幼年期 三十一話 『郊外の村』
短くて内容が薄い回です。すいません……。
寝室を貸してくれていた村人の家族は俺に俺達にあたたかく接してくれる。これもお父様が善政をしているからだろう。
「いただきます。…うん、とても美味しいです!」
流石にペッツさんの料理程ではないがこれもなかなかの味だ。俺は空腹が満たされるまで無言でバクバクと食べる。
「ルキ様のお口に合って良かったです。」
女性は黙々と食べる様子を見て微笑む。俺は領民にも家族にも愛されていて本当に幸せ者だと何度感じたことか。
「それにしてもその歳でその身振りとはご立派ですな!」
「そうですか?あっおばさん、御馳走様でした。」
「お粗末でした。」
俺が食べ終わるのを見計らって女性の夫と見られる男性が話しかけてきたので俺達は軽く会話をする。しばらくするとフィリナも起きた。
「…どこ?」
「最寄りの村だよ。俺達はこちらの優しい方にお世話になっているんだ。」
「あ!どうもありがとうございます。」
ペコリと可愛らしくお辞儀をする姿を見て彼らは笑う。
「グラン様がお困りとあらばお手伝いさせていただきますよ。ささ、夕食を用意したので…えーと……」
「フィリナです。フィリナ・グラン。」
「フィリナ様お口に合えば是非。」
「いただきます!」
フィリナも空腹だったのか俺と同様にどんどん料理を口へと運ぶ。そういえばもともとグラン家ではないフィリナについてお父様はどのようにして領民に伝えたのか不明だ。
「御馳走様でした……お腹いっぱい。」
「お粗末でした。…ルキ様、本当にありがとうございます。」
いきなり男性と女性は立ち上がり、そして深々と頭を下げてお礼を言う。お礼を言うのはこちらだと言うのに一体どうして…?
「どうしたんですか、いきなり頭を下げて。顔を上げてください。俺達は別に感謝されるようなことはしてないですし、むしろこっちが礼をしなきゃいけない立場ですよ?」
「いえいえ、フレッドさんから聴きましたよ。ルキ様は最近この村を襲い始めたあのゴブリンを討伐してくれたと。」
あの大きいゴブリンはこの村を襲っていたのか。なんとかだが倒せて良かった。
「奴はC級冒険者でも手強い魔物ですがそれをルキ様は利益の目的なく倒してくれました。村民一同感謝しております。」
残念だが俺はこの村を救うためにゴブリンを殺ったわけではない。フィリナを助けるために奴を葬ったまでだ。
「正直に言いますと俺は別にここの村を救うために討伐したわけじゃ…」
「ルキ様、彼らにはそれについても既に私が話しております。それにルキ様は村が魔物に襲われていると聞けば討伐するでしょうからここは感謝を受け止めた方がいいかと存じます。」
「…そっか。おじさん、おばさん村で何か困ったらすぐにグラン家に伝えてくださいね。微力だけど俺はすぐに駆けつけますから。」
強くなる理由がまた一つ増える。魔物で困っている人がいれば助けるために強くなる、だ。些細な助けは偽善だと喚く者がこの世にはいる。だが少なくともそいつらよりかは誰かの為になっているだろうと俺は思う。
「…ありがとうございます。」
まだ彼らは何か言いたげだ。じっとこちらを見つめてくる。
「何か…?」
「実は…ルキ様が倒したのは群れのリーダーでしてフレッドさんが数匹倒してくれましたがまだ群れの残党がいるかと思います。」
「おこがましいようですが可能でしたらそいつらを討伐して欲しいのです。なんせ小さな村ですから数十頭のゴブリン退治程度のクエストでもギルドに依頼すると少々値が…」
自分も経験が積めてなお人々の役に立つとは一石二鳥だ。勿論断る理由なんてない。
「勿論、なるべく出費は抑えておきたいですもんね。」
一気に表情が真剣な表情から明るくなる。それもそう、もし偉そうな貴族だったら
「村人どもが誰に頼み事をしていると思っている!」
とか言いそうだもんな。ああ、そういえばそんな貴族居たな前のパーティーで。
「ありがとうございます!」
「ではそろそろ帰ろうか。フィリナ、フレッド。明日にまた来ますね。」
「え、外はもう暗いですが大丈夫ですか?」
「フレッドさんの馬は速いから足の速い魔物でもきっと追い付けないから大丈夫です!」
それにもし魔物に逢ってもフレッドがいる。俺らは心優しいおじさんとおばさんに別れを告げ、村長に挨拶してから我が家に帰宅する。
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