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気休め

 小さな小屋の中で男女数人が椅子に座る彼女の前に並んで期待の眼差しを向ける。彼らははガルノスの呼び掛けに駆けつけた素晴らしい人物達だ。


「良いか? ここの配合はだな――」


 彼らは彼女が口を開けばすぐに耳を傾け、メモを取る。うんうん、と頷く者もいれば、疑問符を浮かべる者もいて、更には改良の余地を探す者もいる。


 あどけなさが取れ始めている彼らは新たな知識に興味を示しているようで私の机の周りを中々離れないでいる。知識を深めて大勢の人の役に立つのは良いのだが、調合師でもない私の拙い技術を見て学ぶのは遠慮願いたい。


 本物の調合師は私では比べ物にならない高度な技術を身につけているという話だ。数週間しか経験がなく、以前の世界の知識を頼りに作った私は本来の調合師とは違ったやり方をしている可能性が高い。


 調合師のイメージを私一人を見て決めてしまう者もいるかもしれない。そのせいで調合師の不名誉な噂などが流れたら調合師の方々に申し訳が立たない。考えただけでも鳥肌がたちそうだ。


「師匠~! この材料が必要なのは何故ですか?」


「それは甘味を加える為に必要なんだ」


「なるほどー!」


 彼らはガルノスさんが話していた優秀な人材だ。重症の人物を見つけたり、数人がかりで連れて来てくれている。昨日から時間を見つけては調合の様子を観察しにやって来る元気の良い子供だ。師匠などと呼んで慕ってくれるのだが、先程も言ったように調合師ではないので師匠は遠慮願いたい。


 私もいちいち訂正はしていないし、慕われて悪い気はしないのでそのままになってはいる。この騒動が終わったら呼び方を変えて貰おうと思う。


「何が面白いんですかね」


 ナシアは憎まれ口を叩いて頬を膨らます。前回、置いていかれて少し拗ねているようで起きてから今までずっと不機嫌なので少しばかり困る。


「まあ、そう言うなってガキンチョ。嬢ちゃんはああ見えてすげー忙しいからよ」


「ガ……!?」


 そんなところに彼が助け舟を出してくれたので頭を垂れると「ガキ共を宜しくな」と手をひらひらさせてナシアを抱えたまま別室へと行ってしまった。


「師匠ー! 早く続き見たいです」


「そうだな……。続きはまた、処方が終わってからだな」


「「「はい!!」」」


 小さな小屋に子供の声が響き渡る。訪れた老婆はその様子に驚いていたが、すぐに「元気だねー」と皺が目立つ笑顔を見せたのだった。

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