EX2 オーバーライト11
「攻めてこないなら助かる」
「どゆことー」
「話がしたいのだ、聞きたいことが幾つかある、聞いて損のない話だ」
「ん、話してみー」
俺は説明した、イリポーンが帝国に破れたこと、オディットが消息不明となったこと。こちらの弱みは隠すように説明した。
「ふーん、それでなんでサガオが介入してんのー、もう戦争?」
「王国は関係ない、完全なプライベートだ、聞いてもいいか?」
「勝手に聞けばー」
「ダリアという大型魔犬を知らないか?」
「いぬ? 最近たべてないなー、知らなーい、話はそれだけー?」
「あ、ああ」
「ふーん、くんくん」
ロイーズが鼻を鳴らす。まだ腹が空いているのか? 既にあれだけの下位魔人たちを腹に収めたというのに。
「あー、なーんか近い匂いがするから気になってたんだー」
近づいてくる。
「くんくん、サガオー、イッヒに隠してることあるだろー」
「なんの話だ?」
「その中にいるやつだよー」
「この子は関係ないのだ」
「ヒッヒ、そんな『匂い』させて無関係なわけないでしょー、だから連れているんじゃないのー?」
「それこそなんの話なのだ!」
「だってこの匂いーー」
ロイーズの言葉を止めるように洞窟の入口付近から音がした。戦闘音だ。俺の魂が危険信号を発っする。
「お、いたいた」
声の主が投げ飛ばしたのは翼の魔人と棍棒の魔人の生首だった。
「トゥルーファング!!」
「その姿、真実に近づき少しはやる気になったようだな、サガオ」
俺はロイーズを見る、この予測不能な魔王候補がどう動くか警戒せねばならない。
「ぼたぼた」
「ッ!?」
凶悪な笑みを浮かべている。俺は反射的に離れていた。
「ぼたぼた、ぼたぼたぼた」
ヒタヒタと歩き、拾ったのは魔人たちの生首。
「あーん」
まるで果物を頬張るように一口で食べてしまった。
「バリボリ、バリボリ、おいひーー」
「はははは、仲間だった者をなんの躊躇もなく食らうとは」
「仲間ー?」
ロイーズの視線はファングに向けられた。
「ご飯を運んでくるご飯を仲間というの? なら仲間だけどー」
「その真実、実にいいぞ、魔王の素質ありだ。お前は殺すに値する!」
オディットの命令を優先するならば、魔王候補の首を取るべきだ。それこそがヒマリを救う道、しかし帝国の思い通りにさせるのも愚策。ならばここは!
「お前たちをここで仕留める!」
「おお、そうくるか、サガオ!」
「ヒッヒ、そう来なくちゃねー」