第三十七話その2 ダンジョンボス
ストリートチルドレンの問題が早期に片付いたこともあって、再びダンジョン探索に注力できるようになったわけだが。
俺達が初心者ダンジョンの冒険者達に歓迎されていない現状に変わりはないんだよな。
魔力操作の技能が広まったことで、狩場の独占で秘伝書に呪文書を買えるほど俺らが稼いでいたことも広まったようだ。
他の冒険者も気力操作技能を隠蔽してるんだから責められる謂れはないんだが、妬みの視線がなくなることもない。
仕方なく以前にストリートチルドレンの年長組に聞いたように初心者ダンジョンの領域の奥へと行くことになってしまった。
ボスモンスター、ダンジョン核を守るガーディアンはその迷宮の2段階上のモンスターが出現するようになっている。
初心者ダンジョンの場合は中級ダンジョンに出現する群れの主あたりになる。しかもダンジョン核の祝福で平均的な個体よりも優秀なステータスになっている。
上級モンスターと言うほどの強化ではないらしいが、よくダンジョン災害時に下克上が起きるなってくらいに強力なモンスターだ。
猪突荒野にいるガーディアンを遠目に見てるんだが山のような巨体で歩く度に細かな地震が起きている。
あれを俺らが知っているモンスターで考えるとビッグウルフあたりが打倒するのがダンジョン蟲毒になるわけだが、まるで想像できない。
進化したモンスターも群れるから、ビッグウルフの群れで対抗するんだろうがな。よほどの特異個体でないと下克上なんて成功しないだろう。
まあ、ダンジョン災害の度に必ずダンジョン蟲毒が発生するわけでもないか。現状のガーディアンが更なる進化と祝福を得るって方が納得できる。
「デカすぎね? あれが中級ダンジョンじゃ普通に生息してるの?」
「ダンジョンボスだから平均的な体格より大きいらしいが、それでも半分くらいの大きさはあるみたいだな」
「突撃イノシシが初級ダンジョン相当で二足歩行してオークになるのに、中級ダンジョンになると四足に戻るのか」
「ゴブリンと違ってオークは知的生命体じゃないからなぁ。二本足で立つ動物だから」
「フィクションに出てくるような性犯罪を冒す畜生生命体じゃなくて良かった」
「別のゲーム世界だとそっちのオークも生息してるけどな。ダンストだと人間の方がケダモノ設定だから……」
「一応、オークから猪獣人への進化先もあるけどな。オークは人間でいう猿段階」
「小山イノシシがあのモンスターの名前だっけ。ガーディアンだと普通に山くらいの大きさになるな」
「巨体のせいで素早さにマイナス補正がかかっているのが救いだな。あの大きさで突進されたら防御力なんて意味ないだろ」
「いや突進特技の変異版を持ってるから遅いからって油断は禁物だぞ。暴れまくりの特技って範囲攻撃だから小山イノシシの周囲は更地になる」
「仕留めることが出来たら食糧には困らないんだけどな」
「中級モンスター、しかもガーディアンの肉か。凄まじいステータスアップのチャンスだろうな」
「部位毎にガチャが出来そうだな。売っても高価だろうし素材としても優秀だから薬とかにもなりそう」
「変なこと考えるなよ。俺達だと傷を与えるどころか逃げることもままならないからな」
「まあ数キロも離れてるのにあの大きさだし近づこうとする奴なんていねえだろ」
「初心者ダンジョンって意外と広いよな」
「まあ神様クラスになると国どころか大陸レベルがダンジョン認定されるから」
「でも外部と内部の大きさが明らかに釣り合ってないんだよな。もっと、こじんまりしてたはずなんだが」
「空間拡張なんて珍しくないじゃん。魔法でさえ可能なんだし」
「別ゲーム世界でな。しかも大魔術」
「そうか? 初心者推奨ゲーム世界には行くだけで個人用異界が貰えるとこもあったはずだけど」
「破格すぎるログイン報酬だから初心者推奨ゲーム世界になったんだぞ」
小山イノシシ。超大型モンスターとしては弱い類のモンスターだが、その威容は遥か遠くからでも容易くわかる。
ガーディアンとして猪突荒野にいるのは例外個体だとしても象やマンモスよりも更に大きい。山と例えるより、陸上を歩くクジラだとでも表現した方がわかりやすいだろうか。
HP制で一定のダメージを食らうまでは倒れないから現実の巨大生物よりも脅威度は上だ。特技や魔法なんて現代兵器の代わりがなきゃ人間は蹂躙されるだけの存在だったろう。
むろん、今の俺達の実力じゃ蹂躙されるだけだが。
「ふー、あのボスモンスターに見られながら狩りをするのか。実害がなくてもプレッシャーがヤバいな」
「でもガーディアンが超大型モンスターなのは、まだマシな方なんだぞ」
「こっちに駆け付ける前に逃走できるからな」
「ダッシュの特技がなきゃ逃げられないくらいにステータスは高いんだけどな」
「他の冒険者とかいないじゃん。何で俺らだけ深奥に……」
「特技未収得の冒険者だとガーディアンに目を付けられた場合、生きて脱出する方が珍しいっていうんだから仕方ないだろ」
「まあ冒険者が全く寄り付かないおかげで突撃イノシシは狩り放題だ。頑張っていこう」
それから何度も小山イノシシが追いかけてくるせいで、初心者ダンジョンの稼ぎは突撃イノシシの数の割に少ない結果となった。
他のダンジョンにも息抜きを兼ねて挑戦してみたが、それでも猪突荒野が最も稼げたからガーディアンと命懸けの逃走劇をこれ以後、繰り返す羽目になる。
別のダンジョンの場合、ガーディアンに出会ったら即死するから小山イノシシしかガーディアンは知らないけれど、知能が高いのかこちらの顔を覚えたらしく俺達を発見する度に苛立たしそうな鳴き声を出すようになった。
被害はないとはいえ暴れまくり特技で地面にひびが入り上空から岩が縦横無尽に降ってくる光景は恐ろしいの一言だ。
周辺被害の範囲も推測して慎重に距離を取って逃げる必要がある。まあ小山イノシシの器用パラメーターは高くないから隠密技能でそこそこの突撃イノシシを狩って逃走するくらいなら楽勝だが。
不在の間にダンジョン核が万一、手を出されたらとガーディアンは一定範囲以上は決して追いかけては来ない。これは本能みたいなもんだろうか。
高等な知性があるだろうゴーレム工場のガーディアンあたりは部下に任せて単身で追いかけてきそうだから怖い。これからもダンジョンは細心の注意を払わないといけないな。
どれだけ下位のダンジョンだろうと場合によっては国を飲み込むほどのポテンシャルを秘めている。ダンストはダンジョンの歴史を綴ったゲームなのだから。
後から挿入した話にはその2その3とナンバーを振っていきます。




