EX2 オーバーライト3
俺は自分の耳を疑った。
「3代目魔王だと……?」
「はい。おかしなことですか? 魔王がいない今が我々にとっては異常事態なのですが……」
それはそうだが、はや過ぎる。大宴会、四騎士の任命式、バーガーとアイナの結婚式、その他事後処理があったとはいえ、まだ魔王を倒してから3ヶ月しか経っていない。
「誰だ、誰が魔王になろうとしているのだ!」
「魔王の娘たちです」
「あの娘たちか!」
イズクンゾの血を引く、正真正銘の魔王の血を受け継いだ娘たちだ。勇者パーティのエリノアもその血を受け継いでいる。状況を理解していくにつれて、焦りよりも、疑問が湧いてくる。
これはいいことなのか、悪いことなのか。魔王がいないということは魔界の秩序はないも同然だ。魔王は人類の敵だが、長年に渡り均衡した抑止力でもあるのだ。
ネスが再び魔王の座に着いてくれれば、それが人類にとって一番なのだが、あいにくネスはスーと龍の国に戻ってしまった。次に来るのは何千年後とかになりかねない。
「あの娘たちが魔王に……これはどうすれば」
報告に戻るか? いや、この状況でコスモに何かあったら……一刻を争う事態になるかもしれない。しかし。
「行こうよ、おにぃちゃん」
「ヒマリ」
「魔王の娘は知ってるだけでも5人いる、一人はエリノアだから大丈夫……だとして、あとの4人はそれぞれ魔王になろうとしてた」
「魔王の座を奪い合う争奪戦か、争っていたとしたら、今がコスモを探すチャンスか」
「うん。今度は助けきってあげなきゃだよ、おにぃちゃん」
そうだな、助けきる、救い尽くしてやるのだ!
「最後に一つ聞く、魔王の娘たちの居場所はわかるか?」
「はい」
「一番近いのは誰だ?」
「それはーー」
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居場所を聞いた俺はポーションを多めに渡した後、飛行して目的地を目指す。
「でも不思議だね」
「何が不思議なのだ?」
「なんで下位魔人が居場所を知ってるんだろう、争ってたとしたら場所がバレてるのは不味いんじゃないかな。もしかしたら場所を変えてるかもしれないし、罠の可能性もーー」
「ヒマリ!」
「は、はい!」
「それは俺たちの常識だ、魔王の常識じゃない、魔王の気持ちになって考えるのんだ」
「魔王の気持ち?」
「そうだ。逃げたり隠れたりしてみろ、それはもう魔王の器じゃない」
「じゃああえて場所を公開しているの?」
「そういう事だ、魔王の娘たちは強い、隠れようと思えばいくらでも隠れられるはずなのだ。あの海底神殿でイズクンゾがアヴドキアに言っていたように、魔王は魔王然としてなければならない。圧倒的な強さで君臨しなければならないのだ!」
「勇者のことを語るときと同じくらい熱いよおにぃちゃん」
「……はは、魔王あっての勇者だからな、敵味方なしにすれば両方とも強くてカッコイイのだ」
そうこうしてると見えてきた。最寄りの魔王城(仮)に到着だ。