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デスゲームが最近のブームな件  作者: 八虚空
ファーストログイン『Dungeon History』
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第三十三話 対魔法戦術

 初級ダンジョン高速鳥停。魔法を扱うハーピーと空を自在に飛び回る隼と鷹が襲ってくる岩石地帯。

 こちらの攻撃は当たらず向こうの攻撃は即死という一般冒険者にとっては生首畑よりも危険度の高いダンジョンだ。

 ここで冒険者は基本的に隠密技能で隠れ潜みながら獲物を狩り次第、退却するというスタイルで挑んでいるらしい。

 隼は高速鳥停で最も素早く小回りが利くから、大勢が中近距離でこちらを翻弄しながら飛び続ける。そこに鷹が遠距離から猛スピードでヒットアンドアウェイを行うんだとか。

 攻撃されてもかすり傷で済む隼と違い、鷹は意外と攻撃力が高く油断すると大怪我を負ったり岩場から投げ出されるらしい。

 足場となる岩場は高低差が激しく地面まで2,3メートルはある。地形ダメージで死ぬ危険性も無視できない。

 これでも飛行モンスターの中では最弱に分類されるらしく、戦士職とも真正面から渡り合う鷲に状態異常のスペシャリストの虫系にドラゴンの系譜と言われている爬虫類系が出てこないだけマシなんだとか。

 そういうのが出現するとこちらの戦略も破綻していたので運が良かったと思う。


「よっし、隼ゲット!」

「スラッシュ。もういっちょスラッシュ!」

「化物ヒツジの投げ網がここまで役に立つとはな。入れ食いじゃんか」

「鷹は個別対処する必要があるけど。ショット」

「やばかったらブレイクで躊躇わずに吹き飛ばすぞ。避けられるような足場はないんだからな」

「了解」


 馬鹿正直に剣と盾で対応しようとしないで網を使うだけで難易度は格段に下がった。

 ソルト近郊には海がないから漁に使用する網を使うって思考が浮かばなかったんだろうか。それとも装備枠が下手にあるせいで武器に拘ったのか。

 アイテム分類の化物ヒツジの投げ網にスラッシュで操作補正を加えると面白いように隼が捕まえられた。

 たまに来る鷹は高橋がショットで撃ち落として回収する。ダガーに紐を括り付けると武器も失わずに獲物を捕らえられるから無駄がなくていい。


「ハーピーが出てきた。戦闘班Bは防御、魔法班は攻撃準備だ!」


 唯一、ハーピーだけは高橋の攻撃が届かない遠距離から魔法を撃ちこんでくるから魔法班にしか対処できない。

 単純にアロー系の魔法で弾幕を張っても空中を飛んで回避してくるから、こちらが一方的に攻撃される事態に何度かなっている。

 一部の戦闘班と魔法班が魔力操作で光を纏う。呪文詠唱をする魔法班だけじゃなく戦闘班も魔力を纏うのは普通の特技では魔法には無力だからだ。


「いっくぞ、合わせろよ!」

「おう!」

「ハーピー、風魔法発動! 着弾まで3・2・1、いま!」

「「「ブレイク!!」」」


 突撃イノシシの鉄骨盾に魔力を纏わせたまま新たに気力操作で無理やりブレイクを発動させる。

 こうすることで硬直時間が発生する代わりに本来なら干渉し合わないはずの魔法と特技が空中で激突するようになる。

 まだ気功特技を覚えてないが故に、魔法に弱い俺達が対処法を試し続けた結果、成果の出た対魔法戦術だ。

 苦し紛れの工夫に過ぎないかもしれないがハーレムパーティでも気功特技便りなら知られていない知識なのかもしれない。


「三発のウィンドアロー偏差射撃で目的地への誘導成功したぞ!」

「くそっファイアーボールの高度はこれ以上、上げられない。ここで破裂させてくれ!」

「了解。ウィンドボールの曲射、弾道軌道修正」

「当たれ。当たれよ」

「シャッ、ヒット来たー!」

「いや直撃じゃない。爆炎に少し巻き込まれただけだ」

「でも、ふらふらしてるぞ」

「墜落しないならハーピーの討伐までは無理だな」

「まあ、近寄ってこないだけでも成功だよ」

「嫌がらせみたいにちょくちょく魔法を撃たれないだけで十分」


 近くだと魔法の速度が速すぎて操作が難しいが、実は魔法は曲げたり浮かせたりとある程度は魔法使いの意思通りに動かせる。

 特技が気力操作であれだけ弄れるんだから魔力操作が出来れば普通に出来て当たり前のような話なのかもしれない。

 普通に魔法を撃っても空中を飛ぶハーピーに当てることは出来ないので、魔法班は飛行軌道を予測した偏差射撃だの、魔法同士を空中でぶつける魔法炸裂弾だの凄いことを試し始めた。

 戦闘班が魔法無効化に成果を上げたことでメラメラと対抗意識を燃やしている気がしてならない。


「鷹がそこそこに隼が大量か。ハーピーこそ狩れないけど一日の最高報酬額を更新するかもな」

「魔法威力向上装備が作れそうだから、何とかしてハーピー狩れないかな」

「こっちも空を飛べれば話は早いんだが」

「飛行呪文なんて上級魔法は習得不可能だろ。少なくとも知識100以上で呪文書を探すところからだぞ」

「だよな。あれ、隼が離れていくぞ?」

「ハーピーが鳴き声を上げている。念の為、警戒しておこう」


 あれからハーピーも警戒したのか、こちらに魔法を撃とうと近づかなくなった。

 でもその代わりに飛行モンスターの数も激減している。鳴き声で連絡を取り合っているのかハーピーが独特の声を発した後、一斉にこちらに群がっていた隼も引き上げていったのだ。

 他のダンジョンでもモンスターが統率された群れとして襲い掛かってきたことはあれど、ここまで相手にされないのは初めてだ。

 やはり空を飛べるということが気持ちの余裕になっているんだろうか。俺達では巣になっているだろう高所の岩石地帯にまでは辿り着けない。

 つまりダンジョン核が害される心配もないのだ。

 ガーディアンと出くわすダンジョン最奥なんて最初から行く予定なんてないんだが、行かないと行けないでは対応も違うということなんだろう。

 飛行モンスターが退却した後も粘ってはみたんだが新しい群れが来ることもなく、初級ダンジョン高速鳥停を後にすることになった。

 戦闘自体は完全勝利だったのに何故か負けた気分だ。

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