幼年期 五話 『二度目の朝』
早く赤ん坊の時期を作者自身終わらせたいと思っています。(じゃあ早く終わらせろよ)
目蓋が開く。そして俺は意識を覚醒させる。もうまわりは暗く、隣にはお母様が寝ている。昨日はアゲダさんに本の読み聞かせをしてもらっている最中に眠ってしまったのか。せっかく世の中を少しでも知れる機会だったというのに。ともかく過ぎてしまったことはしょうがないので今できることを考えよう。
とりあえず、浮遊魔法を使ってみる。初めて使った時よりも格段に上達していてすぐに全体を浮かせることに成功した。もしかすると魔法は経験を積めば上を目指せる技なのかもしれない。前は真上に浮かぶだけだったが今回は部屋の中を移動してみようと俺は思った。
なんの問題もなく安定した浮遊を終えた後、俺はあり問題に気づく。お腹が減った。昼から何も食べていないのだそりゃあ腹が減る。しかし、お母様を無理やり起こすのは気がさわるしお腹が減ってもすぐに死にはしない。結局俺は我慢することにした。
さて、どうしたものかもう何もすることがないぞ。…そうだ。昼にアゲダさんが話してくれていたことを思い出して整理しなくては。覚えてるのはせいぜい冒険者ギルドとか食文化とかを説明してくれてた辺りまでだ。
どうやらここはアミノマ王国国内のルミナス領らしい。グラン家が統治しているということはお父様はここの領主様かな。しかし昨日のお父様の反応からすると俺は長男で、大きくなるとお父様を継ぐことになってしまうではないか。俺は領主経営なんてことはしないつもりなのに。
冒険者ギルドというものは何なのだろう。冒険者とつくぐらいなんだからきっと未開の地に入り地図を作るんだろう。あまりなりたいとは思わないな。
他の情報で気になったことは魔王かな。魔の王か。魔族なんて民族もいるのかそれとも、そもそも人間ではない他の生き物なのか。定かではないけれど、勇者が封印したということは人間の敵だろう。
情報を整理していると頭が疲れてまた眠たくなってきた。ちょうど良い、さっさと寝てしまおうと思って目を瞑った矢先に俺の意識は途切れた。
目覚めた瞬間に空腹に襲われた。幸いもう朝でお母様はすでに起きていてちょうど寝巻きから通常の衣服に着替えている最中だった。
「あぅ~。」
存在を示すために声を出す。お母様、ご飯頂戴。
「おはよう、ルキ。お腹が減っているのね?すぐに準備するから。」
というと衣服を脱いで抱っこしてくれた。昨夜からの空腹で俺はおもっいきり吸い付き食事を堪能した。
食事が終わると昨日のようにお母様にかまってもらった。脳はとても赤ん坊ではないけれど体とか本能は正真正銘赤ん坊でいつも母親の愛情を欲しているのだ。
そんな楽しい時間もあっという間でお母様は朝食に向かってしまった。お母様も貴族だ。きっと忙しくて朝と夜しか面倒が見れないのだろう。お母様と入れ替わりでアゲダさんがやってきた。
「おはようございます。ルキ様。」
赤ん坊に対しても礼儀正しく礼をしてくるアゲダさんに、俺は尊敬しなくてはならないな。
「ルキ様?昨日は読み聞かせを頼んだのにすぐ自分からお昼寝に入りましたよね。」
アゲダさんはにっこりとした笑顔で皮肉を言ってくる。しかし、不思議と冷たく感じない。むしろ温かく感じる言葉だった。
「…ぁぅ。」
少しでも申し訳なさそうとするために声を小さく出した。
「ふふふ、別に気にしてませんよ。赤ん坊は食べて寝て、笑って成長するものです。」
そう思ってくれて非常に助かる。昨日だって眠気は微塵もなかったのに突然やってきたのだ。
「さて、今日はどうしますか?また本を読み聞かせしましょうか?」
昨日は詳しく聞けなかったからそれもいいが今日はこの屋敷を見て回りたいな。本当はここの領内を探索したいのだが、体力が持つかどうかわからない。俺はそんな意味でドアの方に指を指す。
アゲダさんは本当に察しのいい人で俺の伝えたいことがすぐに伝わった。
「屋敷を見て回りたいのですか?まだこの屋敷には乳母車はありませんし…私の抱っこでよろしければ部屋を出れますけどよろしいですか?」
綺麗な異性の人に抱っこされたいやがる人の方が珍しい。俺は頷く。
「はい、かしこまりました。」
俺はアゲダさんに抱っこされながら部屋を出た。
ここまで読んでくれてありがとうございます。赤ちゃんについての知識なんてほぼゼロなのでおかしな点があると思いますが多目にみてやって下さい。
~本日題名を「異世界への挑戦」から「異世界チャレンジ」に変更しました~