EX2 オーバーライト12
____________________________________________________________
「私をどこに連れていくつもり?」
私は紐で雁字搦めにされて、オディットの使用人に担がれている。先頭にはオディットがいる。現在移動中。
「さっきのあれね、嘘なのよ」
「え?」
「魔人細胞とか諸々ね。ただイリポーンの居場所は本当よ、嘘っていうのは真実を混ぜた方が騙しやくすなるの。純度100の嘘より、真実を織り交ぜた嘘の方が何倍も効果があるわ」
「そんなことどうでもいい、おろして」
「賢い人ほど真実を織り交ぜているから聞くしかなくなるの。そこから推理するんだもの、聡い人ほど頭を使いたくなるものなのよ、恵体なら体を使いたくなるのと同じことね。誰もそれに逆らえない。そしてその時間を使って解析するの。時間稼ぎの嘘。そう、見破られるのが前提の嘘。だって嘘なんですもの、いつかは見破られなきゃまるで真実みたいじゃない?」
「だから聞いてないって、……もしかしてこれも時間稼ぎ?」
「いえ、ただ走ってるのも暇だし、あと上手く行きすぎているからついつい話してしまうのよ、ジュの悪い癖ね。女系だから、いえ、男の子は全員食われたからなんだけどね。女の子の扱いには長けているのよ」
「……おろしてくれないなら力ずくでも」
「してもいいけど、殺すわ」
私一人の命なら刺し違えてでも暴れたかもしれない。でも私の死はお兄ちゃんの敗北を意味する。兄妹を失う辛さを知ってほしくない、あれだけは耐え難いから。
「あら動かないの?」
「私の命は私だけのものじゃないって分かってるくせに」
「そうよ、嫌味だもの。からかうのは楽しいわね。やっぱり妹よ、ジュたちってほとんど歳が違わないけれど、しっかりしてるのジュくらいだから、お姉さんの役割してたのよね、ジュ」
「そんなのどうでもいいってば、仲良くする気なんてないし、質問に答えてくれないなら話しかけないで」
「そういうわけにもいかないわ」
「どうして」
「だってこれから長い付き合いになるんですもの、知っていて?マナーの盾に選ばれた適合者は歳を取らなくなるの」
……だから最近身長が伸びないと思ってた。
「心当たりがあるでしょう?だって本当のことだもの」
「なんで知っている、私が初めての適合者なのに」
「解析したからよ、この魔眼でね」
やっぱり解析してたんだ。
「マナーの盾が王国にあるとはいえ、マナーの加護は貴方を包んでいる。不老効果は永続的だし、防御力も上がっている。でもこの距離なら高火力の一撃で殺すことも出来る」
「私に利用価値があるっていうの?」
「ジュを守る盾になってもらうわ」
「死んでも嫌」
「難儀よね、死ねないんだもの。自死も封じられているわよ、貴方。だってマナー違反ですもの。ふふ」
____________________________________________________________