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初めての宿泊と忍び寄る影

商談も終わり、私達は再びマーリンへと馬車を進めている。

道中スライムが数体襲いかかって来たが、馬車は止まることなどなく、馬なんてスライムで遊んで轢き潰す始末で馬が少し恐ろしく見えた。


…が、少しペースが落ちてきていた。

「お嬢さん方。そろそろ、馬を休ませたいんでベリテの町に寄るからそこで一泊してくれないか」

「了解した。良い宿を知っていれば教えてはくれまいだろうか」

「それなら、招き猫って宿の評判が良いそうだ」

「評判と違ったら宿泊代払ってもらいましょうよ」

「…それはちょっと…勘弁してくれ」


彼女はさらっと毒を吐くようになってしまった。

今回はまだマシな方でもっと酷い事もあるのだ。

更に酷いのは彼女には悪気がないため、遠慮もないのだ。


「商人なら信用も大事じゃないですか?」

「…馬鹿な事を言っていると置いて行ってしまうぞ」

「そんなぁ~。待ってくださいー!」


彼の方に目配せすると、頭を下げられていた。

何か申し訳ないと思い、此方も頭を下げると宿へと足を運んだ。





「…この辺りのはずだが」

「多分あそこですよ!」


彼女が指しているのは、黄色の掛札が目立つ少し大きめの建物だった。

掛札には見たことのない文字が書かれていた。

鑑定してみるとあれでマネキネコと言うらしい。


「…君はあの文字が読めるのか?」

「難しい文字は読めませんけど、一般的な文字なら…」


この世界の文字は読めるようにしたはずなのだが…私が知らない文字はまだ存在するようだ。


「あの文字は『勇者』様が使っていたんだそうです」

「…その『勇者』はまだいるんだろうか?」

「なんでも世界の危機を救った後に姿を眩ましたと訊きます。」


…『勇者』は死んでしまったのだろうか?それとも私のように別の世界から来て帰ってしまったのだろうか?


もし、後者ならばここに来た経緯やどういった生活をしているのかなど…聞いてみたいと思った。


「…さあ、早く部屋を取っちゃいましょう」

「ああ、そうだな」


評判通りだと急がないと部屋が満室になってしまう。


「私が部屋取って来るので、側で観といてくださいね」


彼女はカウンターへスタスタと歩いて行き、数分話し込むと二人部屋の鍵を持ち、こちらへと戻って来る。


「今日はもう疲れましたから、早く部屋に行って休みましょう!!」

「…何故二人部屋なんだ?」

「誰かさんが結構使っちゃったから節約しないと…なんて思ってないよ?」


…何も返せる言葉がない。


人族は物事をよく引っ張ると同胞から聞いたことがあったが、実際には噂以上だった。

百聞は一見に如かずとはよく言ったものだ。


先日の一件を思い返しながら部屋へと向かう。

簡易的なベッドが二つと、机と椅子がそれぞれ一つ、魔道具であろうものがチェストの上に置いてあるシンプルな部屋だった。


「はぁー疲れた」


ナシアは部屋に入るとベッドに飛び込んで枕に顔を埋めた。

少しすると彼女は可愛らしい寝息をたてていた。


私も彼女に吊られベッドに横たわる。

布団を被り、少しすると眠気に意識が奪われていく。

「…今夜はよく眠れそうだな」


窓からは月明かりが少し入り込んでいて、彼女らの美しい寝顔を優しく照らしていた。


こうして夜は人知れず明けていった。

ー窓から覗く一人の人物を除いて…




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