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少年期 五話 『気が置けないのか置けるのか』

良くもまぁこれだけ失踪しましたわ。

「で、何で付いてきてるんだ?」


コーネリアスとの戦いの後、傷を癒し、コロッセウムから出てフィリナと共に久しぶりの王都を楽しもうと思っていたのだが歩いている道は三人分の影を映してしまっている。いつまで経っても離れる気は無さそうなので遂に訊いたのだ。


「いやぁ…君のお連れ様に惹かれてしまってね。」


爽やかなスマイルをしながらフィリナの顔をチラ見するのはコーネリアスだった。爽やかな笑顔、そう爽やかなはずなのだが俺にとっては憎い笑顔に見えてしまうのはなぜだろうか。


「はぁ、どうも?」


彼女は特別嫌がっている様子はないがやはり困惑している。


「僕の名前はコーネリアス・エーリー結構有名な名らしいからお互いに知っておいて損は無いよ。」


「フィリナ・グランです、よろしくお願いします。」


ここにきてようやく彼らは名乗り出す。エーリー家…それもこんなにも強い者を知っていないとは俺もまだまだ勉強不足……。


「ねぇ君達これからどこへ行くんだい?飲食店?土産屋?僕も一緒に……」


「ダメ…と言っても付いて来そうだし既に付いてきてるからな。フィリナは大丈夫?」


「うん!全然問題は無いよ。」


いつもの明るい笑顔が帰ってきたが内心はわからない。瞳に何か秘めるようなのを感じたが俺の気のせいだろう。


その後、ほんの数分の間だけ三人の間に気まずい雰囲気が流れたがすぐに打ち解けることができた。コーネリアス、彼とはいずれ気が置けない良い関係になれそうだと俺は早々に感じていた。しかし、幸せで楽しい時間は直ぐに終わるものだと人々は知っている。夕暮れ頃にちょっとお腹が減ったからと飲食店に向かっている時だった。


「…うっ!」


「どうした?」


急に会話が途切れる。前を見ると一人の女性が近づいてきているのが分かった。見る限り丁度フレッドと同じくらいの年齢だろう。…まさしく女性版のフレッドのように良い体格をしている。


「ようやく見つけましたよ、コーネリアス様?もうとっくに夕方です。さっ帰りますよ?おや、お連れでいるのはグラン様じゃありませんか!どうも内のコーネリアス様がお世話に……」


「おい!離せよ!!」


「ダメです!…なりました。ではまた後日という事で……。」


ひょいとコーネリアスを持ち上げながらとても従者が主人を敬う口調とは思えないまるで親子のような話ぶりだ。そんな状況に当然俺とフィリナはあっけらかんとしていた。


「あっ……どうも!」


口を開く頃には女性とはかけ離れていて俺の声に気付いた彼女は軽く会釈をしてまたスタスタと去っていってしまう。


「よ、よくわからないけど楽しめたね!」


「お、おう。」


三日間しっかりと首都を堪能した後俺らは名残惜しくも街を離れて帰路に着く。後日と言ってコーネリアスを抱えて去っていった女性とは結局会えずにはいたがずっとここに留まっていてはお母様もお父様も心配するしな。後日だな……。


「ただいま帰りましたー!」


昼に屋敷に到着したので大声で帰宅を伝える。するとそそくさとアゲダさんやフレッドがやってくる。


「出迎えもなく申し訳ございません、ルキ様、フィリナ様。」


「頭下げなくても大丈夫だよ。」


そういう礼儀正しいのはしなくても良いと言っているのに彼らは本能なのか義務なのか恭しく接してくる。そんな彼らに急いでフィリナが反応するが従者というのはそういうのを受け付けないらしい。


「しかし……」


「おぉ、お前たち帰ってきた!何かまた二人とも成長したんじゃないか?」


助け船を出すようにお父様が現れた。あぁ、本当にナイスなタイミングだよ。そんじょそこらの説教よりも面倒くさいんだこういう話は。


「ありがとうございます、お父様!」


「お父様!」


「ん、元気そうで何より…して二人とも帰って来て早速悪いんだがちょっといいか?」


「俺は別に構いませんが……」


「大丈夫です。」


久しぶりの我がグラン邸に帰ってきたが何だか居心地が良い。我が家が一番とはまさにこのことよ。としっかりと安心感をかみしめながらお父様の部屋へと俺たちは入っていく。グラン家は貴族だか礼儀にうるさくない比較的自由な家柄なので勝手に椅子へと座る。お父様は低めのテーブルを挟んで反対側にゆっくりと座った。


「ルキ、フィリナ……。」


座った途端に何やら改まった感じになり彼が口を開く。おいおい、また何か伝え忘れとかあるんじゃないだろうな。


「まぁ、お前たちが行く前に言えば何かと心の準備と言うのができていただろうがな……」


出たよ。お父様の伝え忘れ。さっきからチラチラ様子を伺っていたのはそういうことか。もう慣れっこですよ。


「来週から少し早めだがお前たちには魔法士官学校に入学してもらう。」


驚いたのはフィリナだけだった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

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