如何なる時も帝王さまの味方だ。もう後悔しないように」
「だから俺に似ていると言っていたのか」
「コスモを失い、俺と同じになれ、サガオ」
「普通に嫌なのだ!」