EX1 ギアの休日3
それでもセギュラが渋るから、ギアなら部屋でじっとせずに仕事に繋がることを探しに外に出るはずよって言いくるめてやったわ。
「こんなものかしら」
頭の花は髪の毛と同化させて、反転目はサングラスで隠すことにしたわ。
「ああ、いいんじゃないか」
「セギュラも着替えなさいよ」
「私は誇り高き龍騎士であるガリュウ・バーミリオンの娘だ。逃げも隠れもせん、ましてや変装なんぞ絶対しない」
「あーそう、でも一般人は武装してないわ、こっちだけ武装してるのは卑怯じゃないの?」
「むぅ、それは」
「鎧とその剣も置いていきなさいよ、別に戦いに行くわけじゃないんだから」
「私がメアリーを守らないで誰がメアリーを守るんだ」
「一丁前に私を守ろうなんて、私の方が強いでしょ」
「それは聞き捨てならないな」
「いいから、自分の身は自分で守るわよ、魔法も使えない奴らに後れを取るわけないわ、だから鎧を脱ぎなさい、バックの中に着替えがあるわ」
「わかったよ」
私はメイド服でセギュラがワンピースに着替えたわ。一階に行くと付向が待ち構えていたわ。
「どちらへ?」
「ショッピングに行ってくるわ」
「では私も同行致します」
「聞いたセギュラ、私デートに誘われたわ、モテ期かしら」
「どう聞いてもお目付け役だろう」
「ふん、まぁいいわよ、着いてくるがいいわ、荷物持ちがほしかったところよ!」
「かしこまりました。では車の手配を、はい、来ました」
「早いわね!」
車に駆け込むわ。
「いえ、想定していただけですが、それにしても想定よりもお早いご決断で驚きました」
お見通しってわけね、上等よ!
「ふ!私たちはギアの代理なのよ、それにギアならもっと早いわ!きっと窓から飛び出してたわよ」
「それほどとは。ではどちらに」
「あっちよ!」
「あっち……ですか」
「付向よ、すまんな。道は私が調べよう、地図はないか?」
「こちらに」
しばらく車を走らせて、目当ての店に着いたわ。
「着きました」
「わあ! 行くわよ! 行くわよ!!」
「待て落ち着け、店は逃げないぞ」
看板の文字を読むわ。
「……ってこの世界の文字、読めるわね」
「何をいまさらだな、私たちの世界も言語統一されているだろう。ほら入らないのか」
「看板が派手だから来たけど、なんの店か知らないのよ」
「ノリで生きすぎだぞ」
「こちらはハンバーガーショップですね」
ハンバーガーというワードに私たちは硬直するわ。セギュラがギギギと首をこちらに向けるわ。
「メアリー……」
「だってピエロの像が派手で気になったのよ、カラーリングも毒々しかったし」
「入るのか、私はどうしてもやつの顔を思い出してしまう」
「いいわ、私が決めたんだから、入るわ、付向、着いてきなさい、奢ってやるわよ!」
「いえ、そのようなわけには」
「グダグダいわない!」
入ると油の匂いがするわ。遅れてセギュラがやってきたわ。
「結局来たのね」
「メアリーが行って行かないわけには……くんくん、食欲をそそる匂いだな」
「悪くないわね、スタッフ!」
「は、はい!」
「メニュー!」
「こ、こちらです!」
むき出しの厨房から「何かの撮影?」とか「アイドル?女優?」とか聞こえてくるわ。今はロゴリスじゃないからサインはしてやらないわ。今は別のオン日なのよ。
「値段がイマイチわからないわね、これで足りるかしら?」
「こ、コインですか?」
「金貨も知らないの!? じゃあこれは?」
ダメだわ、銀貨も銅貨も鉄貨も全部通じないわ。
「言葉は通じるのにおかしな世界ね」
「メアリー様、こちらの硬貨を使います」
「それ先に言いなさいよ!」
金貨は多すぎるって言うから、銀貨を両替したわ、紙の束を渡されたわ。
「何よこれ、紙に人の顔が書いてあるわ!偉そうね誰よこいつ!」
「落ち着け」
「わかってるわよ、ほらスタッフ、この店で一番いいものを用意しなさい!」
「結局メニュー見ないのか」
ん、待ってよ。
「何あれ」
「あれはハッピーセットで着いてくる玩具です」
「あれがほしいわ! やっぱりハッピーセットとやらにするわ!」
ふふ、頼んでやったわ。料理にはどれくらい時間がかかるのかしら、フルコースなら結構な時間が掛かるわよね、って直ぐに出てきたわ!
「早すぎるわ!!」
「それがこのお店の売りですから」
「知らないわよ! でも早くて凄いわね! 食べるわよ! どこで!」
「メアリー、テンション上がりすぎだ。マジで落ち着いた方がいいぞ」
「これが落ち着いていられるわけないでしょ! セギュラも内心驚いてるくせに!」
「騎士は感情を表に出さないものだ、むぐ」
御託を並べる口に芋の揚げたやつを突っ込んでやったわ。
「う、うまい!」
私も食べるわ。
「しょっぱ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」