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EX2 オーバーライト13

挿絵(By みてみん)



「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」


 ロイーズは不敵に笑う。その眼光は洞窟の中でも輝きを放ち、身体は弛緩したり緊張したりして、不規則に動いている。


「三つ巴か、サガオ、混戦は得意か?」


 ファングはフルフェイスを被る。俺たちを品定めするように円形に間合いをとる。


「言われるまでもなく得意なのだ」


とは言ったものの、俺の中にはコスモがいる。そしてこのモードは密着しているため、負傷は搭乗者にもろに反映されてしまう。慎重に戦わなければならない。


「サガオ、わたし、けが、へいき」

「そうもいかないのだ」


 このラビット型なら速度は申し分ない、戦闘の主導権を握ることも、戦線を離脱することも可能だ。


「サガオぉ、サガオサガオサガオ」

「ファング、うるさいのだ」

「いつからだ、足でまといを連れたまま戦うようになったのは、何者にも縛られないお前とやってみたいぞ」

「俺は生まれてからずっと好きなように生きてきた、これも俺が好きでやっていること、これが俺の生き様なのだ!」

「ほぉ、それはいい真実だな、サガオ」

「ファングは真実真実とうるさいのだ」

「ふっ、俺にとって真実とは、お前の言うところの勇者だ、サガオ」

「あと、名前を呼びすぎなのだ!」

「これは確認事項だサガオ!俺の歯牙に値するか、否か、それこそが最大の争点だ」

「わけわかんないのだ……」

「ヒッヒ」


 ロイーズは両手に鉄球を魔力生成する。鉄球と手首のリングに鎖が接続され繋がれた。あれでは武器を奪うことはできない。


「聞いてると姉妹喧嘩を思い出すよぉ、仲良しなんだねー」

「それはないのだ!」


 振り下ろされた鉄球を回避する。よし、鎖付き鉄球ならば起動は読みやすい。そしてあれ自体が拘束具の役目を果たしてくれる。このラビット型にはもってこいの相手なのだ。


「それだけならな!」


 ファングの超高速刺突。高飛びの要領で回避、背中の装甲が切り裂かれる。


「ぐっ!!」

「昨日のままなら今ので目玉を破壊出来ていた、形態によって能力が変わるのか、いや、どちらかと言えば、魔物の進化を彷彿とさせる。そちらの方が真実に近そうだ、なぁサガオ、形態変化による能力の向上だろう、あといくつある、サガオ」


 一撃でそこまで分析するか。


「しかし、その形態はただ速度を求めた形態にすぎない、そんな子供サイズではなく、サガオの本来の姿に近づければ本来の力をもっと発揮できるんじゃないか、そうだろサガオ」


 最終形態(キラーキラーマークIIセカンドW)まで見抜いている。


「それでも他の四騎士たちに匹敵するわけがない、ならば搭乗者の能力も上乗せ、いや、掛け算の如く乗らなければ、ふふ、お前のことが分かってきたぞ、サガオ」


 やつの真実を見抜く目は侮れない、俺の超直感のような特異体質なのかもしれない。


「俺のは野生の勘だ、サガオ、お前のように天賦の才などない」

「いーつーまーでー話とーんねーんー」


 ロイーズの鉄球をファングは前方に進みながら回避する。通常ならば後方に引くところだろう、あれは攻めの回避だ。


「構ってほしいか、俺は2対1でもいいが、弱いやつから食いたくなるのは分かるだろう、ロイーズ」

「わかんないなー、好きな(強い)やつから食べたくなるんだよねー」

「その好みも真実だな!」


ファングは瞬く間に距離を詰める、ロイーズの鉄球は両方とも攻撃に出している、戻している暇はない。刺突がロイーズの頭部を破壊した。


「しまった、殺してしまっては帝王さまに捧げられない」

「ヒッヒ……」


頭部を破壊されたロイーズの腕が動いた、剣の刀身を掴んだ。


「龍族最上位の中でも、ごく一部しか存在しない魔力生命体か、いや、確かな手応えがあった、これは特異体質による、命のストックか、ロイーズ」

「ん、そうだよー」


 頭部が『生え変わる』。片腕で鉄球を旋回させる。鎖が周囲を回る。


「この鎖に巻き付かれたら、並の人間ならバラバラに引き裂かれるよー」

「俺は並ではない。意外と戦略的なんだな、自身の体質も最大限に利用しての判断、ラリってるように見えてクレバー、恐ろしい魔王に成り得ただろうな、ロイーズ」


 ファングは逃げない、鎖が2人に巻き付く。2人とも強者だ、なんともない、だが互いに拘束状態となった。


「これでもう逃げられないよー、頭からいただきまーす」


 口を大きく開く、これでファングは脱落、あとはロイーズを討伐してーー


真実の牙(トゥルーファング)!」

「なにー?」


フルフェイスが変形してファングの口が出る、そしてロイーズの首筋に噛み付いた。


「ヒヒヒ! くすぐったいなー、そんなので龍鱗と同等のイッヒの皮膚を貫けるわけがーーえ?」


 血が吹き出す、そんな馬鹿な、ただの人の噛みつき攻撃でロイーズがダメージを受けるなんて。


「ぐ、いたたー」


 鉄球と鎖が消滅した。


「むー、鉄球が維持できないよー、力が入らないー」

「真実をやや暴いたからだ、帝王さまは路線変更なされた、お前たちの血を啜りたいそうだ、つまりは生け捕りが俺にとってのベスト真実だ」


力の抜けたロイーズを難なく背負う。


「今度はお前が食われる番だな、ロイーズ」

「はなせー」


 ファングの能力はなんだ、あの牙で噛まれると力が出せなくなる?毒と類か?く、判断材料が足りない。ロイーズにかまけている間にここから撤退するのが無難だ……。


「さっきので実力差は理解しているよな。それでも俺の前に立つとは何事だ?不十分だぞ、サガオ」




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