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デスゲームが最近のブームな件  作者: 八虚空
ファーストログイン『Dungeon History』
22/66

第二十一話 ゴーレム工場

 伊藤がログアウトして早くも10日が経った。

 ぎこちなかった連携は自然と上手く行くようになり、魔法班のレベルアップで呪文保持者も増えて、報酬で装備や秘伝書を買いパーティはより強くなった。

 それが伊藤の痕跡を消していくようで少し悲しかったが仕方ないことだ。残された二十名で食っていかなくてはならない。

 魔法使いは呪文書が安い分、武器は高額になる傾向にある。鉄の剣が千ゴールドしかしないのに魔攻+20の杖は三千ゴールドもする。

 それでも戦闘班が秘伝書を買えるほど稼いでいるから魔法班も専用武器だけでなく、呪文も複数揃えられるほど強化は進んでいる。

 最初に魔法使いが覚える呪文はアロー系とボール系だ。一番安く実用的で覚えやすい。

 ファイアーボール、ウォーターボール、ウィンドボール、アースボール。

 ファイアーアロー、ウォーターアロー、ウィンドアロー、アースアロー。

 属性毎に弱点だったり耐性だったりがあるが、威力はボール系が50、アロー系が30の固定ダメージだ。

 消費が同じMP10なのでボール系だけでいいように思えるが射程とスピードが違う。至近距離で手榴弾を使うより拳銃を使う方がいいと言えばわかるだろうか。

 こういう最初に覚えるべき魔法を下級呪文と呼ぶ。だいたい知識30~35の範囲の呪文だ。

 下級呪文の習得に知識30のパラメータは必要になるから初期ステータスで知識がどれだけ高かったかわかるな。俺のステータスに30越えのパラメータは未だにねえぞ。

 秘伝書は知識6もあれば習得可能だから、よほどの馬鹿でない限り問題ない。少なくとも俺達のパーティは平気だった。

 こっちは知識パラメータでランク分けされてないから如実に金額で振るい分けされてる。前衛なら習得して当然と言われる気功特技ですら3万もする。

 1万で覚えられる有用な特技をずっと探してきたが、やっぱオーソドックスな特技になるな。掘り出し物なんて滅多にないから掘り出し物なのだ。

 スラッシュ、固定ダメージ30消費HP10。クラッシュ、固定ダメージ50消費HP20。ブレイク、固定ダメージ30消費HP10。

 この三つが攻撃系特技だ。クラッシュは溜めの長く消費が重い大技。スラッシュは隙の少ない小技。ブレイクはノックバック性能がある防御系ってとこだ。

 他にも移動系の特技ダッシュとかがあるが、最初に覚えるのは攻撃特技の方がいいだろう。

 俺が選んだ特技は消費が軽く隙の少ないスラッシュだ。序盤にHP消費が重いのは怖いし威力も持て余す。防御は生産班を信じた。

 この十日間でやっと生産班が職業を習得してくれたのだ。これまで作成してきた防具を素材本来の力を引き出せるようになったと全て作り直していた。

 その結果がこれだ。


中島充希(1/8)ステータス

『Dungeon History』

・レベル13 ・職業 壱ノ戦士

HP55/55 MP25/25 攻撃47(17+30) 防御49(16+33)

筋力28 体力25 素早さ13 器用12(9+3) 精神10 知識14

・呪文なし ・特技 スラッシュ(固30、消10)

・技能『採取』『察知』『解体』『隠密』『剣術』『護衛』

   『魔力感知』『魔力操作』『気力感知』『気力操作』

・装備『鉄の剣(攻+30)』『滑らか毛皮のグローブ(防+5、器+3)』『化物ヒツジの鎖帷子(防+13)』『幻覚狐の消音靴(防+5、隠密補正)』『退魔の首飾り(魔法抵抗に補正)』『突撃イノシシの骨盾(防+10)』

・アイテムボックス(10×99)


 装備の更新で防御力が9も上がっている。これで正式にハーレムパーティの初期装備に追い付いたな。

 他にもレベルアップで筋力と知識が上がっている。さすがに毎回、モンスター肉の効果は出ないか。訓練も頑張っているんだが。

 まあ、レベルアップ時に絶対に上がるわけでも通常時に上がらないわけでもない。長い目で見よう。


・アイテムボックス(10×99)

薬草×98、治癒草×73、体力回復ポーション×5、状態異常回復ポーション×2、化物ヒツジの投げ網×5、大ネズミの食用リュック×5、大ネズミの武装リュック×4、大ネズミの財布×3


 薬草は消費する分を含めても持ちきれなくなってるな。一回の探索で使える薬草なんて限られてるからここまでスタックする必要はないんだが、なんとなく貯め込んでしまう。

 治癒草も幻覚魔法には役立たないから使わずにスタックされ続けている。珍しさもあって売れば50ゴールドにはなるんだが、毒とかにも効果あるからな。一応、持っておこう。

 投げ網は幻覚狐対策に生産班が作成してくれたものだ。職業を得て硬くて加工しにくい化物ヒツジ素材もある程度は自由に弄れるようになったらしい。

 これで戦闘班が遠距離から幻覚狐を捕縛すれば、魔法班が簡単に止めを刺せるようになった。他にも突撃イノシシを盗賊プレイヤーが転倒させたりと幅広く使われている。

 逃走する際の足止めにも使えるし便利だ。生産班の最近の仕事はこの投げ網の量産が主になっている。

 こうして、いざという時の逃走手段も出来たし、そろそろ初級ダンジョンに挑戦してみようという話になった。

 初級ダンジョン、ゴーレム工場。ここでは最下級のマッドゴーレムからクレイゴーレム・ブロンズゴーレム、アイアンゴーレムと複数の敵が出てくるが物理一辺倒で逃走事態は簡単だ。

 素材も魔力を帯びた素材らしくマッドゴーレムで300ゴールド、クレイが500ゴールド、ブロンズが1200ゴールド、アイアンが3000ゴールドだ。

 銅の剣が300ゴールドで、鉄の剣が1000ゴールドもするのに重量が遥かに大きいゴーレムがその程度の値段しかしないのに引っ掛かるが、まあ加工も難しいんだろう。

 金になって比較的に安全なのに化物ヒツジにいる冒険者がゴーレム工場に行かないのは簡単な理由だ。ひたすらに頑丈で固い。

 特技の金剛体で魔力操作も気力操作も通じないだけでなく、ゴーレムには物理耐性がある。

 たしか最終的なダメージに0,8倍の修正を施してきたはずだ。マッドゴーレムすら特技を使用しないと倒せない。

 魔法ならダメージに1,2倍の補正が加わり、土属性に有利な風属性なら更に1,2倍の補正が加わるという魔法使い必須のダンジョンだ。

 ところでダンストにも出てくる魔法の四元素設定で水 → 火 → 風 → 土 → 水の強さの強弱だけど、これ風が土に強いのって時間で風化するからだよね?

 何で物理的な風が土に強いのか、これがわからない。建物が台風にやられるのとか相当なパワーが必要だぞ。

 エネルギーが同じなら土が風を防いで終わりじゃないのだろうか。魔法は奥が深い。


「マッドゴーレムにスラッシュ、クレイゴーレムにクラッシュ、ブロンズに魔法攻撃でいいんだよな?」

「ああ、それで倒せるはず。アイアンもボール系の掃射で倒せないか試すだけ試しておこう」

「それならマッドゴーレムも通常攻撃で倒せないか試そうぜ。袋にすれば削りきれるだろ」

「鉄の剣が摩耗しないように研ぎ直すのは生産班の仕事なんだが」

「直らないと1000ゴールドの損失になるな。たしかゴーレム用に武器を買った奴がいたろ」

「おう、鉄のメイス1800ゴールド。攻撃力50だ。値段の割に攻撃力が高いが、とにかく重い」

「メイスの攻撃力高いな。鋼の剣4000ゴールドと同じ数値か」

「秘伝書じゃなくて武器に金を回すべきだったか」

「いや、武器は破損するかもしれないから特技を一つは持っておく方がいいだろ」

「万が一にログアウトすることになった時、別のゲーム世界で買える武器よりダンスト限定の特技を覚えた方がいいぞ」

「まあダンストの秘伝書って売買されてるから現実でも買えるけどな」

「クソ高いやん」

「たしか数十万から数百万もしたような」

「え、1万ゴールドって現実の100万円に相当するの?」

「売るものによって簡単に相場が変動するから違う。秘伝書はダンスト系列世界に十年の寿命を捧げて来て、こっちで1万ゴールド稼がないといけないから希少性が高い」

「ハッキリ言って100万円くらいしかしないのはぼられてるよな」

「でもダンストのゲームシステムを取り込まないとゴミだし」

「こっちで成功した奴が何百冊も一気に持ち込んだり、現実で買い漁られて全く在庫がなかったりと変動が激しすぎるんだよな」

「現実でこれから行くゲーム世界のアイテムを買い込んでスタートダッシュする。アイテムボックス持ちなら、これが可能になるからな」

「ダンストが初心者推奨世界になってる理由だよな」

「寿命を延ばす薬って一億しかしないよな。秘伝書を大量に持ち込めれば買える?」

「最低額だから買えたら幸運だし、特別な伝手がないならオークションにすら行けないぞ」

「ゲーム世界に関係ない普通の金持ちも参加するしな」

「まだゲーム世界で寿命を延ばす手段を探した方が成功率が高い。不老と違って寿命を延ばすだけなら意外といけるらしい」

「そうじゃないと高レベルプレイヤーが余裕綽々なのはおかしいからな」

「寿命が少ないから羽目を外してるんだと思ってた」

「ならゲームアイテムと違って超常チェーンメールがせいぜい数万しかしないのは何でだ? 普通、もっと秘匿するだろ?」

「黒幕がバラ撒きまくってるから」

「別の奴にメール送らないとそもそもログインすら出来ないしな」

「そこらに人を殺す怪物が歩き回ってるような世界だぞ。他人にやらせて金で成果物を買う方がどう考えても楽だ」


 まあ現実への悪影響が酷いからログイン禁止になってるはずのゲーム世界の超常チェーンメールすら普通に出回ってるからな。

 クトゥルフ関連とか特に。これは麻薬みたいに撲滅できてないだけなのか、それとも黒幕のテコ入れでもあるのか。

 まあ、危険なだけ魅力的なゲームアイテムがあることも事実だから本気で禁止にはしていないだけかもな。イスの偉大なる種族とか取引相手としては最高峰らしいし。

 そもそも上位プレイヤーがシステム習得を推奨してるくらいなんだし禁止は無理か。黒幕ほど謎に包まれてはいないけど、そこそこの数がいてこちらに干渉してくるから政府にとっては本当に目障りだろうな。


「ウルフ発見」

「魔法班、生産班は注意な」

「いや、もう終わる」

「気力操作を覚えたら雑魚だな」

「そりゃ初心者エリアのエネミーだし」

「こいつらが上位種を含めて大量にいるダンジョンとか、群れがいるフィールドとかは危険だけどな」

「数が手に入らないから生産材料には無理があるか。いや、盗賊プレイヤーだけになら配布可能になるかも」

「500ゴールドしかしないし、それでいいんじゃね。おおい。ウルフはアイテムボックスに保存なー」

「ゴーレム工場が見えてきたぞ」

「本当にちょっと移動するだけでダンジョンがいくつもあんなこの町」

「ダンジョン災害が全部のダンジョンで起こったらどうなるの?」

「人間や魔族が根こそぎ殺されて修羅界が誕生します」

「いや、あれは高難易度ダンジョンを養殖してわざとダンジョン災害を頻発させたテロだから」

「まさかプレイヤーの仕業じゃないとは思わなかったよな」

「現地人にもヤバい奴はいますよっていう事例」

「上位プレイヤーにちなんで上位NPCっていうんだっけ」

「自称してるけど広まらなかったよな」

「同時期にカラフルのヤンデレ嬢が出現したから」

「向こうはNPC扱いされると発狂するからな」

「何故か世界を滅ぼしたダンスト現地人よりもカラフル現地人の方が恐れられてる不思議」

「だってカラフルに戦闘システムなんてないもの……」

「一方的にプレイヤーが殺されていったの未だに理屈わかってないからな」

「銃で武装した強盗が立て籠ってるのと、クラスメイトが急に包丁を突き刺して来るのは別種の怖さがあるからな」

「ほら、もうダンジョンだぞ。話はそこまでだ。切り替えていけ」

「うーい」


 他のダンジョンがフィールドとの境目がわからないほど自然だったのに対し、ゴーレム工場ははっきりと人工物だとわかる見た目をしている。

 地面に敷かれている素材はコンクリートで門には破壊された鉄扉が残っており各所に監視カメラが設置されている。

 これがダンジョン核によって一から作られた自然物だとは到底、思えない。ダンジョン核自身も自然のマナ結晶に過ぎないのだから人間の手は一切入っていないはずなのに。


「ここのダンジョン核って転生した現代人だろ。ラノベで見た」

「それはない。転生があっても超常チェーンメール経由じゃないと黒幕に妨害される」

「日本魔法連盟の世界移動に関する重大事項報告書によると、平行世界移動でのゲーム世界への渡航は天文学的なエネルギーを要するとあったな」

「長い。もっと解りやすく」

「黒幕さんが部外者は通行料を払えって吹っ掛けてくる」

「俺らも十年の寿命を払ってるぞ」

「エネルギー的には誤差なんだよな」

「カラフルの人はどうしてるんです?」

「謎」

「だから恐れられてる」

「そもそもゲーム世界には機械生命体とかいるし、現実でも宇宙には星そのものが金属で出来た星とかあるから」

「ダンストのダンジョン核が監視カメラを作れる理由としては弱くないか?」

「放置しておくとケイ素生命体とかに進化するんでしょ」


 魔法班はさすがに知識が高いだけあって論文とかに目を通してるらしい。ゲーム世界への通常移動は完全に無理だと思ってた。

 まあ、そういう世界の理とかの推測は今日の飯代を稼いでからにしてもらおう。

 門扉から内部に進むと建物から警備員のつもりだろう泥と土塊で形成されたゴーレムが現れる。ここでロボットが出てきたら完全にSF物になってたな。

 敵はマッドゴーレムとクレイゴーレムだ。経費の関係だろうか、入り口は雑魚モンスターを多数配置して追い返そうとしてくる。

 稼ぎ的にはブロンズを狩りたいんだが、そこまで進むと攻撃が通らないかもしれないアイアンゴーレムが出てくるんだよな。

 打合せ通りにまずは近づいてきたマッドゴーレムにスラッシュを放とう。既にマッドゴーレムが30、クレイゴーレムが20も来てる。通常攻撃を試してる時間なんてない。

 一,二秒にも満たない硬直時間の中で体中の気が手元と腰、足の一部に集まってるのがわかる。白い光が身体に纏わりついている。色は個人差があるが、これが気だ。

 自分でもどうやってここまで早く動いたのかわからないほどの加速で鉄の剣を目標のマッドゴーレムに叩き込んだ。粘りつくような感触が伝わってきたが容易く両断していく。

 ゴーレムにはよくある設定のように核となる動力や弱点がない。RPGのようにHPがなくなるまで攻撃し続ける以外には倒せない。

 まあ、この世界の生き物はHPがなくならない限り心臓や頭部を破壊されても再生可能なとんでもない世界だが。普通は部位欠損の持続ダメージで死ぬとしても。

 冒険者ギルドで聞いた通りスラッシュの一撃でマッドゴーレムのHPは全損したんだろう、二つに別れた身体が自重で崩壊していく。

 ゴーレムは身体がバラバラにされようと人間の形が残ってる内は動く。切り落とされた腕に足を掴まれて包囲されるというのがソロで来た冒険者の末路なんだとか。

 でも下がコンクリートで良かった。普通の地面だったら素材となる魔力の籠った泥と普通の土の見分けがつかないところだ。


「おら、スラッシュ!」

「ふははっスラッシュ!」

「食らえ、スラッシュ!」

「もういっちょ、スラッシュ!」

「必殺技が被りすぎだって」

「だって選択肢があってないようなものじゃん」

「俺は特別だぞ。クラッシュ!」

「あ、俺も。クラッシュ!」

「そんでもってクラッシュ!」

「ブレイクが希少特技みたいだな!」

「馬鹿、泥が飛び散って回収に手間取るだろうが!」

「ふざけんな! こっちに泥が飛び散ってるんだよ!」

「メイス強いな。マッドゴーレムなら一撃だ」

「こっちみたいに薬草を食べたり息切れで休憩もしないから、一番活躍してるんだが」

「通常攻撃したら鉄の剣が泥に飲まれて取れなくなった! 誰か助けて!」

「ほいほい。スラッシュ」

「もはや特技を叫ぶことも怠い」

「薬草がこれまでにない勢いで消えていく。スタックしておいて良かった」

「ここって薬草が生えてないもんな」

「俺ってそんなに薬草もってないぞ。もう売ったから」

「おいおい、いくつ持ってるんだよ」

「あと12」

「初心者エリアなら生えてるから帰りに取っていこうか」

「じゃあ、奥には行かないってことで」

「思ったよりも敵が多いしな」

「大ネズミみたいに入口で狩る感じになりそうか。こいつらの場合、フレンドリーファイアすら躊躇わないからやりづらい」

「そうか? 大ネズミみたいな知恵は感じないから安心したんだが」

「連携もしてこないしな。監視カメラがあったから軍隊みたいなロボットなのかとドキドキしてた」

「ダンジョン蟲毒で成長するとロボットが出てくるのかもな」

「ちょっと見てみたいな」

「解体しなくていいから生産班は仕事がないな」

「鉄の剣がボロボロだから補修してくれ」

「それは時間がかかるから帰ってからにしよう。生産班は泥と土の回収をよろしく」

「単純な肉体労働は苦手だけど、仕方ない。スコップとかが欲しいな。作るか」

「お、鍛冶技能はないと思ってたけど武器も作れるのか?」

「鍛冶技能だけなら持ってる。ただ特化した職業を持ってる奴がいないから武器は無理だ」

「ああ。スコップとかの日用品なら品質を気にしなくていいのか」

「システム適応させることが品質と言われると、もにょるんだがな」

「奥に行かないなら魔法班はクレイゴーレムにMP使うでいいか?」

「OK」

「おけおけ」

「ウィンドアローなら一発、それ以外の属性ならボール系が必要か」

「水属性の魔法は禁止な! ダメージは食らってるんだが死なない上に動きが早くなる!」

「薬草みたいに廉価な回復手段がないから、魔法だと思ったよりも数を稼げないな」

「武器の損耗がないから薬草以上にリーズナブルだぞ。魔法」

「特技を持ってるのに戦士職がゴーレムを狩りに来ない理由って武器が駄目になるからかぁ」

「生産職が仲間にいないと黒字に出来ないんだろ」

「魔法職がいるなら黒字に出来るけど、回収は非力な魔法職だと時間がかかるから別ビルドが必要か」

「パーティの重要性がわかるな」

「ゲームなら別の職業でパーティを組むのが常識なんだけどな」

「職業毎に社会階級が違うから」

「前に聞いた一日に100ゴールドの生活費が普通っていうの戦士ビルドの下層民だけらしいしな」

「貴族の魔法使いは言わずもがなだが、生産職も中流階級で暮らしぶりが違う……」

「でも冒険者って儲かるじゃん。そんな困窮するか?」

「それは俺達が集団でレベル上げに成功して装備を整えられて特技まで手に入れたからであってな」

「大体はネズミの巣穴で酷使されて装備も碌なものがなく、上に搾取されるからな」

「雑魚を集団でボコるといつまでもレベルが上がらなくなるという」

「初心者冒険者への間接的な援助こそあるけど、それでレベルアップが出来ないならそいつが悪いという風潮になるからな」

「一部の冒険者とかヤクザ、マフィアそのものだからな。しかも、めっちゃ強い」

「下手なことして目を付けられるなよ。俺達が無事なのは先達の貴族プレイヤーとかハーレム先輩とかがいるから様子見してるだけだからな」

「おーい、次のゴーレムが来たぞ! 喋ってないで手を動かせ!」

「ウィーッス」


 結局、途切れることなく出てくるゴーレムに追い出される形でダンジョンを退却することになった。

 破壊された門扉のあった場所を通ると途端に追いかけてこなくなったから大ネズミよりも退却は楽だ。これなら武器の補修額しだいでまた来てもいいかもしれない。

 打倒したゴーレムはマッド80体、クレイ50体だ。300ゴールドと500ゴールドと幻覚狐と突撃イノシシと変わらない報酬額だから、利益だけで見るならこれまでの倍はいく。

 しかも時間経過も大したことはない。退却したのは鉄の剣がボロボロになったのと、特技を使用する為に薬草を食ってたら食いすぎて吐きそうになったというだけだ。

 延々とゴーレムがやってくるから突撃イノシシみたいに釣りをしたり、幻覚狐みたいに奇襲に警戒する必要もなかった。

 なんていうか圧倒的に楽な上に稼げる。まあ、前提条件としてパーティ全体が特技を保有していたり魔法を使えたりしないといけないが。

 鉄のメイスでも通常攻撃だとマッドゴーレムまでしか一撃でやれないしな。クレイゴーレムに時間がかかると囲まれて包囲されて死ぬ。

 帰ってから鉄の剣を点検するとほぼ酷使されすぎて駄目になっていた。唯一、鉄のメイスだけが何ともなかったことがわかったので次回から鉄のメイスを揃えてゴーレム工場を狩場にすることになった。

 今日の稼ぎは鉄の剣を引いて一人2000ゴールド。ここから生活費とパーティ共通費を抜いたとしても貯蓄と合わせて鉄のメイスを買うくらいの金額は出せるな。

 秘伝書に新しい武器と今の時期は金さえあれば強くなれる。これからが楽しみだ。

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