第5話 |変 身 !《フォールンフォーム》
第5話 変 身 !
俺の選んだ宿に不満タラタラのヴァンと別れ、5分ほど歩くとキター・コレーにたどり着く。。
ちなみにキターの発音は楽器のギターで、コレーはパリコレのコレーって感じの発音だ。煽りのキタコレとは発音が違うので聞いてる分にはそこまでヤバくなかった。
建物は三階建で石や地球で言うコンクリートの様な頑丈な素材で出来ている。
「すいませーん」
取りあえず、小さなカウンターに誰もいないので声を掛けてみる。
「はーい。少しお待ちをー」
遠くから可愛らしい声が聞こえてくる。それからパタパタと足音が聞こえて奥から来たのは身長130㎝くらいの少女だ。
いや、少女か?小柄だが、出るとこは出てて引っ込む所は引っ込んでいる、身長さえあればかなりのセクシーボディであろう。それに耳は長くないが横に尖がっている。
もしかしたら人種が違うのかもしれない。冒険者ギルドにも猫や犬の様な耳をつけてる人たちを少しばかりだが見た。それにアンシーも推定エルフだしな。
「えっとーお食事ですか、それともお泊りですかー?」
下から上目遣いで首をかしげながら俺の顔を見てくる。ちょっと萌えそうだなコレは。うんうんカワイイぞ。
「あ、えーと。冒険者ギルドからの紹介で宿を取りたくて来たのですが」
「お泊りですねー。えーと、初めてのお客様ですよねー。お手数ですがギルドカードの提示をお願いしますー」
「これでいいかな?」
「有難うございますー。わ!ランクCのハンターさんなんですね。凄いですー。当店は一日銀貨1枚で朝食と夕食付です。勿論外でお食事をされても構いませんー」
「それで構わないよ」
「それでは何泊にしますか?当店は申し訳ないですが前金制でしてー」
「とりあえず3泊でいいかな?その後も延長する事はできるかい?」
「はいー問題なくできますよー」
銀貨3枚を渡す。手もちっちゃいな。うーん実年齢はいくつなんだろ?これで軽く100歳越えてるとかファンタジーだとあり得るから全く判断がつかないな。
「では、此方がカギですねー。3階の303号室ですー。あと此方が本日の夕食券になりますー。あ、食堂は9時で閉店ですのでよろしくお願いしますねー」
「ありがとう」
そう言ってカギを受け取ると、階段を見つけて登っていく。
カギは所謂、絵に描いたようなファンタジー風なもので細長い金属棒の先に小さな板がついていて、それに溝があるタイプだ。
鍵の機構は単純そうに見えるが、溝はかなり精巧複雑に作られている。硬貨についてもかなりしっかりした細工だったしこの世界は金属を扱う技術は高いのかもしれない。
そんな事を考えながら鍵を開けて部屋に入る。
ベットが一つと簡単なテーブルとイス、そして区分けされたトイレがあり、明かりが付いていて明るい。部屋の四隅にお皿の様な物が付いていて、そこに光る魔石が入っている様だ。
トイレは・・・水洗?まぁ水洗といっても、横にある水の入った大きな桶から容器に水を入れてバルブを回して開放するだけの構造だが、それでも良くできているな。
この感じだと下水が存在するってことか?たしか地球も紀元前の古代ローマ時代には既に水道が存在していたのだから何もおかしな話ではないか。
という訳で、ベットにダーイブ!そこそこの硬さだ。毎日シーツは洗濯されているようだ。そりゃそうか、推定1万円の宿なんだからな。
十分ベットの心地よさを堪能したので、ベットに胡坐をかいて荷物の入った魔法の袋を開く。
魔法陣を展開させて中身を確認。袋の魔法陣、スマホ見たいな操作で拡大縮小、モニターである魔法陣の増設も出来るから楽ちんでいいな。
先ずは、アイテムを確認していく。エアーソフトガンのバッテリーにガス缶、BB弾(通常弾)各種弾倉、NV対応IR付きLEDライト等、予備のダットサイトやスコープ、拡張用ピカティーニレール、サプレッサー等のエアーソフトガン用品を取り出す。
そして、レーザー距離計や、コンパス、水筒、飯盒、折り畳みナイフ、メタルマッチ、耐荷重コードブレスレッド、缶タイプのガスバーナー、ポータブル電動虫よけ器具、等のサバイバル用品。どれも愛用の品々だ。
あとはツールボックス1と2と3がある。よし確認してみるか。
ツールボックス1を取り出し開けてみると、中にはドライバーからレンチ、小型ハンマー、こじ開け、ペンチ各種などのメンテ用工具がごっそりと入っている。もちろんこれも地球で使っていた愛用品だ。
これはありがたいな。でも1にこれだけ入ってると2と3には何が入っているのだろうか?取りあえず2を開けてみる。
そこには、カッターやデザインナイフ、鉄ノコ、極小ノコ、ケガキ針、差し金、ノギス、小型のハイトゲージ、ニッパー、ピンセット、ヤスリ、彫刻刀各種のパーツ作成工具だった。
しかも、お気に入りの、ネジの溝をつくるためのダイスや、ネジ穴を作る為のタップが各サイズで入っている。どれもJIS規格で統一された素晴らしい代物だ。
おっと、工具で喜んでいる場合ではないな。ツールボックス3を開けよう。中身は、グリス、研磨グリス、接着剤各種、シリコンスプレー、潤滑オイルスプレー、錆取りスプレー、エアーダスター等の自分が普段使っている代物だ。
他にも、電動工具箱まであるな。電気が使えないこの世界じゃ意味なさそうだ。何で入ってるんだろうか?後回しにして、お楽しみの装備品に移る。
先ずはエアーソフトガンからだな。一つ一つ取り出しては確認する。
タイプ:ハンドガン カクイ コルトM1911 ハイキャパDDR ガスブローバック Lv1【装弾数31+1 基礎威力.45ACP相当 初速80m/s 有効射程距離0.01~20m 最大射程40m】
タイプ:ハンドガン カクイ デトニクス.45コンバットマスター ガスブローバック Lv1【装弾数18+1 基礎威力.45ACP相当 初速75m/s 有効射程距離0.01~18m 最大射程35m】
タイプ:ハンドガン カクゼン APS-DREI 特殊コッキング Lv1【装弾数5+1 基礎威力PG-7VL対戦車榴弾相当 初速90m/s 有効射程距離10~200m 最大射程距離300m】
タイプ:サブマシンガン スクイテック クリスベクター電動 Lv1【装弾数95発 基礎威力.45ACP相当 初速85m/s 有効射程距離0.01~30m 最大射程距離60m 連射性能秒間14発】ダットサイト〔オープン型〕装着中
タイプ:アサルトライフル スクイテック LVOA-C 電動 Lv1【装弾数320発 基礎威力5.56NATO相当 初速90m/s 有効射程距離0.01~200m 最大射程距離400m 連射性能秒間16発】ダットサイト〔チューブ型〕+3倍マグニファイヤー〔可動式〕装着中
タイプ:スナイパーライフル カクゼン TYPE96A1 コッキング Lv1【装弾数30発 7.62NATO相当 初速95m/s 有効射程距離0.01~750m 最大射程距離1500m】3-10倍スコープ装備済み
なんじゃこりゃ。愛銃達が揃ってはいるが、それぞれの項目がいろいろおかしい。
まずレベルが付いている。これは使っているうちに上がるのか?何か合成スキルか何かで上がるのだろうか?
そして、有効射程距離と最大射程距離が、アサルトライフルやスナイパーライフルがめちゃくちゃだな。エアーソフトガンなんて弾の重さ軽くしたって100mなんてまともに飛ばないだろうに。これはどういう事なんだろう?発射からの減速が本来の物より緩やかなんだろうか?
うーん、有効射程距離ってのは恐らく着弾した時に本来の威力が出る区間で最大射程距離は純粋に弾が飛ぶ距離だと考えた方がいいだろう。これは実銃なんかもスペック的に似たようなのがあったと思う。
.45ACP相当とか5.56NATO相当ってのは昼の様子から着弾後の弾の威力だろう。同じBB弾入れても放った銃の種類によって当たった時の威力が実銃に使われている実弾の威力に変換されるってのは面白いな。
残りの項目は弾の初速、連射速度や装弾数だが、これらは通常のエアーソフトガンと大体同じか少し高いくらいだ。
そして・・・余りのひどさに後回しにしていたけど、APS-DREIに関しては、めちゃくちゃ意味不明だ。そもそもAPS-DREIは、主に精密射撃競技で使うハンドガンタイプのエアーソフトガンで実銃モデルもなく、エアーソフトガンメーカーのカクイオリジナル商品だ。また他のエアーソフトガンとは違った発射機構をもった特殊なメカニズムのエアーソフトガンでもある。
それが、どういうことだ?この基礎威力がPG-7VL対戦車榴弾相当ってのは?PGってついて対戦車榴弾って書かれてるから恐らくRPG-7系のロケントランチャーの弾頭の事なんだろうけど、この世界で対戦車榴弾って悪戯にも程があるだろう。射程も別にRPG-7の射程という訳ではなさそうだし。ゴーレムみたいな物質系が出た時の為だろうか?
それとも戦車級の装甲を持つモンスターがこの世界には、ワラワラいるのだろうか?どちらにしても使いどころと距離を間違えれば爆発に巻き込まれて自滅しそうだ。使う時には注意が必要だろう。
そんな眩暈がするような内容から少し離れるために武器を片付けて防具関係を出してみる。
迷彩ヤッケ(上下)【防御力5・草原、林、森、密林等での視覚による敵の命中精度低下(小)敵索敵性能低下(小)・高温時のマイナス補正(中)ステ異常率増加(中)】
雨カッパ (上下)【防御力7・雨天時のマイナス補正率低下(大)・低温時のマイナス補正軽減(小)ステ異常率低下(小)・高温時のマイナス補正(大)ステ異常率増加(大)】
タクティカルヘルメット(黒)【防御力25・低温時のマイナス補正軽減(小)ステ異常率低下(小)・高温時のマイナス補正(小)ステ異常率増加(小)】
タクティカルジャケット(黒)【防御力15・低温時のマイナス補正軽減(小)ステ異常率低下(小)・高温時のマイナス補正(小)ステ異常率増加(小)】
タクティカルベスト(黒)【防御力12】
タクティカルパンツ(黒)【防御力15・低温時のマイナス補正軽減(小)ステ異常率低下(小)・高温時のマイナス補正(小)ステ異常増加(小)】
タクティカルブーツ(黒)【防御力10・低温時のマイナス補正軽減(小)・高温時のマイナス補正(小)・地形によるマイナス補正軽減(中)ステ異常軽減(小)】
タクティカルグローブ(黒)【防御力9・低温時のマイナス補正軽減(小)・高温時のマイナス補正(小)】
タクティカルベルト(黒)【防御力1】
タクティカルバンダナ(黒)【防御力1】
安全長靴【防御力12【雨天時のマイナス補正軽減(中)耐水能力(一部)付与 機動性マイナス補正増加(極小)】
射撃グラス(偏光レンズ バーミリオン)【防御力8 草原、林、森、密林等での可視光線による索敵性能増加(中)】
射撃グラス(偏光レンズ 無色) 【防御力8 可視光線による索敵性能増加(小)】
ナイトビジョン(ヘルメット装備型)【防御力1 暗所での視界補正増加(極大) 赤外線可視能力付与】
ハードホルスター(m1911ハイキャパ系腰用)【防御力1】
ソフトホルスターベルト付き(コンバットマスター系足用)【防御力1】
サバゲで使っていた防具一式が丸々と入っている。防御力の数値がどれだけの効果があるか分からないが、説明に書いてある内容は、あーなるほどと言った感じか。。
ようは、迷彩服なら見つかりづらい、長袖は暑い、通気性が悪いのはもっと暑い、メガネを掛ければ安全で良く見える、ナイトビジョンは暗闇で最強だ!っていう至極当然な事がややこしく書かれているだけだろう。
これだけあれば完璧だな。それではこれらは、袋にしまって本命のコレだすか!
アーマー勢である俺の新作のアーマー装備が丸々入っている。しかも最近流行りの、ELワイヤーを使った発光可能な近未来型装備だ。
本来各パーツはバラバラだが、何故か一くくりにセットとなってるのが気になるが、とりあえず出してみよう。
近未来型強化ボディーアーマー(頭部)???【???】
近未来型強化ボディーアーマー(体上部)???【???】
近未来型強化ボディーアーマー(体下部)???【???】
近未来型強化ボディーアーマー(腕部)???【???】
近未来型強化ボディーアーマー(足部)???【???】
なんだ、袋から出したらパーツ事に出せたけど名前以外が???になってる。
「うわ!」
想定外の出来事に俺は反射的に声を上げてしまう。
ど、ど、ど、どうなってるんだ?突然、取り出したアーマーが光って黒い球体に・・・ってこっち来るんじゃねぇ!
ほんの一瞬の出来事だった。取り出した装備が球体になって俺の右腕でグルグル回転したとおもったら手首で変な装備に変わりやがった。
なんだこれ?なんていうか、どんな衝撃にも耐えうる堅牢なアメリカの特殊部隊でも使われている、あの有名な日本製の腕時計の様な形の物が付いている。
液晶画面っぽい部分はどちらかと言うとスマートウォッチ的な感じだ。
なんだ?これは?すると突然視界に赤く半透明の画像が映る。まるで何かを説明するように線で描かれた腕と先程、勝手についた変な装備が映り矢印が点滅している。
くっそ、手首の装備は外れないし、何処を向いても変な線は消えない。ええい、この説明通りにやってみるか。
右手を胸の前に持ってきて謎の装備の画面を左手で握る。そしてそれを肘側にスライドするようなモーションをとった。
「 変 身 !」
何処からか声がして、突然腕輪が光出す。そこから全身に闇が広がり体を覆っていく感覚がする。気が付けば体中に何かが付いている様だ。これもほんの一瞬の事だった。
≪ベーシック・インプット・アウトプット・システム起動完了≫
なんだ?突然頭に機械的な声が響く
≪装備者ヲ確認。エイジロウ・ナミヤマ・・・登録情報ト一致 エイジロウ・ナミヤマヲ・マスタート認定シマス≫
≪オペレーション・システム・グリモワール・アナザーワールド・バージョンⅤ起動・・・正常起動確認≫
≪装備者ノ全バイタルスキャン実行中・・・≫
何なんだ?勝手に進んでるぞ。
顔や頭を触るとフルフェイスのヘルメットの様な物を被っているのがわかった。視界に見えるパーセンテージの数字が下部に表示されその数字と共にバーが進んでいく。
まるでゲームやアプリをインストールしているようだ。
≪100%完了・・・ルシフェル・システム・通常起動シマス≫
なんだ?コレ・・・なんだか妙な高揚感が沸いて来る。自分が自分で無くなるような・・・。
≪正常起動確認・・・AIナビ・・・エルリード正常起動≫
≪全システム正常起動確認・・・初回起動終了≫
≪オマタセシマシタ、マスターエイジロウ。コレヨリ全機能ガ使用可能デス≫
「ああ、分かった・・・ほぉ、ボイスチェンジャーが付いているのか。よし一通り説明をしろ」
≪了解イタシマシタ。コノ装備ハ、マスターエイジロウガ作成サレマシタ装備ヲ元ニ作成サレタ、瞬間装備型汎用決戦兵装ルシフェル、デス≫
「瞬間装備型汎用決戦兵装ルシフェル、ふん、偉い中二病な名前だな。まぁいいだろう。それでコレで何ができる?」
≪コノ装備ハ、パワードスーツノ要領デ、攻撃力、防御力、素早サ、ガ大幅ニ上ガリマス。マタ専用スキルガ使用可能デ、スキルヲ使用スル事ニヨリ人智ヲ超エタ能力ヲ発揮シマス≫
「なるほど。それでデメリットはあるのか?」
≪装備時ノデメリットハ精神ガ高揚シ慣レルマデ、普段ヨリモ、アグレッシブナ正確ニ変化スルコトデス。スキルノデメリットハ、スキルニ合ワセテエネルギーヲ消費スル事デス≫
「ふむ、先ほどから少し感覚が違う気がするのはそのせいか。まぁいい、それでエネルギーが無くなるとどうなる?」
≪エネルギーガ完全ニ、ナクナルト変身ガ解ケマス、回復スル方法ハ時間ニヨル回復デス≫
「時間か、それはどの位かかるんだ?」
≪エネルギーノ供給ハ、マスターノ生命活動力ト周辺ノ魔素ノ割合、及ビ、エネルギー効率化ノスキルレベルニヨリマス。現状、待機モードデ1時間10%ノ回復ガ予測時間デス≫
「なるほど、重要なのは俺の生命活動力とやらと魔素とかいう物、そしてスキルレベルという事か。これが上がれば回復も早くなると」
≪ソノ通リデス。消費速度ヨリ回復速度ガ上回レバ理論上ハ永遠ト行動ガ可能デス≫
「分かった、それで、スキルの使い方とスキルレベルとやらを上げるにはどうすればいい?」
≪使用シタイスキルヲ頭ニ浮カベテ、ソレッポイ動作ヲスレバ使用可能デス。スキルハコノ装備ヲ使イ続ケテ慣レテイケバ上ガリマス。チナミニ私トノ会話モ頭ニ思イ浮カベルダケデ可能デス≫
≪おい!それを先に言え!気が利かねぇAIだ≫
≪大変失礼シマシタ≫
すると、画面に日本語の文字と図柄が表示されていく。意識をすれば表示された図柄や文字の透明度を自在に変えたり、消したりできる。
≪ほほぅ。なるほど思い浮かべれば、会話やスキルだけでなく、現在の状態やスキルを表示できるのか。便利だな。よし、習うより慣れろだ外にでるぞ≫
≪了解シマシタ≫
そう言って俺は窓を開け宿屋の3階から夜空に飛び出した。