EX2 オーバーライト2
棍棒が迫る。当たればやばいが超直感を使わなくても避けられるくらいに愚直な攻撃なのだ。躱したついでに旋風烈閃を叩き込む。浅い。
「ぐう!! 覚えてやがれ!!」
棍棒をグルグル振り回して大暴れしながら去っていく。追うか、どうするか。
「周りから助けを求める魂の反応が沢山出てる、今はこの村の現状を知った方がいいかも、お兄ちゃん」
「そうだなヒマリ、あの魔人、村人に被害が出るように暴れながら撤退したのだ。まずはこの村の人たちの救出が先なのだ」
村は破壊され尽くされている。あの棍棒で家ごと下位魔人たちを薙ぎ払ったのだ。
「助けに来たのだ!」
手早く救えるだけ救い、村の中心に集める。腕が多いとこういうとき便利なのだ。
「あ、あなたは……?」
「黙ってこの治癒水薬を飲むのだ。動ける者はこれを皆に配って回れ、沢山あるから慌てないように」
治癒水薬なら体内で自動生成できる、なんなら瓶詰めの状態で量産できるのだ。
みんな疲弊こそしているが、助けられるだけ助けたのだ。命が助かると次は俺に興味を向けてくる、襲ってきたりはしないが、未知への恐怖が感じられる。
「安心するのだ、俺は敵ではない」
「どなたなのですか?」
「俺はサガオ、勇者パーティのメインタンクだ」
「ひぃ、ゆ、勇者パーティ!!」
「怖がるな、勇者とはそもそも悪しき者を倒すもののことであって、魔人の敵ではないのだ。お前たちからは人殺しの気配がしないから大丈夫なのだ」
ほっと胸を撫で下ろす魔人たち、やっと落ち着いてくれた。
「聞きたいとがあるのだ。」
「なんでも聞いてください」
「コスモという人間の少女を知っているか?」
「知りません、人間は魔界にいないはずです」
「ならダリアという大型魔犬はしらないか? 血濡れの魔犬なのだが」
「魔犬!? 出会ってたら殺されてますよ」
「では、いま魔界で何が起こっているのだ」
「おにぃちゃん、人が居なくなったからヒエラルキーが崩れて下位魔人が襲われてるってさっき」
「ふ、ヒマリ、それは俺たちの憶測が多分に含まれているのだ。現場の声を聞かなければ真実は見えてこないのだ」
ヒマリが話すのをやめて、機内に乗っている時だけ互いの心が読めるテレパシーで話し始めた。
『話を聞いたらここの魔人たちも始末した方がいい、助けたから油断してる』
それはダメなのだ。一度助けたからには、魔人たちが約束を破らない限り、俺の保護下にあるのだ。
『わかったよ、おにぃちゃん』
「魔人たち、知ってることを教えてくれ」
俺の超直感が告げている。いま魔界で何かが起ころうとしている。それがコスモが魔界に置き去りになっている原因と繋がっているに違いないのだ。
「3代目魔王が生まれようとしています」