A級との出会い
遂に名前付きの男キャラの登場です。
「これだけあれば十分かな。」
採掘場の2階層まで踏破した一は、採掘したノーマルメタルをを持参したリュックの中に入れた。
ノーマルメタルを30個ほど採取したので、そろそろ帰ろうか・・・なんて考えていた一だったが、
「来た道・・・どっちだっけ?」
どうやら地図を落としてしまったようだ。
「・・・君、どうかしたの?」
「ふぇ?」
そのとき、一人の若い男が一に声を掛けた。驚いた一はおもわず変な声を出してしまった。
「ふ、ふふふ・・・あはははははは!」
その反応がツボにはまったのか男はしばらく大笑いしていたが、しばらくすると治まったようで苦しそうな様子で
「はあーはあー。ゴメン取り乱した。僕の名前はジャック。元王都第一騎士団隊長で、今はセントレア冒険者ギルドのA級冒険者だよ。」
「も・・・元王都の防衛軍隊長!?それにギルドのA級冒険者!?」
「大げさだなぁ。で、どうかしたの?」
「あぁ、えっと道に迷ってしまって・・・」
「地図を落としちゃったのかな?ちょうど僕も地上に出ようと思ってたから一緒に来るかい?」
「良いんですか!」
「もちろん。困った時はお互い様だよ。じゃあ、行こうか。」
そう言ってジャックと一は採掘場を出るために歩き始めた。道中でジャックは自分がなぜ王都からセントレアに来たのかを語り始めた。
「元々、僕は貴族の生まれでね・・・幼いころから騎士としての鍛錬を続けていたんだ。その甲斐あってか、親のコネなのかはわからないけど王都の騎士団に入隊できたんだ。それからも仲間たちと鍛錬を重ねた結果、隊長になったんだけど・・・」
「そのあと・・・なにかあったんですか・・・?」
「10年前に起こった・・・「魔人戦争」でね・・・」
「魔人・・・戦争?」
「おいおい、その歳ならさすがに覚えているだろう!?」
「あ、あぁぁぁ思い出しました・・・」
本当は1ミリも知らなかった一だったが、知ってないと怪しまれると思ったのであえて知っているふりをした。
「魔人戦争で、僕は大切な仲間を失った。それからは、なにもかも嫌になってしまってね。親と半分くらい縁を切って王都から飛び出してね・・・しばらく旅を続けてここに出会ったんだ。」
ジャックは苦笑いしながら、一に自分の過去を語った。
その話を聞く一はなにも言わずに黙って話を聞いた。
しばらくすると、地上の光が一とジャックを照らした。
「本当にありがとうございました。・・・今更ですけど僕は一と言います。鍛冶屋志望です。」
「ハジメ・・・か。じゃあまたどこかでね。・・・あ、そうだ。これ、あげるよ。」
そう言ってジャックは一に小さな袋を手渡した。
一が袋を開けると、小型のマナタイトストーンが10個程入っていた。
「こ、これ・・・どこで手に入れたんですか!?」
「ん?セントレアダンジョンの中でだけど・・・」
「ダンジョンですか?」
「うん。採掘場の奥に隠し扉があってそこにダンジョンへのワープポータルがあるんだよ。」
ダンジョンがあることを知り、自分が造った武器を試せるかも・・・などと一が考えているといつの間にかジャックがいなくなって事に気づき呆然とした一であった。
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