EX2 オーバーライト18
「それはこっちのセリフなのだ! なぜエリノアがここにいるのだ!」
「えー、ミーは当たり前だよ。だってミーは魔王候補にゃんだから」
「それはおかしいわ」
オディットが近くに来ていた。
「おかしくにゃいよ」
「だって貴女、人類側についたじゃない。それにそこの犬を連れて帝王も名乗っている。さすがに肩書きが多すぎるわ」
「まぁそれは否定しにゃいよ。手広くやらせてもらってるからにゃあ、でもにゃミーはお父様の強欲にゃ部分をもらったから、そういう性分にゃんだよ」
「お父様も強欲の魔人だったから、一番力を受け継いだのは知っているけれど、そんなのスマートじゃないわ」
「オディットは色欲だったにゃ。魔族をたぶらかし、さらにサガオも口説き落とした口がよくいうにゃー」
「俺は落ちてないのだ!」
「そうだよおにぃちゃんはそんなチョロくない!」
「サンライトブラザーズは黙ってるにゃ。にしてもにゃあ、ミーはずっと不思議だったんだよ、強欲のミー、色欲のオディット、傲慢のアウドキア、暴食のロイーズ、怠惰のイリポーン、あと2人足りにゃいと思っていたんだ」
「生物が持つという七つの大罪のことをいっているのかしら?」
「そうだよ、嫉妬と憤怒はどこにいったのかにゃってずっと考えていたんだ」
「そんなの元からいなかったらんじゃないかしら、お父様は笑ってばかりで怒らないし、嫉妬も……」
「いつもの上手い嘘はどうしたんだ?あの人は嫉妬するよ、自分ににゃいもの、欲しいものを持つ者を絶対に許さにゃい。にゃあコスモ」
「……」
「コスモは関係ないのだ!」
「魔王の娘だってのは元々知っているんだよ。ミーたちはイズクンゾの予備として作られたからにゃ、イズクンゾににゃにかあったとき、足りにゃい部分を補うための備蓄として用意された存在がミーたちだよ。まぁミーは優秀だったからスパイもしたけどにゃー」
俺は黙ってエリノアの言葉を待つ。
「魔王の娘は沢山いてどの娘に力が受け継がれているかまではミーたち5人を除いて知らにゃかったにゃ。オディット、もういいだろ? ヒマリを返してやりにゃよ」
「なんの事かしら」
「しらばっくれるにゃ。ファング、言ってやれ」
「はっ。拾い集めた事実から真実を示します。オディットはコスモに脅され、演じている」
「なっ」
俺は機内のコスモに意識を向ける。俯いたまま動かない。
「コスモ・ダークロード。イズクンゾが悪魔の脳みそで未来予知のごとき未来を見て配置した搦手の一つ。バーガーのようにゃ存在が来にゃかった場合の布石だにゃ。サガオが脅威とにゃったときに備えて配置した駒にすぎにゃかったんだよ、コスモにゃんて魔人と人のハーフだから力は弱いしにゃ。イズクンゾがやられて使命から開放されたコスモは、ただの嫉妬深いコスモににゃっちゃったんだね」
「コスモ……本当、なのか?」
「……うん。わたし、しっと、してる」
コスモの体から漆黒線状魔力が溢れ出る。
「わたしは、どくせん、したい。サガオが、すきだから」
ダリアが吠える。
「主人、黙っていたことをここに詫びます!コスモは従わねば自死すると……」
「そうだったのか。ダリア、俺は怒っていないのだ。コスモを守ってくれたんだからな」
「主人……ッ」
「コスモ」
「……」
「俺はお前の気持ちがやっと聞けて、ただただ嬉しいのだ。何より生きていてくれてありがとう」
「じゃあ。わたしだけの、サガオに、なって」
「それは出来ない、ヒマリもダリアもいる。それに世界が俺を認めてくれたのだ」
「……そう、だよね」
漆黒線状魔力が俺の中を満たしていく。
「やめろ! コスモ!」
「サガオは、だれにも、わたさない」
「話はまとまったかにゃー?」
「エリノア!?」
エリノアはファングの背後に立つ。
「コスモはミーたち5人のように訓練してにゃいから、イズクンゾに植え付けられた性に逆らえにゃい。そして力の暴走は新たな火種ににゃるよ」
「コスモを殺そうというのか!?」
「うん、だから邪魔しにゃいでくれると助かるにゃ」
「ダメだ! 絶対に! オディット! コスモに協力しているんだろ、手を貸してくれ!」
「そうね、ヒマリを開放するくらいはいいかしら。別に盾がなくてもジュはこんなところで死ぬようなミスはしないもの」
ロープを解く。ダリアの血液魔法で足場を作り、ヒマリを連れてくる。家族が揃う。
「ヒマリに、コスモだ。こっちの大きいのはダリア。みんな俺の家族だ」
「でも、おにぃちゃん」
「おにぃちゃんって、きやすく、よぶな!」
「うお!?」
漆黒線状魔力が溢れ出しヒマリを襲う。ダリアがヒマリを背負い、飛び退いた。
「コスモ、やめるのだ!」
「サガオは、わたしだけをみて、このちからがあれば、それもできる」
そんな事しなくても俺は離れたりしないのに。
「コスモの感情が俺に流れてくる」
「サガオ、困っているなら手を貸してやる」
「ファング……」
「確認しますが、帝王さま、サガオはどうしますか?」
「ん? 邪魔するにゃら戦闘不能にしろ。殺すにゃよ、やるのは中のコスモだけだ」
「承知しました」
ファングが来る。
「ぐ、ぐぅ、わからず屋さんめ、誰も彼もわがままだ!」
俺は内蔵された魔力を引き出す。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
魔法陣が焼ききれていく。最大出力をオーバー。節々からは蒸気状になった魔力が噴射される。俺は怒鳴った。
「コスモ!!」
「は、はい!?」
「ヒマリ!!」
「はい!」
「ダリア!」
「はっ!!」
俺は高速で動き、ヒマリとダリアを機内に取り込む。
「だめ! サガオ! いれないで!」
「うるさい!! 俺は怒ったのだ!!」
「ひっ、サガオ……?」
「俺は!! いま猛烈にキレているのだ!」
「キレてる奴がキレてるにゃんていうもんか」
「エリノア!!」
「にゃ、にゃんだよ」
「オディット!!」
「大声出さないでくれる?」
「その他の魔王候補!! あとファング!!」
「ふ、俺はおまけか、サガオ」
「俺はもう怒ったのだ! 家族が全員集える条件が揃いながらも、わがままをいう子たちに、俺は大人気なくも怒るのだ! 俺がどれだけ心配したと思っているのだ! 怪物の口に落ちて動けないあいだ、何度お前たちの顔を思い出しこの時を望んだと思っているのだ!! ビルディーさまに救われ、世界を平和にした後も、残した2人のことを忘れたことはない! 2人を置いていったことを本当に後悔しているのだ! そして何より一番腹が立っているのは俺自身なのだ! 有無を言わせぬ愛を喰らうがいいのだ! 絶対に幸せにしてやるから覚悟するのだ! いくらでも駄々をこねればいい! 嫉妬してもいい、機内で飲食をしてもいい、寝泊まりしてもいい、なんならお風呂も設置するし、トイレも完備する! 俺たちは一心同体! もはや離れることのない、サンライト一家なのだ!」