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デスゲームが最近のブームな件  作者: 八虚空
ファーストログイン『Dungeon History』
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第六十話 ゴブリン戦線

 ゴブリン戦線に挑戦する為の準備はおおよそこの六週間で整った。

 クラスメイトパーティや元ストリートチルドレンの年長者パーティも戦闘職に就いてる者は気功特技とマジックシールドの特技を習得して防御面は向上しているし、数少ない射手職や盗賊職も攻撃力の向上するテクニカルと韋駄天特技を習得している。

 うちのパーティも魔法班の知識パラメーターがデバフ呪文を習得できる値まで伸びたおかけで複数の新呪文の恩恵を受けている。

 上野も僧侶職の回復魔法とバフ魔法を習得済みだ。ちょっと前まで戦士職に就いていたはずなのに知識パラメーターが魔法班並に高いあたり、どんなステータスをしてるのか気になるな。やはり選ばれし者なのか。

 外付けHPとなってくれる結界魔道具も生産班を含めて行き渡っているし、少なくともうちのパーティから死者が出る確率は低いと思う。

 ハーレムパーティは結構な数が職業熟練度のランクアップを果たしている上にゴブリン戦線は慣れているからフォローに回ってくれると確約してくれたし、6人のガチハーレムメンバーはダンスト一期生や二期生らしくレベルが違う。臨時レイド全体で見ても安定してる方だろう。

 ハーレム先輩だけは別の用事で手が離せないらしく同行できないみたいだ。貴族プレイヤーの身内として公務でもあるのかね。

 よく考えたら、ハーレムパーティの初心者支援活動ってソルト街の冒険者育成支援活動に当たるんだろうか。半ば公共福祉みたいな感じの。

 でも資金源は全部ハーレム先輩のポケットマネーから出てるって聞いたことあるからな。税金が使われてるわけじゃないし、別物か。

 そもそも税金で暮らしてるわけでもないみたいだしなぁ。上級冒険者の更に上澄みの称号持ちだし上級ダンジョンのモンスター素材が売り捌けなくて金欠なんてこともあるまい。


「あっー、緊張してきた。ゴブリンとか他のゲームだと雑魚モンスターなのに鳥肌がヤバい」

「軍隊との戦争みたいなもんだしな。これまではせいぜい狩りの延長線だったけど」

「えっと、服の各所に設けたポケットに薬草と煙幕玉。アイテムボックスにポーション各種と誘引香の原液と代えの武器と……」

「落ち着け。今回はちょっとした様子見だ。長居はしない」

「最悪、ログアウトって手段もある。相当、運が悪くなきゃ死にゃしねえから」

「お前っ。これからだって時によりにもよって俺の前で運の話するか!?」

「冷静になれ加藤。お前はガチャで爆死しただけで別に運悪くないから。小野の方が致命的だって」

「いや、そこで俺を引き合いに出すなよ」

「はいはい。無駄話はそこまで!」


 初級ダンジョン、ゴブリン戦線のダンジョン前にハーレムパーティ、クラスメイトパーティ、元ストリートチルドレンの年長者パーティ、そして俺ら。

 総勢100名以上の冒険者が臨時レイド組んで待機していた。武装は最低でも鋼の剣は持っている。ゴブリン側は鉄の剣のはずだから装備面でば完璧に上回っている。

 これで挑まなかったら単に臆病風に吹かれているだけになるな。


「盗賊班は隠密しながら斥候を。魔法班・射手班は遠距離攻撃の準備を入念に。対魔法班、対遠距離物理班は今のうちに浮遊盾を配置して」


 司令役となった6人のガチハーレムメンバーの1人、沙織さんが次々と指示を出していく。

 派生職の一つ、指揮官職を持つ彼女の指示は言葉で内容を伝えるだけで僧侶職のバフ魔法には及ばないが大勢に長時間のスペック向上を可能とする。

 空中には同じガチハーレムメンバーの魔法使い天音さん百城さんが飛行魔法で周辺警戒を担当している。

 斥候の小春さんの姿は俺達には当然、察知できない。前衛の昴さんと陽子さんは戦線が押されている部分に投入予定だ。

 この6人だけで本当は俺達所かゴブリン戦線のモンスター丸ごと、殲滅できるほどの戦力だ。

 もっと余裕を持ってもいいと思うんだが見てる方が緊張するほどピリピリとしている。

 常在戦場というよりも足手纏いが100人近くもいるせいで自分達だけで上級ダンジョンに行くよりも緊張しているのかもしれない。

 高レベルの僧侶職もいないから重傷の回復はアイテムのごり押しになるしな。自分達ならともかくHPが50もない初心者を冒険に連れ出すなんて不安で仕方ないんじゃなかろうか。

 結界鎧を手に入れてから今までの冒険を振り返ってみると危なっかしくて自分でも寒気がするもんな。


「上空からの索敵便利だな。ガードの特技だと滞空は無理だが、浮遊盾を足場に使えばいけるんじゃねえかな?」

「ああ、そういう使い道もあるな」

「遠距離攻撃に対する自動防御が浮遊盾の機能だけど、そこまで自由に動かせるものかな。そもそも重さに負けて落下するんじゃね?」

「空中浮遊じゃなくて座標固定で浮いてるならいけると思うが、動力は本人の魔力依存だからな。長時間の使用は厳しいが、それでも試してみる価値はあるな」


 前衛はまだ出番がないから新しい飛行方法なんかを小声で話し合う。

 俺達の防具とアクセサリーは生産班の成長を待っているから稼ぎの割に控え目な性能だし、浮遊盾くらいは買ってもいいかもな。

 ガードの秘伝書は限定品ってうたい文句に誘われて衝動的に買ってしまったが、空中戦闘の可能性を切り開いてくれた。

 将来の職業選択に影響するほどの一品だ。鬼族の一座には感謝しないとな。


「斥候がゴブリンの哨戒部隊を発見した。数は20。先制攻撃で殲滅するぞ。前衛B部隊は背後に回って逃亡を阻止しろ」


 おっと前衛にも指示が来た。音を立てずに迅速に動かなきゃ。

 隠密技能と隊列を乱さないダッシュでの移動が難なく可能なあたり指揮官職の命令補正はかなりのものだ。

 うちのパーティにも欲しいが役割的に俺か田中が習得しなきゃいけなくなるのか。それに指揮官職は今回みたいに大部隊を指揮して一定期間、軍勢を相手にしないと習得できないし俺には正直、荷が重い。条件を満たすために指揮をさせてもらって万が一、死者が出てしまったら精神を病みそうだ。

 万全に指揮をするには後方で戦場を把握する必要もあるし戦士職が無駄になってしまうしな。諦めるか。


「うし、敵の背後に移動完了。何か異常はないか」

「大丈夫。ゴブリンは気付いてない」

「なら後は遠距離からの一斉射撃で逃げ出したゴブリンを狩るだけの楽な作業か」

「油断するなよ。死兵になって道連れにしようとガムシャラに暴れ出すかもしれん」

「へいへい。たかが20匹程度で怪我してちゃ赤字になるし。真面目にやるよ」


 木立の薄暗い遮蔽物の中、初めて見る二足歩行のモンスターを見やる。

 日に焼けた浅黒い肌の猿に似た怪物。ギィギィと仲間間で声を掛け合っているようだが以前に見た鬼族の少女とは別物だな。あっちは人間に小さい角が生えてるだけだもの。

 こりゃ同じ種族だと認めづらいわ。猿と人間は同じ仲間なんだから助け合えよと言われるようなもんだ。

 動物園にいるような可愛い猿ならともかく、野山に生息している殺人猿とかオラウータンとかゴリラとかと一緒にされたら誰だって怒る。

 ファンタジーだとその野山に潜む野生動物が殺戮を繰り返すと突然、人間に突然変異するなんて事態になるわけだが。

 リアルだったら恐怖の一言だな。もろクリーチャーだってそれ。

 それとも狼に育てられたっていう少年みたいな感動秘話になるのかもしれないか。進化が常識だし頑張ったなと誉められるのかもしれない。


「見ろバーストの一斉射撃だ」


 天から降ってきた弓矢が次々とゴブリンの頭上で爆発していく。中々の威力だ。

 悲鳴を上げて何体かのゴブリンがこちらに逃げてくるな。沙織さんの予想通りだ。

 さて、ここからが本番だな。ゴブリンとの戦争を始めよう。

ストックが尽きた。ここから不定期更新になります。

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