第13話 呼び出されしは、遥かなる生命の全てが生み出す概念
第13話 呼び出されしは、遥かなる生命の全てが生み出す概念
街の外は炎にあふれアンデッドは燃え尽き、全ては灰となり圧勝だと誰もが思っていたであろう。だが、あれはなんだ?
突如、現れた巨大なる人の姿をした、黒くそして光る何か。闇と言うには虹色の光を放ち、虹色と言うには暗い闇。
まるで、それは闇と光が混じったような、まさに混沌。誰もがその姿を見つめると得体の知れなさに恐ろしくなり動けなくなる。
否、一人だけいた。一閃の光を纏い突撃していく華麗なる聖剣姫。背中から白い翼を放ち飛びながら戦う姿は正に天使だった。
その眩い輝きがもたらす希望の光は直ぐに異形なる混沌を打ち滅ぼすかに見えた。しかし、混沌の放つ触手を切り刻むのが精いっぱいで進む事能わず。
切り刻んだ触手達は、あっという間に再生していく。まるで、個体と液体を自在に行き来しているかのようだ。
ハッと我には返り俺も見てるだけではいかんと、ラピスを連れて西と東の壁ぶつかる側防塔に移る。
「ラピス、少し重いかもしれんがコレを使うんだ」
俺は袋の中からLVOA-Cを取り出すと、引き金を引くだけで連射できるように準備して使い方を教える。すると直ぐに頷く。会った時から思っていたが、やはり物覚えがいい。
胸壁を使って銃を固定し撃ちやすくしてからラピスに射撃させる。俺も弱点でもないかと色々狙いを変えながら撃っていくが、その効果のほどは怪しい。
すると、周りの兵士や魔術師達も一斉に攻撃するが、それでもあの液体の様な再生能力がある身体には効いてる様には思えない。
何か有効打は無い物かと考えていると奴は大きく息を吸う様な動作を行う。何が起きるかは分からないが直観でこれはヤバイ物が来ると理解し、ラピスに射撃をやめさせラピスを抱きかかえ胸壁に隠れる。
数秒すると、まるで昼間の様な光が瞬くと轟音が響く。静寂が訪れ、周りを見るとあの頑丈な胸壁がいくらか吹き飛んでいるのを目にする。自分の周りはラピスが自己破断で使った防御魔術の御蔭で何とか残ったが、この様子では他の兵士や魔術師達は戦闘不能だろう。
直ぐにAPS-DREIを構え直し、次なる攻撃をしようと銃の装弾レバーを引き直した瞬間、あのバケモノは今一度、同じ攻撃をしようと息を吸い込んでいる。コレは洒落にならないと思った刹那、一気に自分の上空が明るくなる。
見上げれば自分の上空にとんでもなく巨大な炎の球が浮かび上がっている。そして、後ろにはラピスがメモリーストーン左手に握りしめ右手を天に向けて魔法陣を纏っている。
その魔法陣は、アプリをコピーしたものだった。何も教えてはいなかったが、それを理解し使用している。賢い子だ、驚くほどに。
そうしてラピスは巨大な火炎球をバケモノに投げつける様に振り下ろす。それに気が付いたのか慌ててバケモノは、溜め込みを最後まで完了させずに光を口からぶちまけるが、口元で火球とぶつかり大爆発を起こす。
爆発の様子を確認すると、バケモノの顔は半分ほど抉られているのが確認出来たが、直ぐに修復を始めている。だが、今ので少しの時間ができた。
俺は、急いでスマートフォンを取り出すと、設定から指紋認証のオートロック解除し、電源の設定も付きっぱなしする。それからアプリ、レゲメトン用魔術データベースを開き、ラピスに渡して使い方を簡単に教える。
何かあったら、これで対応してくれと渡す。今はもう、俺にはこれくらいしかしてやれない。後はすまないが自分で判断で戦ってほしい。
「ラピス、ヤバくなったり、怖くなったらいつでも逃げていいからな」
そう伝え頭を撫でると俺は立ち上がり覚悟を決めて、右手のリングを左手で押さえてから気合を入れて引く!
「変 身 !」
何処からか響く声と共に闇が俺を包む。そして、別の姿へと変わる。
俺を見上げるラピス。その姿を見てサムズアップをして、飛び立つ。
「最初っからクライマックスで上等!遠慮はしねぇ、コイツをくらえ! ファイナル・アナイアレイティック・ストライク!ライトナックル!!か~ら~の~ファイナル・アナイアレイティック・ストライク!レフトナックル!!!」
顔の再生なんて待たずに先手必勝!絵づら?正義のヒーロー?関係ぇねぇな!勝てばいいのよ!!!
空からの叩きつけの右手に地面からのカチあげの左手で敵を強引に二等分する。
だけど、なんだこりゃ必殺の究極奥義で身体を真っ二つにしてやったて言うのに直ぐに再生していく。まるでSF映画の未来から来る液体金属の殺戮ロボットの様だ。
≪おい!アレは何なんだ!隙だらけの巨体のくせに再生能力だけは、馬鹿げてる!≫
≪アレハ、コノ世界ノ魔族ガ信奉スル神ノ力ヲ吸収シタ、クトゥル化魔族デス。理性モ無ク、タダ全テヲ破壊シヨウトスル混沌ノ化身デス≫
≪クトゥル化?クトゥルフみたいな物か?≫
≪便宜上ソウ表現シテイルダケデ全ク別物デス。コノ世界ノ魔族ノ信奉スル神ハ神デハアリマセン。モット異質デ危険ナ存在デス。本来ノクトゥルフ達ハ真ッ当ナ邪神達デス。アノヨウナ存在ト一緒クタニスルト這イヨラレマスヨ≫
≪よくわからねぇが、神よりメンドクサイものってか!だったら跡形も無く消し飛ばしてやる!!!≫
そう思念を飛ばした瞬間、真っ二つになった筈のバケモノは宙に浮き合体すると球体となった。すると当たり構わず闇と光の混じった光線を飛ばしてくる。
慌てて避けるが際限なく飛んできた挙句に、途中から学習したのかの様に追尾してくるようになった。
「くそったれが!」
華麗に空中戦を演じて敵の光線と光線をぶつけてたりして相殺していく。ついでに幾つかは放っている本体にもお返しをしてやるが、一切ダメージを受けている気配がない。
24マルチプルホーミングレーザーも使ってみるがエネルギーの無駄でしかなく、本当にキリがない。
「避けて!」
すると突然声が聞こえ、その方向を見る。そこから眩い光の一閃が闇を切り裂きながら飛んできて球体を切り裂く。
「へっ。姫さんも見た目によらず頑丈だな」
「あの程度で寝かしてくれるほど聖剣は優しく無いよ」
そう言いながら光の翼を羽ばたかせ飛んでくるリンシア。
「そいつは結構。だが、コレはどうしたもんかね」
光の斬撃で切れた筈の球体は、直ぐに戻る。見ていて余りの酷さにもう何も感情が沸いてこない。
「消えてなくなるまで攻撃するまでだよ!」
何の嫌味も無く平然と言うリンシア。
「もう少し現実的な意見はないのかね?姫様よぅ」
やれやれといったジェスチャーをオーバーにする。
「あればもうやっているよ!」
そんなじゃれ合いを切り裂く様に光線が飛んできて、急いで散開する。
「そりゃそうだよな!」
しかし、これじゃジリ貧じゃないか。俺のエネルギーは有限でそこまでキャパはねぇ!飛んでるだけでも消費するっていうのに。くっ・・・どうすれば。
(もう・・・少・・・し・・・もう少・・・しだけ・・・弱らせ・・・て・・・)
これは・・・ラピスなのか?だとすればラピスは何か見えているのか?わからん。だが、よし賭けて見るか。何方にしてもやる事は変わらなそうだしな。
そう思った瞬間リンシアの一撃が、またしても球体を真っ二つにする。これはチャンス!
神速跳躍でバケモノの真下に移動してスキルをイメージする。スキルの説明意味不明すぎるが、今はそこにツッコミを入れてエルリードと漫才をする余裕はない。
スキル:グランティック・ニュークリアー・ディケイド Lv1【消費1500~ EN 光弾型・究極奥義 これ以上は求めないで】
一気に全身が光り輝き高音の音が響く。粒子は加速度的に濃度を上げて螺旋を描き両手に集まり球体となり、そして一つの眩い煌めきに変わっていく。
「コイツが!もう一つの究極奥義グランティック・ニュークリアー・ディケイド!!!吹き飛べ!バケモノやろぉ!」
光の光弾を超高速で投げつけると光弾は球という形を保てずに光の線となって再生しようとするバケモノに直撃し、極大の爆発を起こす。
予想以上の威力にリンシアを巻き込んだ気がするが、まぁ彼女なら大丈夫だろう。
だが球体は粉々になる物の、未だ集まって一つの物体になろうとする。それを阻止しようと復帰したリンシアは聖剣で更に粉々にしていく。
相変わらず頑丈な姫様だぜ。だが、それ以上に色々常識って奴を無視しすぎのバケモノだ。
「やはり、これくらいで倒せるなら苦労はないよな。フフフ・・・」
悪夢の様な状況なのに何故か絶望はない。それどころか、何故か地球で数年前に流行った意味不明なお笑いのネタすら思い浮かぶ。どうやら俺の頭はおかしくなっているようだ。
へへ・・・。俺は二つのスキルを同時にイメージする。すると、今一度全身が光り輝く。
さー、クールにダンシングタイムだ。俺は突如としてテテトテ、テトテト、とステップを踏む。リンシア辺りは頭が狂ったか?と思っているだろう。だが何故かこれで出来る気がする。
「右手にファイナル・アナイアレイティック・ストライク! 左手にグランティック・ニュークリアー・ディケイド!U~N♪ファインナル・グランティック・アナイアレイティック・ストライク・ディケイド UN!♪」
「左手にグランティック・ニュークリアー・ディケイド! 右手にファインナル・グランティック・アナイアレイティック・ストライク・ディケイド!U~N♪ グランティック・グランティック・アナイアレイティック・ニュークリアー・ディケイド・ストライク♪UUUUUNNN!♪
片手にそれぞれのスキルを引き起こし、踊りながら合体させていく。何とも気の狂ったかのような方法だが何故か出来た。
「HEY! IT'S A G・G・A・N・N・D・S!!!」
華麗なるダンスと共に最後に両手を天に掲げると3つのスキルは合体して放たれる。それは光の柱となって夜の空を何処までも貫いていく。まるで神が降臨するの光の様に。
光が消えて流石のバケモノもこれで蒸発して消滅するだろうと思ったがそんな事は無かった。ガスになってもまだ生きるのか。
ハハハ・・・流石にこれはクレイジーと言うにはブラックジョークが効きすぎだろう。
≪システム、オーバーヒート。一部ノ機能ヲ停止シマス・・・急速回復・・・エラー・・・残エネルギーニ支障ガアリマス・・・セイフティモードニ移行≫
チッィ・・・流石に無理し過ぎたか。飛んでいる高度もみるみる下がっていき地面に足が付く。そして光の粒子が消えていき、身体に走る光のラインも消える。
こっちのフルパワーにも拘わらず、あのバケモノはまた、一つになろうと破片や煙が集まって来る。あれは、どこぞのピンクのお菓子大好き魔人か?
(だ・・・大丈・・・夫。これ・・・なら・・・いける・・・)
心に生まれる不思議な言葉が戦力外通告を受けた俺に囁く。そうかい、なら後は頼むぜ。そう思い後ろを振り返り側防塔のてっ辺を見る。するとそこは光り輝き、ラピスが高く浮いている。しかも風がしたから上に向かって吹いてるかのように髪をなびかせながら。
へへへ・・・あんな小さな子に託すなんて、だらしねーけど、俺らは2人で互いの生きる道を切り開くだったんだよな・・・ラピス。
ラピスはバケモノの方角に両手を伸ばす。その中央には俺のスマートフォンが宙を浮き回転している。そして再生しようとするバケモノの真下に、俺の頭上に巨大な魔法陣が展開される。
眩く光る圧倒的な情報量の魔法陣。それは今まで見たどんな魔法陣よりも遥かに複雑で難解な図形・・・が動いている!?動き、そして自在に変化する魔法陣。これが科学という力を使った強力な魔法陣か。
時間という刻々と変動する次元を取り入れる事により、連続的に複数の処理をさせ大技の放つというのか。だが、これならいけるかもしれない、そう期待せざるを得ない。
この異様な情景の空間に、不思議な誰でもない誰かの声が何処からともなく、何処に行くのでもなく、響く。それは、空間も時間も次元も超えて地獄という、存在すらせぬ場所に届く、どこまでも深く、荘厳で、そして恐ろしくも優しい声。
「煉獄に留まりし、あらゆる生命の原動よ、全ての生命の枯渇する事なき欲望よ、そして生きとし生ける物への苦難の始まりよ、汝の根底は果てる事のない永遠の飢餓なり。今、地獄の戒めを破り、獄炎より這いい出て我が呼び声に応え、そして我の前に立ちはだかる狂乱なる欲望を喰らい給え」
「汝の名は・・・餓喰!!!」
その言葉が紡ぎ終わると巨大な魔法陣から、漆黒の巨大な塊がゆっくりと現れ、それはまるで顎の様に大きく開く。その巨大な口は鰐か鯨かはたまた伝説の神獣フェンリルか、天空全てを一飲みで喰らいつくし滅ぼすような恐ろしき姿。
見る物、全てを捕食と言う恐怖でつつむ、その巨大な顎は無限に復活するバケモノを一飲みで喰らうと天に向かって咆哮を放ち、ズルズルとまた魔法陣の中へと沈んでいく。
その存在はあまりに圧倒的であの混沌の魔族を見た時の恐怖ですら誰もが矮小だったと思うほどの衝撃だった。そして誰一人としてその存在が消えるまで動くことが出来ない。
それは、街の中央時計台で傍観を決めていたシズカですら、眼をそらす事も、声を出すことも出来なかった。何故ならソレは、人が作り出す概念を超えた、全ての生き物の概念。いや、世界のルールそのもの。矮小な人間、いや神すらも抗う事は出来ぬ存在。
俺はただただ、ソレが消えるまで立ち尽くすしか無かった。いや消えてからも、あのバケモノの消失を確認した後も、喜びという表現が出来ぬほどに心がマヒしていた。
変身で精神が高揚しているハズなのだが、そんなものは何の意味を持たないとそう思えた。
≪ピピッピ・・・機能回復。クトゥル化魔族ノ消失ヲ確認。ラピスノ所マデ戻リマスカ?≫
その念話を聞き漸く我に返る。ラピスは、どうなったと側防塔のてっ辺を見るが、この角度からは一切見えない。慌てて最後のエネルギーでラピスの所まで瞬間移動する。するとエネリギーが完全に切れたのか変身が強制解除された。
側防塔には、ラピスが倒れていて俺は慌てて駆け抱き寄せ、声を掛ける。
「ラピス!大丈夫か?」
ラピスは目をうっすら開けて微笑むとサムズアップをして腕を下す。静かな寝息を立てるラピス。良かった、本当に良かった。あんな無茶苦茶な物を呼び出したから命くらい吹っ飛んでるかと本気で心配した。
安心したら、俺も一気に睡魔に襲われる。かなり無茶したしな・・・てか・・・G・G・A・N・N・D・S ってなんだったんだ?自分でも意味わからねぇ。




