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第4話 ギルド

第4話 ギルド


ハンターズギルドにたどり着くまで俺は騎士や魔法の存在するハイクォリティな映画やゲームの世界に入ったかの様な街並みを楽しみながら聖剣姫の一行とギルドの話をする。

物語によっては冒険者ギルドがあらゆる仕事の依頼を受け冒険者に依頼する、そう言うシステムが多いが、この世界では少し違う。

ここには様々なギルドがありそれに合わせて仕事の受注発注をしている。いや寧ろ仕事内容としては、その様な仕事は半分といった所だろう。

それには、非戦闘職の職人ギルドも含まれる。例えば、石工職人。石を割り、加工して大型の建物や施設を作る職人だ。

一度、城壁の補修、拡張など超大型工事が始まれば何百人と必要になるが、そのような仕事が一つの街に常にあるわけもなく、大量の石工職人の雇用を賄えるわけはない。

だから石工職人の半数以上は旅をしながら仕事を得る。だが、何の情報もなく移動しても次の街に仕事があるとは限らない。

そこで石工ギルドが何処で、どれだけの職人を必要としているか情報を各街に流すのだ。それだけではなく職人達の就労ビザ的な物から、税金関係、などを職人達の大半が最も嫌うデスクワークを処理してくれる。

勿論、それはギルドに登録したメンバーに限り、彼らの収入の一部を手数料として取られる事になるのだが、その恩恵を考えれば微々たるものだと皆理解している。

またギルドの存在は国や自治体、工事主も重要な存在だ。一挙に多数の見知らぬ他人を管理するのは非常に大変で、上手くまとめられなければ職人どうしのケンカから犯罪までをも処理する羽目になる。

そこをギルドメンバーという顔見知りが存在しやすい状況を作る事で街の治安を守る事ができる。それ故に多くの自治体は積極的にギルドを招き入れ活用するのだ。

そして更に価格の低下と品質向上にも効果が期待できる。それは一つのデファクトスタンダードがギルドによって作られていく事だ。先程言ったように知らない土地から、見知らぬ人が集まるのだ。

そうすると同じものを作るにしても、その作業工程、使用する道具からパーツ、材料までが、バラバラだと完成した時の製品にムラが出てくる。

例えば、城壁を100人で作ったはいいが、部分部分で微妙にに石の配置が違っていたり、色合いが突然ある境から微妙に変わっているなど正直、見栄えが悪い。

見た目だけならいいが、突然強度の違う部分などがくっつきあえば、そこに必要のない力がかかり脆くなってしまう。それを均一の作業工程、使用道具、材料、にする事で個人の技量の差はあれ、最低限の均一化は保たれる。

そうする事によって、今度は道具や材料も均一化され、その材料を用意する問屋や顧客、関連のギルドの作業も均一化する。同じ材料を決まった分だけ用意すればいいのだからミスも減り大量生産でコストも下がる。

そして職人達も毎回、内容の違う作業を無理にやらせられる事はへり、幾つかの作業工程を身に着けるだけで食いっぱぐれる事も無くなる。あらゆる面でメリットがあるのだ。

無論デメリットが無いわけではない。決まった材料を使う事になれば談合などで値段を調整される事もあるし、特殊な技術が廃れる可能性も否定できない。

故に暗黙の了解やマナーという物も各業界には存在する。先にあったようにハンターに対して狩りの方法を突然聞くと言うのもそうだ。

特に少数で何かをする者達の場合は専売特許を非常に気にする傾向がある。だから逆に、狩の方法をハンターに無下に聞かない、というマナーをつくり、広めるのもギルドの仕事のうちだ。

俺は、そんな便利なギルドに知らないうちに登録されているのだが、このハンターズギルドは名前の通りモンスターを狩るという事に特化したギルドだ。

モンスターの討伐依頼や、情報、解体、加工などをメインにする。ある意味でよく物語で出ている冒険者ギルドと被っているが、モンスターを狩る事に特化している為、よくある物語に出てくる冒険者ギルドにある一部の仕事はない。

例えば賊からの護衛、或いは他国の敵からの防衛などの依頼はハンターズギルドにはない。また、初心者冒険者の初めてのクエスト!でよく在りそうな薬草取りもない。

そこら辺はその街に存在するギルド同士ですり合わせをして縄張りを保っている様だ。縄張りというと何かと争いが起きそうではあるが、どのギルドの職員も大半が肉体系ではないので平穏に上手くやっている。

そんな話をしていると、ハンターズギルドに到着する。


「姫どうする?このワルイコベアー。お金に変えとくか?一応俺が、ハンターズギルドに登録してあるし出来るぜ」


「それじゃぁお願いするね。ヴァン」


これは後から知ったことなんだが、一応名目上、聖剣の持ち主は民への無償の奉仕の旅という事で自己の利益が生まれてしまうギルドには一切登録しないのが慣習なんだそうだ。

とはいえ、旅をしてるのでお金はかかる。もちろん王家なので国からお金も出るが、そのお金の出所は民からの税金である為、無暗に催促はできない。

そんな状況でありながらも、王族という高貴なイメージを崩しては、国の威厳が保てないので、泊まる宿から装備まで安く済ませる事が出来ないそうだ。

そんな収支バランスを取る為に御付きの者の小遣い稼ぎという事で帳尻を合わせるのだ。煌びやかな世界に見えるが、お財布事情は中々大変そうである。


「お!これは噂のヴァンさんじゃねーか!」


建物に入ると声を掛けて来たのは身長180は超えている、ムキムキマッチョの丸坊主の親父だ。絶対にケンカをしちゃいけないそんな身体つきだ。ぶっちゃけサングラスとバズーカが死ぬほど似合うと思う。


「何処かで会たことあったかな?その姿なら早々忘れないと思うんだが」


「いや、オレが一方的に知ってるだけさ!ガハハハ。いや、街の連中なら大半が知ってるさ。なるほど、飲み屋や娼館の嬢ちゃん達が噂するだけはあるぜ」


「さてさて、一体どんな噂なんだか。取りあえず、外の荷台、正面から入れてしまっていいか?」


「ああ、裏の方はちょいと忙しくてな。こっちで頼む。プルブルは外してくれよ。うっかり建物内でフンをされちゃたまらねぇ」


そう言うと、ギルドの親父が扉を全開に開き、アンシーが荷台からプルブルをはずす。慌てて俺も手伝いに向かうが、外し方が良く分からずに役立たずだった。

プルブルを道路の端に連れて行くと、ヴァンが魔術で荷台を店に引き入れる。


「凄いな!流石は宮廷魔術師様だ。だが残念だ・・・オレのこの美しき筋肉美を聖剣姫様に見て貰う事が出来なかった」


そこかよ!と、うっかり突っ込む前に、サイドチェストしてるじゃねーかと、心の中で一人ツッコミをする。何処の世界でも要るもんなんだな、マッスル・イズ・ビューテイフル教団ってのは。

ちらりとリンシアを伺うとギルドには入らず外で待っている。何かつつかれても面倒だし入らない事にしているのだろう。


「こっちのストームワイバーンは、エージ・・・そこの彼の分だ、そしてこっちは俺の分だ」


「ほほぅ・・・これは。じゃー二人ともハンターズカードの提示を頼むぜ」


そういってハンターズカードを渡すと、親父はカードを水晶板の様な半透明の石板に当てて何かを確認している。


「確認したぜ、ところで、コイツとの戦闘にノア様がいたようだが今はいないのかい?まぁ既に報酬受け取り拒否が表明されてるから事務的には構わねぇが」


「え?ああ、既に何処かに行かれました」


ハンターズカードには戦闘状況や、報酬受け取りの表明の情報まで出るのか?良く分からないが凄い技術だな。


「そうか、それは残念だ。あ、そうそうエージロー君、ストームワイバーン討伐を評価させてもらったよ。これで君もランクCハンターだ」


ランクC?そう言えば、カードにランクとか書いてあったな。それが上がったってことか。


「そんな事より親父、もしかしてノア嬢を知っているのか?」


又もノア嬢の情報に食い付くヴァン。何かあるのか?


「ああ、何度か会ったことがある。それにギルドの職員で彼女の名前を知らないなんて言ったら、そりゃ新人かモグリの職員だ。彼女は戦闘や魔術に関係するようなギルドではどこもSS(ダブルエス)だからな」


「やっぱりそうか。くぅー俺もいつか会いたいぜ!」


「そうか、ヴァンさんは魔術師だったな。ノア様は、魔術師ギルドで唯一の現存するSS(ダブルエス)だったはず。それにあの美貌、一度は拝んでおいた方がいいな!個人的な会話なんて出来たなら酒場でいい自慢になる。ガハハハ!」


ノアってそんなに凄い奴だったのか。確かに、リアルに見ておいて損はない美少女ではあったけれど性格は微妙かもしれないぞ?まぁ俺もほんの少ししか話してないけどな。


「くぅー!親父もエージもうらやましいぜ!」


「そうだエージロー君。君はまだ冒険者ギルドの登録はすましてないようだな。登録しておいた方がいいだろう。冒険者ギルドとハンターズギルドは横のつながりが強いギルド同士だ。向うの初期審査で此方のランクが考慮されるはずだ」


「そういえばそうだな。ならエージ、登録して損はないぞ。どの道これからも旅をするんだろ?恩恵もデカいし仕事や人脈の幅も広がる」


「そうか、ならそうしよう」


「じゃ次は冒険者ギルドだな」


「おし、じゃ日が暮れる前に行ってこい。ところでプルブルと荷台はどうする?こいつは冒険者ギルドの物だが街を歩くのに邪魔ならこっちで返しとくぞ。どのみち冒険者ギルドに納品もあるしな」


「お、それじゃーすまねぇが、返却たのむ。わりぃな」


「何、それがギルドの仕事よ!それじゃちょいと待ちな。報酬を用意してくる」


トントン拍子に話が進み次の行先が決まっていく。一人だったらこう上手くいかなかったかも知れないな。それに幾つか情報も手に入ったのもかなり大きい。

それからハンターズギルドの親父から報酬を貰ってから冒険者ギルドに向かう。その途中、皆に冒険者ギルドについても尋ねる事にした。


「ある意味で最も幅広くやってるのが冒険者ギルドとも言えるな。場合によっては冒険者ギルドというより旅人ギルドとも言える。街から街へと移動する人間は大半以上が入っていると言っていいさ」


「そうなのか?」


「ああ、全世界で最も多くあるギルドであり、他のギルドがないような場所では代わりに業務を代行している感じだしな」


「そうそう、それに大半の国や街ではA級以上の冒険者ギルドメンバーは、街の出入りの際の荷物検査、入場手数料、滞在期間など免除されるんだ。貴族と同じ待遇なんだよ」


街に入るにはいろいろ面倒なんだな。この街に入る時もリンシアがわざわざついて来て門兵と応対してくれたのはその為か。


「後はそうだなー。傭兵ギルドとかが無い場所では、商隊の警護や拠点防衛なのもあったり、場所によっては薬草集めとか農村の手伝いまで出稼ぎ労働者向きの仕事まで斡旋してるとこもあるな」


「へぇー色々やってるんだな」


「でも、冒険者ギルドの一番人気の依頼といえばやっぱり、ダンジョン探索だよね!」


「ダンジョン探索?」


「ああ、知ってると思うがダンジョンってのは魔物を作り出す機能があるからな。暴走しない様に管理する自治体が冒険者ギルドに依頼を出している事が多いんだ」


「ダンジョンかぁ。お宝なんかもあるのかい?」


ダンジョンと言う言葉に少し心が躍る。ますますらしくなってきたなぁと。だが質問の返答は残念なものだった。


「お宝?ああ、鉱物が出るような場所なら稀にレアな鉱物が出て金になるとは聞いたけれどな。あとはモンスターと同じでいい材料になる魔物がいるならば金にはなるが金額と労力を考えたら微妙な所だな」


「そうだねー、じゅよーときょーきゅー?だっけ。使える材料でも沢山取れと安いしねぇ。新発見のダンジョンなら古代遺物(アーティファクト)が出るけれど、新発見なんて政府や自治体が先に入ちゃうしね」


なるほど。この世界、異世界だけど割と現実的(シビア)である。

だけどその方がいいのかもしれない。よくファンタジーであるだろ?お宝が出るからって一攫千金を夢見て名も無い冒険者(モブ)が最初に死んでいくっていうフラグが。アレが無いなら無いに越したことはない。

でも、何故そんな依頼が人気あるんだろうか?そんな事を考えてると冒険者ギルドにたどり着く。


「さて、ついたぜ。ハンターみたいな戦闘職から細工師なんかの非戦闘職の職人まで殆どの仕事人達の御用達ギルド、そして全ギルドの中心的存在、冒険者ギルドさ」


おお・・・ハンターズギルドよりも大きくて立派な建物だ。どの壁も大理石をピカピカツルツルになるまで磨き上げた造りで継ぎ目も完璧な直線が綺麗に交差して高級感が漂っている。


「それではヴァン、私と姫様は先に宿に帰ってます」


「ん?ああ、そうだな」


「それじゃーね!エージロー。また会おうねー。何も言わず勝手に街から去っちゃ嫌だよー。バイバーイ」


「ああ、そうだな。また会おう。今日は助かった、ありがとう」


そう言って腕をふり見送る。


「しっかし随分、姫さんに懐かれたな」


「リンシアって元々あんな感じでは無いのか?」


「いや、まぁ人が良くて人懐っこい所はあるんだが、なんつーか、聖剣の力なのか姫さんの能力かはしらんが、善人とか悪人とか人を色で見分けられるんだとよ」


「色?」


「ああ、俺にもさっぱりなんだが、あの楽しそうな感じ、きっとエージは姫さんにとって良い色に見えるんだろうな。だから仲良くしてやってくれよ」


ふぅん。なんだかヴァンの言葉を聞いていると、姫っていう立場ってのは色々大変そうなんだな。


「ああ、もちろんさ」


「さて、それでは冒険者ギルドにごあんなーい」


ちょっと湿っぽくなった感じを吹き飛ばすようにヴァンが大げさに案内を再開する。

冒険者ギルド、内装も外装に負けず大理石づくりの豪華な使用だ。よいしょよいしょにレリーフが彫られ美しい。

(のぼ)りさんの様にキョロキョロしているとヴァンに新規・再発行の受付に案内される。横を見れば依頼の受注、発注、完了の受付がそれぞれ用意されている。


「あら、ヴァンさん受付間違っていませんか?夜のお誘いの受付もここではありませんわ」


そう微笑みながら対応する受付嬢。


「あー、今日はそうじゃなくてなー・・・こいつの登録を頼む。ハンターズギルドには既に登録してある」


ばつの悪るい顔をしながら答えるヴァン


「あらあら、私の早とちりでしたね。失礼しました。それでは、エージ様、ハンターズカードをお願いします」


そう言われ、カードを取り出し渡す。


「はい、お預かりいたします。お名前は、エイジロウ・ナミヤマ 様で間違いありませんか?」


「ああ。間違いない」


受付嬢が確認を取るとカードをやはり同じような水晶板にカードをかざす。


「あらあら、ハンターズギルドではランクCですのね。分かりました、それでは登録させて頂きます。登録している間に当ギルドの説明をさしていただきますね」


そう言いながら説明をする受付嬢。

内容は大体こんな感じだ。冒険者ギルドのランクはハンターズギルドのランクと同じシステムでSSを最上位にS、A、B、C、D、E、F、Gである。

Gは未成年(15歳未満)スタートランクであり、実質成年(15歳以上)はFからのスタートになるという。

ランクアップの条件は、ギルドへの貢献度や依頼達成件数及び、それ以外の普段の行動が、評価範囲であり、一定の評価と試験への合格が必要なのだという。

ただし、SランクやSSランクには試験はない。ぶっちゃけてしまえばS以上を審査出来る人間がそうそういないと言っていいだろう。

それ以外の普段の行動というのは、基本的に犯罪歴や慈善行為、環境保護などを言うらしい。どんなに難しい依頼をこなせても普段の行動が悪ければ駄目だという事だ。

追加で言えば、犯罪など起こすと軽ければランクダウン、重いとギルド登録停止もあるとの事。うん普段の行動には心がけよう。

あとランクが上がれば上がるほど、ギルドから回収される手数料なども減額されていく。同じ依頼でもランクCとランクFでは値段が変わって来るのだ。

厳しい様に思えるが妥当なシステムと言える。長く仕事をしてる人と、日の浅い新人が同じ報酬と言うのは面白くないだろうし、そうする事で下のランクの者達が上目指そうとする向上心を持ってもらう策らしい。

また、ランクが高いと依頼を登録する時の手数料も安くなるのだとか。なので製造系のギルドメンバーが高ランクの冒険者だったりする事もしばしばあるようだ。

そんな感じで色んな話があった。まとめるとランクが上がると恩恵がありますよ。でもランクを上げるにはギルドにも社会にも貢献する人物でいて下さいね。という事だ。

中々良くできたシステムである。因みに、ハンターズギルドのCランクが考慮され冒険者ギルドではDランクからのスタートとなった。

実はランクCと言うのはそれなりに凄いらしい。SS、Sが神話や伝説級と言われるレベルで、Aが世界的有名人級、Bが有名人級、Cで巷で噂の人って感じとの事。


「以上ですがよろしいですか?宜しければ此方の魔石板に手を当てて承認の宣誓をお願いします」


そう言うと先程カードをかざしていた水晶板の様な物のを此方に向けてくる。とりあえず、この魔導石に手を当てて承認って言えばいいのか?間違ってたら恥ずかしいけど。

いや、うん、予想と違う奴だとめっちゃ恥ずかしいが大丈夫だよな?手を当てて承認って言えば!大丈夫であってくれ!俺はそう思いながら魔石板に手を当てる。


「承認!」


「はい、有難うございます。これでエイジロウ様は冒険者ギルドメンバーとなりました」


ふぅ・・・合っていてよかった。


「それでは宿の方はいかがしますか?」


「宿?」


「はい、冒険者ギルドメンバーの方には無料でギルドに登録されている宿をご案内しております。冒険者だけではなく旅の方も初めての土地では宿選びには苦慮いたしますので」


なるほど、見知らぬ街で泊まった宿がボッタクリだったり盗難が相次いでいたりと悪徳商人だったらどうにもならないもんな。そこでギルドのお墨付きを与える事で、金額や質、安全を維持するわけか。

そしてギルドはギルドで一定の地位というか見えない権利を手にするといった感じか。


「それじゃ、お願いするかな」


「それではこのリストをお持ちください。此方のリスト自身が各宿のサービス券となってますのでリスト内の宿屋で使用可能です。それと此方がカードです。ハンターズギルドと共通カードですので一枚で両方使えます。それでは良い夜を」


へぇーこの世界でクーポン券的なシステムとは中々良くできてるなぁ。それにギルドカードが一枚で済むって言うのもありがたいな。まるで大型や中型二輪などが追加されていく車の免許書の様だ。


「ありがとう。それではまた」


挨拶をして、ヴァンと一緒に冒険者ギルドを出ると外はもう赤と紫が混じる夕暮れだった。


「それじゃー宿を決めるか―。俺たちの宿でもいいけれど、その値段がな・・・」


まぁそうだろうな。一国の姫様ともあれば、街一番の高級宿に泊まらずは居られないだろう。別の所に理由も無く泊まってしまえば、その宿の評判を落としかねない。色々気を遣うのだろうな。


「でもそれ以外なら何処でも泊まれるんじゃないか?あのストームワイバーンの傷なしなら安くても銀50枚はくれるだろう」


そう慌ててヴァンが付け加える。そう言えば所持金っていくらなんだろ、さっき貰った報酬袋もそのまま、あの魔法の袋に突っ込んだままだった。

ヴァンには袋ことはバレてるから構わないか。そう思い、建物の蔭に隠れると袋の口を開いて魔法陣を空中にだして中身を確認する。


「おお!こりゃすげぇ。中に何が入ってるのか魔法陣で覗けるのか」


横から勝手に覗いたヴァンが驚く。所持金は、金貨1 銀貨45、銅貨25、小銅貨、20、小銭20だった。・・・価値がぜんっぜんわからねぇ。

一応、0にはなってるが、純金メダル、大金貨、って表示があるな。仕方ない。取りあえず宿のリスト見て価値の相場を考えてみるか。

宿のリストを見てみる。いやー翻訳機能ってありがたいな。地球と違って数字と言語の区別すら出来ないからな。

要約するとこんな感じだ。ホテルの良さは星の数って感じだ。


☆5級宿

  一日宿泊料 金貨1~5 食事(フルコース無料・個別)、風呂(大浴場・個別)、トイレ(自動水洗・個別)、照明(魔石)その他、サービス付き

☆4級宿

  一日宿泊料 銀貨5~9  食事(共同・一部無料)、風呂(個別)、トイレ(自動水洗・個別)、照明(魔石)その他サービス付き 

☆3級

  一日宿泊料 銀貨1~4  食事(共同・料金別)、風呂(大浴場・共同)トイレ(水洗・個別)、照明(魔石)

☆2級

  一日宿泊料 銅貨4~5  食事(共同・料金別)、トイレ(共同)、照明(蝋燭)

☆1級

  一日宿泊料 銅貨3    トイレ(共同)    


他にも細かく☆3.5等の中間がそれぞれ存在するが、大まかに分けるとこんな感じだ。

どうやら、このリストとヴァンの報酬の話を総合すると10枚で貨幣のランクが上がっていくようだ。

この街の規模、城壁内の立地条件からさっするに、日本の大都市圏内の考えて・・・。一般的なビジネスホテルの値段がレストラン、風呂、トイレ付きが5000円~1万円、通常のホテルの一般の部屋で1万円~3万円。

この世界のトイレや風呂の価値にもよるけれど、だいたい銀貨1枚1万円あたりと見るべきか?だとすると、銅貨が1000円、小銅貨が100円、雑銭が10円って当たりで何となく帳尻がとれる。

まぁ、有料の宿泊という物が何処まで価値があり、他の物価がどのくらいの価値があるのかで見直さなきゃならないけどな。取りあえず今はこれを基準に宿を選ぼう。

とはいえ、ほぼほぼ答えは決まっている。それはやはりトイレだろう。この世界の水洗のシステムは不明だが、高級になればなるほどついているんだがら間違いはないだろう。


「で、どうする?これからの生活と稼ぎ次第だけど3級辺りがいいんじゃねーか?あ!女連れ込むんだったら2級にしとけ、連れ込む際に店の人間にチップでも渡しとけば、二人で部屋入ってもスルーされるからよ。


いきなり来た異世界きて女連れ込むとかねーわ。どのみち3級より下とかないだろう。値段も考えて3級にしよう。


「じゃーここのギルド通りに近い店にするかな」


「うーん?そこでいいのか?まぁ確かにそこなら空き部屋はありそうだが」


なんだか釈然としないといった感じで答えるヴァン。


「この宿だと何かあるのか?」


「いや、何があるわけじゃねーが、こっちの方が良くないか?ここら辺の3級なら、飲み屋通りも近いし何より、娼館通りが目と鼻の先だ!」


「はぁ・・・。もしかしてヴァンって溜ってんのか?」


もうあきれ返って言うしかない。


「あたぼーよ!姫さんの手前もあるけど、何よりも、アンシーが目を光らせてやがる。折角世界各地を旅してると言うのに!仕事のない夜くらいは自由にさせてくれよ!世界の美女達がぁーーーくぅーーー!」


あー半泣きで叫んでるよ。きっとこれはアレだな、俺を口実にして遊びに行くつもりだったんだな。だが、そうはさせないっぜ!

というわけで、ギルド通りの近く宿屋、キター・コレーに向かう。立地条件とか値段で決めてから名前を見たんだが、大丈夫か?この宿屋・・・?

因みに、リンシア達が泊まっている宿はこれに表示されてない貴族街にある☆6級なのだとか。

兎にも角にも今日の寝床も決まり安心して寝れそうだな。





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