幼年期 二十話 『王国誕生祭前夜#2』
テンプレ食べ物パート
あれ、一人になってしまった。確かフレッドは俺とフィリナにこの街を案内するはずだが?お風呂で体を洗ったあとはフレッドを探そう。お腹も減ったしな。
俺は長旅で少々汚れてしまった体を綺麗にして貴族服に着替え部屋をあとにする。
宿を出るとすぐ側にフレッドと護衛の一人がもしものために待機していた。
「フレッド、俺にこの街を案内してくれ。まずは…昼御飯からだな!」
「はい。ではこの都市の2つある…失礼しました。一番の名物を召し上がってはどうですか?非常に美味でありますよ。」
「うん、そうだね。」
なんで言い直した?まぁいいや。正直不味いものじゃなきゃ何でもいいくらいに腹が減った。そういえばフィリナたちは何を食べているのだろうか。後で訊いてみよう。
「フレッド、護衛たちも呼んでくれ。食事はみんなで食べた方がおいしい。それに護られる身といっても俺も皆と命を張った仲でしょ?彼らをもっと知ってみたい。」
「そうですか、すぐにでも。きっと彼らは喜びますよ。」
本当はフィリナとお母様と一緒に食べて街を回りたかったけどたまには男だけで過ごすことも良さそうだ。まぁ、俺はまだ3歳なんですけども。俺らは皆で外食店に向かった。
「ルキ様、着きました。」
目的地は商店街にある一見普通の外食店だ。貴族は貴族街にある豪華で美味しい店にしか行かないそうだがそういうところよりもかえってこの店の方がおいしいのかもな。
「一般的な外食店、お気に召さないですか?」
店を眺めて考えているとフレッドにそう言われた。
「いや、こういうところにも行ってみたかった。さぁ速く入ろう。」
店内はお昼時もあってか賑わっていた。そんな中9人の団体、しかもその一人は貴族の服装をしている者が来ると当然注目が集まる。突然ざわつき始めたのを感じとり、店の奥から店長と見える5,60代の男性が現れる。
「なんだぁ?急にざわざわと…」
「久しいなビリー。」
フレッドが口を開くと彼は一瞬驚き、笑顔になる。
「なんだ、フレッドじゃないか!来るなら言ってくれれば…って貴族様じゃねぇか!!ど…どうなされました?」
フレッドの隣にいた俺に気付き笑顔がまた驚きの表情になる。
「いえ、ただ食事を取りに来ただけですよ?ビリー…さん?」
「いや、こんな所に貴族なんてグラン様くらいしか…」
「そのグラン様のお子さんだ。質問したいことはあるだろうがとりあえず、カリーの用意をしてくれ。ルキ様は空腹でいらっしゃる。後我々の分も頼むな。」
俺の気持ちをフレッドが口で言ってくれた。腹が減ったよ…。
「お、おう!まかしな!!」
彼は威勢よく厨房へと向かった。
「さて、席に座りましょう。」
俺らは互いに向かい合える大きな席に座りその名物とやらが来るのを待つ。最初は俺が貴族だからなのか待っている間の会話もぎこちなかったがフレンドリーに接して段々と会話も弾んでいった。本当に楽しい時間は早くすぎ、すぐに料理が来た。
「さぁ、御賞味あれ。我が店…いや、もはやこの都市の名物となったカリーを!」
自信満々に差し出したのはご飯の上に茶色いソースが乗った料理だった。なぜかこの品が出たとき、俺はカレーという単語が出てきた。
「ルキ様、これはカリーといってスパイスの効いた辛味に風味あるソースを白飯の上にかけて食べるものです。彼ビリーが創作しました。」
フレッドの話を聞いて俺と数人は納得するも他は
「これ…食べ物か?」
「茶色いが大丈夫なのか?」
とか言っている。確かに初めて見ると第一印象は色的に良いとは言えなさそうだ。
「あたりめぇよ!最初は皆、よくそう言う。だがそれを食ったやつらはもう虜になり、俺の店に毎回通うようになるぞ?」
聞き捨てならないとビリーさんがそう言う。
「まぁまぁ、とりあえず食べましょう。いただきます。」
うん。美味しい。ちょっと辛いけどフレッドが言った通りに美味しく虜になりそうだ。いや、もうなっちゃったな。俺はどんどんと食べていった。不安そうにしていた護衛も一口食べるともりもり旨そうに食べていた。
「ほらな?言っただろう??」
ビリーさんは勝ち誇った様子でいる。
「従者とこんなにも親しげに話していたり一緒に過ごしたりしているところを見ると本当にグラン様のお子さんなんだな…。なんで内に?」
「いえ、さっきも言った通りお腹が減ってまして。フレッドがこの街の名物といってここに連れてきてくれました。」
「そうですか、そいつは嬉しいですな。しかし、フレッドがグラン様と一緒にいるとは驚いた。」
ビリーさんはフレッドを見てにんまりと笑う。
「…ゴホン、あぁ…知り合いに紹介されてな。ルキ様、こいつは一緒に生まれ育った仲でして職業の道は違えどたまに会っているのですよ。」
そうか…幼馴染か。俺もいつか持ってみたいな。
「フレッド奴も最初はこのカリーを不味いとか言ってた癖に今じゃ常連ですよ。」
「そうなんですか?フレッドさん!」
護衛の一人が訊く。
「…まぁ。」
その後には皆が一斉に笑う。フレッドさんも素直じゃない、本当はこの食べ物を気に入って名物とか言っていたのに。
こうして9人の中に店長のビリーさんも加わり、俺達が道中で遭ったことやビリーさんとフレッドの過去の話をして俺達はとても楽しく昼御飯を食べる。ビリーさんにはなんか幼年とは思えないとも言われ、彼のテンションは段々と上がっていった。
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