幼年期 十九話 『王国誕生祭前夜#1』
今回は頑張っていつもより長めにしました。頑張った!(迫真)
あのロブ旅団とかいう連中から教われた後は難なく進むことができ無事に王都、コンスタン付近の平原まで来れた。フィリナは賊に二度襲われたことは知らない。
「フィリナ、祭って何をすると思う?」
俺はずっと気になってたことを訊く。
「んー…祭って言うぐらいだからきっとみんなでワイワイ美味しいものを食べたりするんだよ!」
「そっか。」
フィリナが言っていることも違えではないだろうが本当にそうなんだろうか?この歳で素直に祭も楽しめないとはな…これも神様の仕業としておくか。
「ルキ様、首都が見えてきましたぞ」
フレッドの声で俺達は窓の外を眺める。そこには3段ある段上の都市があり、その頂点に宮殿があった。さらに一番下の段、つまり地上にはその都市を大きく囲むようにして城壁がそびえ立つ。
「…すごいな。」
広大な平原の真ん中に巨大な人工物を見て俺は感嘆した。
「下から平民街、商店街、貴族街、そして一番上に王や王の側近が住む宮殿といった構造になっています。」
「ねぇねぇフレッドさん、私達今からあの大きな宮殿に行くの?」
「はい、そうですよ。」
「楽しみだなぁ…。」
華やかな宮殿に行くことに嬉しんでいるフィリナはなんとなく目がいつもより輝いて見える。
城門をくぐった後は大きな道が一直線となって宮殿に向かって行くのが見えた。道の端には水路があり、平民街は比較的平民も裕福なのかそれぞれがしっかりとした衣服を着ていて、住宅も綺麗な造りだった。商店街はルミナス領と同じような感じだ。
貴族街になるとさらに住宅は平民のよりも華やかになり、道もしっかりと装飾されていた。そして、遂に宮殿に着く。宮殿の正面では使用人が出迎えてくれた。
「お待ちしておりました。グラン様、まだ誕生祭には1日ございますがそちらの方々はどうされますか?」
使用人がこちらを向く。
「あぁ…フレッド、ルキ達にこの街を案内してくれ、寝泊まりするところはいつものとこだ。」
「かしこまりました。」
「俺はとりあえず王へ挨拶しに行ってくるよ。ちょっと数名よこしてくれ。また明日なルキ、フィリナ。」
お父様は王様への献上品を2人の使用人に持たせて宮殿の奥へと入っていく。伯爵にもなると祭でもきっと忙しいのだろう。
「さぁルキ様、フィリナ様まずは着替えからですね。これから数日間泊まる宿に行きましょうか。」
そういえば俺達は軽装だ。貴族の示しをつけるためにもまずは着替えだな。再び馬車へ乗り込む。
宿といっても俺らは貴族。冒険者や商人が泊まる一般的な宿とは違い、貴族街にある立派な物へと案内された。正直、一般の宿舎に興味があるのでそっちに泊まってみたかったんだけどな。
「どちら様で?」
眼鏡をかけた老人がロビーに入るとすぐ問う。
「グラン様方です。」
「グラン様ですと!?お子さんが2人もいらっしゃったとは…部屋は1つしか取っていませんがどうします?」
お父様は俺が生まれたことを公表にしていないのか?まぁ最近までずっと家に引きこもってたけど…。
「ふぅむ…グラン様からはここで泊まるようにと言われていますからね。他に部屋は空いてますか?」
「そりゃあ勿論空いていますよ。祭で少し混むくらいでここの宿なんて普段誰も泊まりませんしこんな広いですからね。」
「では、もう1部屋取ってください。」
これで2部屋になったわけだがフレッドたちは何処で泊まるのだろうという素朴な疑問が生まれた。
「フレッドは何処で泊まるの?」
「私共は一般的な宿にでも泊まりますよ。お気になさらずに。」
彼は笑顔で答えた。…フレッドの性格からしてここでここで泊まるようにと言っても意地を張って商店街にある宿へ行ってしまうので俺はあえてそのことを言わなかった。本当は命を張ってくれたフレッド達に少しは贅沢させたかったが…。
「…あぁ!護衛についてはご安心をここの街な世界でもトップクラスの治安の良さですよ。特に貴族街から上は衛兵が常に巡回していて犯罪なんてことは滅多に起きません。しかし万が一のこともありますので護衛を3人ほどこの宿の外に待機させておきます。外に配置させるのはここの宿への信頼と敬意の意を示すためです。ご不満がありますか?」
「いや…ない。それに別に身の安全を確保したいわけじゃないよ。」
自分の身は自分で守ることくらいできないとこの先大切な人を守っていけない。
「よろしいですか?部屋の鍵です。番号は鍵についておりますので。お支払は後払いで結構でございます。」
自分達の部屋へ向かう途中の廊下で一週間振りにお母様に会った。
「あら!ルキにフィリナじゃない!!久し振り!!」
お母様は俺達を発見するとすぐに駆けてきて俺達を抱き締める。ちょっと…嬉しいけど痛いよ……。
「お母様!」
「お母様…強いよ…。」
フィリナは嬉しそうに抱き返しているが俺は窮屈で仕方がない。しばらくしてお母様はやっと俺達を放す。
「会いたかったわ。2人とも無事に着いたのね。フレッドもありがとう、ここまで無事に着けたのはあなたたち優秀な護衛のおかげよ。」
「それが私共の使命、こちらこそありがとうございます。」
普通の貴族なら「もったいない御言葉」とか言うんだろうが単純で率直に「ありがとう」といえるところがグラン家の良いところだと思う。
「お母様はこれからどこに行くんですか?」
もうちょっと一緒にいたさそうなフィリナがお母様に訊く。
「んー…私もさっき着いたばっかりなのよね。まだ祭には1日あるしこれから久し振りのコンスタンで買い物でもしようかしら?」
「私も一緒に行きたいです!」
フィリナがすぐに応える。まぁ、一週間も家族と会っていなかったら少しは団らんしたいもんな。しかし、フィリナは切り替えが早いな。はたからみたらもう完全なお父様とお母様の娘だ。
「いいわよ!娘と買い物なんて初めてだわ!それに比べてルキとかいう子はいつも本ばっかり読んでいて可愛げがなくて…」
「悪かったですね。引きこもりで!」
何度かショッピングに行こうとお母様から誘われたことがあったが俺はいつも断っていたのだ。
「ふふふ、あなたも可愛い私の子よ。でもルキはこんな歳でもう自立しちゃってるし可愛いげは顔だけなのは本当。だからもうちょっと甘えても…」
「だぁぁー!なんか恥ずかしいことを言わないでください!!」
お母様は綺麗で優しい自慢のお母さん。俺は大好きだ。だからこそあんなこと言われたら恥ずかしい。きっと今の俺の顔は赤くなっているだろうな…。
「そう、それよ!可愛いげは!!」
意味不明なことを言っているお母様の側でちょっと拗ねているようなフィリナが見える。しまった、少しお母様と話しすぎたか…?突然フィリナはお母様の耳に向かって何かを囁く。するとお母様は驚き、真剣、そしてニヤニヤした顔といった順に表情が変化する。拗ねていたと思っていたフィリナの顔は赤くなる。てっきりお母様をとりすぎていて焼きもち焼いているんだと思っていたが違うようだ。ちょっと安心。
「それじゃあ、私はロビーで待っているから。」
お母様はスタスタとロビーに向かっていく。お父様もお母様と個性的すぎないか?
「じゃあ!早く着替えちゃおう!!」
「はい、部屋に案内します。」
部屋は至ってシンプルな構造だが、ベッドやテーブルなどは高級そうだ。それにお風呂もある。フィリナは部屋に着くと俺が部屋を見回している間で着替えて
「言ってくる!」
と言ってすぐに出ていった。お母様とショッピングにいくのが嬉しいのだろう。
「フレッド2つ質問ができた。」
部屋を出ていこうとするフレッドに急いでそう言う。
「何でしょう?」
「お母様は一人でいたけど護衛とかは大丈夫なの?」
「はい、サラ様も外で護衛を待機させていると思います。」
そうか。それなら安心だ。
「もうひとつ…俺、フィリナ、お母様、お父様、どの組み合わせで部屋を使うんだ?」
「…?フィリナ様とルキ様、ルーシー様とサラ様ですがどうかされましたか?」
「ベッドは1つ。お父様とお母様は…まぁ別として俺とフィリナが同じベッドで寝るようなことはできないんじゃないか?彼女も少しは抵抗があるだろうし。何より俺が…その…恥ずかしいんだ…。」
「そうですか…でもまぁ、フィリナ様は喜んでルキ様と一緒になると言うでしょうね。」
「え?なんで…?」
ほぼ他人…いや友達か?どちらにせよ一緒に寝るにはハードルが高いと思うが…俺なんてお母様と寝るのもドキドキだ。
「それは…ルキ様も成長すればわかると思います。では、私はこれで。」
「あっ…」
フレッドは逃げるようにして俺から離れたように見えた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
追記
最近忙しいです。待ってくれているかたすいません。明日には投稿できるかと…!