EX1 ギアの休日4
______________________________ 一方その頃 ______________________________
青い海、白い砂浜、どれも俺には無縁のものだ。そんな王国と魔界の間にある海の砂浜で俺たちはビーチチェアでくつろいでいた。
「……」
隣にいるレイが俺の顔を見て呆れた顔をしている。
「すっごくつまらなそうですね」
「一つ気づいた」
「何をですか」
「俺は休むのが苦手だ」
「そんなの知ってますよー」
「今だって油断すると仕事のことを考えちまいそうになる」
「そんなことより、見てくださいよ、このプライベートピーチ。こんなリゾート地を貸し切っちゃうなんて一体いくら掛かっているんでしょうね」
「それこそ野暮ポメよ」
「息抜きしに来て息つまるとか本末転倒甚ですね、ギア、来てください」
「おい引っ張んな」
「ほら、せっかくの砂浜ですよ、走らなきゃ損ですよ」
「ああ? そういうもんか?」
「休みの素人は黙って従ってくださいね」
「わかった、そうだったな、ここではレイに習うんだった。何すんだ」
「砂浜で追いかけっこ、浅瀬で海水を掛け合う、ビーチバレーをする、目隠ししてスイカを割る。ぜーんぶ新世界から輸入した知識なんですけどね」
「意外とミーハーなんだな」
「新世界人と仕事するんですから、新世界の流行りには敏感にならなきゃダメですよ、っていうかギアは新世界出身なんだから私より知っててくださいよ」
「悪かったな」
「じゃあ。追いかけっこからしましょう……こんな薄い布を纏っただけの状態で走るのちょっと恥ずかしいんですけど、そういうものだそうですので頑張ります」
「嫌ならなんか羽織ればいいだろ」
「けっこうデザイン可愛くて気に入ってるんですよこの水着、じゃあ逃げますね! 捕まえてごらんなさーーきゃあ!」
「オラ、捕まえたぞ」
「……次は浅瀬で海水を掛け合います!」
浅瀬に移動する。
「さあ、行きますよ、えい! えい! ほらギアも真似してください!」
「……エイ」
俺が海水をすくうと波を作り出しレイを飲み込んだ。
「ぺっぺっ、力加減下手っぴですか!」
「勝負じゃねぇのか?」
「違いますよ、次はビーチバレーです! フワフワした球を相手のコートにバシッと叩きつけるやつです!」
「ああ、それなら知ってるぞ」
「では……はい。コートを書きました。ボールはあそこに……だいぶ軽いんですね。さあ! 勝負です! やー!」
「……」
『スパァン!!!!!』
「……え? あれボールは?」
「後ろだ」
「え?ああー!! めり込んでる! これじゃあ勝負にならないじゃないですかー!」
「ギリギリコート内だろ」
「そういう問題じゃないですー、ホントに武装解除してますか?」
「キルソードもキチンと置いてきてる、ゴッドキラーに搭載された武装は全部解除済みだ、たんに基本スペックが高ぇんだよ」
「はぁ、お腹も減ったし、スイカ割りしましょう」
セッティングする。
「さぁ! 目隠ししてください、グルグル回ってください! ではスタート!」
レイが笛を吹くと同時に。
『パァン!!』
「ひっ!」
「オラ潰したぞ」
「迷いが一切なかったですよ、もしかして見てました?」
「見てねぇ、高性能な空間把握装置が積まれてんだよ」
「……それにこれは『割る』じゃなくて『破裂』って言うんです、これじゃあ食べられませんよー……」
「マジで難しいな」
「ふ、ふふ」
「レイ?」
「こっちは俄然やる気が出てきました、長年こき使われてませんからね! やりがいのある休みになりそうです! いいですかギア! 休みは始まったばかりですからね!」
「お、おお」
ポラニアがシチューを撫でながら言った。
「まったく楽しそうにしてるポメね、ねー、シチュー様」
「んちち!! んちち!!」
「おっと、あのスイカは食べちゃダメポメ、こっちにちゃんとしたのあるポメ」