少年期 三話 『戦士の意地』
ざぼってて久しぶりに書いたのでちょっと文章おかしいかもしれません。あっいつもか。
控え室で大人しく待っていると外から歓声があがる。大会が始まったのだ。試合がそんなに長引かなければ後数分で呼び出されるはずなので準備体操をしっかりとして体を温めておく。
「ルキ・グラン選手、出場です。」
体が温まった頃合いに係員が俺の名を呼ぶ。
「ルキ、頑張ってね!」
「ありがとう。」
部屋を出る前にフィリナに応援の言葉を貰ってしまったのでこれは勝つしかないと思い俺は意気揚々と闘いの場である広間に飛び出た。
いつもならここで声援などが飛び交うが会場はざわつく。受付嬢の反応のように皆、俺がこの歳で出ることに疑問や不安を感じているのだろう。さぞかし俺の対戦相手は歓声を浴びれなくて不満を抱いているだろうな。…おい、まさか初戦がさっきの奴かよ。俺は対戦相手の顔を見て思わず顔をしかめる。
「はっ、幸か不幸か初戦でお前と当たるなんてな。どちらにせよぶっ倒してやる!」
「お前は俺の大切なフィリナを恐がらせ、俺達に失礼な態度を取った。その代償は大きいぞ!」
俺が言い放った瞬間、それを合図としたように試合開始の鐘が鳴り響く。
「何をくせぇこと言ってやがる貴族のボンボンが…俺の名はリガード、帰ってママとパパに泣き喚くんだなっ!」
へぇ、例え気に入らない相手でもさらりと名は言うのか。それはコロッセウムの戦士としてやってきた癖か、それとも闘う者への敬意か……。どちらにせよ名乗ったからには俺も名乗らなければならない。
「俺はルキ・グラン、生憎負ける気なんてない!」
自己紹介中に俺は腰に付いていた短剣を抜刀する。そしてそれが終わると彼は俺に突っ込んできた。
「らぁっ!」
素早い右ストレートパンチだが、それを繰り出す初動を見極めることで簡単に回避できる。あのフレッドさんと森で鍛えられた強さを身をもってしってもらおうか!いや…魔法を使うまでもないかな?
立て続けに強烈なパンチを放つも中々俺に当てられなくて動きが雑になったところでカウンターをする。
「ぐっ!」
そのカウンターは短剣を使うまでもなくただの手刀を相手の首に叩きつけるというものだ。魔法を使うまでもないと思っていたが身長の差で浮遊魔法を若干使ってしまったがこれはノーカウント。彼は地面に叩きつけらる。その様子を見て会場にいつもの歓声が戻ってくる。
「くそ……」
まじかよ…俺は手加減なしの全力で手刀をやったはずなのにまだ意識があるのか?俺の力が弱いのか?
「こんなガキにぃ!」
リガードは立ち上がると同時にアッパーを繰り出す。今度のは危なかった。咄嗟に反応したから良かったものの少しでも反応が遅れたらもれなく退場だ。しかし今ので感じ取れた。俺の力が弱くて気絶しなかったんじゃない。これは長年ここで戦ってきた戦士としての意地、どうやら試合は長くなりそうだ。
パンチをされたら俺がカウンターをとり、リガードは倒れる。そして再び起き上がってその繰り返し。それを数回見て観客が飽きて来た頃に審判がやってきて彼にもうやめてくれと言ってきた。審判のような立場の人はいないと思っていたがよくよく考えればどんなスポーツでもそのような役はいる。当然この大会でも。
「俺は…俺はお前になんて敗けない!」
それでもやめないと言って審判が強制退場をさせようとすると彼は審判を殴った。強制退場というものは選手にとっては良い肩書きにはならないと聞いたことがあるがそこまでなのか。
「こいつに強制退場させられるだと!?ふざけるなっ!」
流石に審判も頭にきて闘技大会直属の衛兵を呼ぼうとした時に俺は問う。
「この大会には優秀な光魔導師がいると聴いたのですが本当なんですか?」
審判はなぜそんなことを今訊くといった表情で頷く。それならいい、リガードには堂々と敗けてもらえる。
「審判さん、危険ですのでどけてください。ああ、後水を用意しておいてくれると助かります。」
幸いにも審判は広間から退場してくれた。
「何のつもりだ……?」
「そんなに強制が嫌なら普通に退場してもらおうかと思っただけだよ。」
リガードは怒りに満ち溢れた顔になるがこれは俺にとっての慈悲だぞ?お前に強制退場という肩書きをつけさせないためのな。懲りなく彼は突っ込んでくる。
「『ファイヤーボール』!!」
隙だらけの体めがけて俺はファイヤーボールを放ち命中する。死にはしないと思うが全身焼け焦げて試合どころではなくなるだろう。
「ぐぁぁぁあ!!」
そう声を挙げながら衣服も皮膚も焼け、熱さに苦しんだ。彼は今度こそ気絶して倒れ、すぐに試合終了の鐘が鳴る。会場は沸き、観客は俺に称賛を浴びせてくれる。
リガードは火の鎮火を素早くされ担架で運ばれていった。晴れてこの試合、俺の勝ちでお前の敗けだなリガード。
ここまで読んでくれてありがとうございます。