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EX2 オーバーライト9

挿絵(By みてみん)



 オディットの屋敷に戻る。


「……これは!?」


 屋敷はもぬけの殻になっていた。


「オディット! どこなのだ!」


 センサーを全開にする。ダメだ、オディットの反応はない。


「ヒマリ……」


 オディットは嘘をついていた。何がしたいのだ。近くにいた魔族の使用人を捕まえる。


「オディットは、ヒマリはどこに行ったのだ!」

「し、知りません! オディット様がヒントを残していくと思いますか!?」

「くっ!」


 ダメだ、2人の痕跡が追えるレベルのものではない。オディットが痕跡を消していったのだ。なぜだ、魔王になりたいのなら俺の帰りを待つはずなのだ。……まさか俺が負けたのを『見ていた』のか?あの目で。それでここに被害が及びそうになったから逃げたのか。使用人たちにすら何も告げずに。


「許さないのだ」

「サガオ」

「すまない、コスモ、驚かせた」

「ううん、これから、どうする?」

「もちろん2人を探すのだ」


 使用人に詰め寄る。


「ロイーズとアヴドキアの居場所を教えるのだ!」













____________________________________________________________













 魔界のどこか。カツンカツンと硬い床を鎧が闊歩する音が聞こえる。鼻歌交じりに歩くのはトゥルーファングだ。


「ふんふんふふふふん」


 担いでいるのはイリポーンだ。頭は拘束用のフルフェイスを被され、四肢の筋は切断されておりほとんど動けないようにされている。


「俺は悩んでいる、お前を帝王様に見せた方がいいのか、こっそり殺した方がいいのか」

「……」

「帝王様はお優しいお方だ、だから俺が美しい世界を作らねばならない、そう思うよな、イリポーン」

「……」

「ああ、騒ぐからって殴って悪かった。決着着いてるのにいたぶるのは俺の悪い癖なんだ、というか口を塞いでるから話せないだけか」


 フルフェイスを取る。


「っぷはぁ!! はぁ、はぁッ!」

「どっちがいい、オススメは今だ、俺は真実が好きだ、お前が気高き魔王候補として死んだと嘘をつく、という俺の選んだ道を真実にしてやってもいいぜ」

「ヌ、ヌーは、負けを認めます……死にたくないです」

「ふ、それも真実、虫系は生存本能に忠実だからな、まるでカラクリのように心無いヤツだ。着いたぞ、玉座の間だ」

「……ま、待ってください、口を塞がないで、むぐ」


 口を布で縛ると、扉をノックする。


「帝国聖騎士部隊大隊長、トゥルーファング。ただいま帰還しました!」

「入れ」

「はっ!!」


 中央まで進み跪く、乱雑にイリポーンを置く。


「うっ!」


 帝王は跪くファングの頭に手を乗せ撫でる。


「て、帝王さま!」

「よく生け捕りにした、褒めてやる」

「はっ! ありがたきお言葉!!」


 イリポーンは首を擡げて帝王を見る。目を見開く。


「はひほは!!」

「そうだ、帝王だよ」


 イリポーンを抱き上げる。


「ははひへ!! ほは!!」

「欲しかった」

「おお、帝王さま。ならばどうぞお召し上がりください」


 四肢を蠢かせるも帝王はガッチリと抱き寄せて離さない。


「あむ」


 肩に噛み付いた。鋭く力強い。


「んんんんん!!」

「じゅるるるるるる!」

「んんっ!! フーフー!! ギググ!! んっ!!」


 しばらく吸うと、パッと手放した。


「うむ、美味だ」

「いい飲みっぷりです!」

「ところでファング」

「はっ!」

「血を流しすぎだ、飲む分が減った」

「はっ!!それが脆すぎたため加減が難しく……ッ」


 平手打ちされた。


「言い訳をするとは、帝王より偉いのか?」

「滅相もございません! 帝王さまこそ王の中の王! 他に並び立つものなどいるはずもございません!」

「機嫌を取るのが上手いやつだ」

「真実でござい……ッ」


 平手打ち。


「口答え」

「失礼しました!」

「これ、まだ吸いたいから健康管理しっかりとしておけ、他のも出来れば捕獲しろ」

「はっ!!」


イリポーンは憎しみを込めた目で帝王を見ていた。帝王はそれを見下ろしてニヤリと笑った。



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