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幼年期 十七話 『道中で#1』

今回はこの手の小説であるあるな回です。

俺とフィリナはお父様に指示された馬車に乗って彼女は俺の隣にいる。馬車のなかは全速力とあって激しく揺れている。


「私、なんだな楽しいなこういう感じ。」


「俺だってなんだか落ち着かない楽しさはあるさ。でもそれもすぐ無くなるぞ、この揺れと退屈さにな。」


ルミナス領の外に行くのは初めてだから今はこの時折見える川や池、野原の景色を楽しめるがすぐに見飽きてしまうだろう。


「それもそうかもしれないね。でも、ルキがいるから暇にはならない自信があるよ。」


それはどういうことだ?まさかこれから数日間ずっと話し相手になれというのか?話のネタをいくつ用意すればいいんだ。しかし、自分だけ本を読んでフィリナをほっとくというのは可哀想な気がする。


「へぇ、なんで?」


「いっぱい話せるじゃん!」


「…話のネタ、用意してくれよ?」


フィリナはリンネさんのことや親のことなどグラン家に来る前について教えてくれた。親の顔と名前はもう覚えていないそうだが昔住んでいた所は覚えているらしい。話を聞く限りきっとそこはアミノマ王国国外だろう。ここは森の中で奇形な猛獣なんて出てこないからな、多分。話が途切れたところで俺は質問する。


「フィリナは本当のお父さんとお母さんに会いたい?」


フィリナは少しの間考えたあとに口を開く。


「会いたいといえば会いたいよ?でも、わざわざ探して会いたいとも思わないかな今はもうお父様とお母様がいるしね!」


「そっか。じゃあ夢とか目標はないの?」


いつか訊こうと思っていたことをここで訊いてみる。


「夢か…あるよ。決して叶わないと思うけど…。」


フィリナは複雑な表情で答える。しかし、叶わないとは何だろう。興味があるが今ここで訊くべきことではない気がする。


「叶うといいね、その夢。」


「うん。ルキはないの?」


俺の夢…俺はいつも魔法の鍛練や剣術の稽古をしているが一体何のためにしているのだろうか。強くなるため?ああ、魔王を倒すためか?神様は運命とか言ってたし…。今の亜人の扱いを無くすために強さは不必要な気もする。なぜだろうか。


「ルキ?」


「ん?あぁ、俺は人が亜人を差別している現状をなくそうと思ってるよ。強いて言えばそれが夢だよ。」


「ルキには大きな夢があってすごいなぁ。ありがとね、私たちのために。」


フィリナは感嘆した様子で言う。その時、外にいる護衛が大声で


「敵襲!」


と叫ぶ。


すぐに俺は窓から外の様子を確かめる。ここは林道で木の後ろから人影が見える。窓から見えるのは二人だけだ。何の前触れもなく奴等は現れたのだから待ち伏せしていたのだろう。


「だ、大丈夫かな?」


「ああ、きっと大丈夫さ。フレッド率いる精鋭が負けるはずかない。」


とフィリナが心配そうにしていたので少しでも安心させようとするが実は俺も不安だ。敵の数が10人くらいならなんとかなるだろうが20人を越すと数の暴力で負けてしまう。何にせよ、外の様子がまだわからない以上、俺の不安は消えない。


「ご心配なくグラン様方、ここは我らに。」


外からフレッドの威厳ある声がした。フレッドがああ、言っているんだ。きっと大丈夫。


「おいおい、こっちは20人来てるのがわからねぇのかい?金目の物を置いていけば命だけは助けてやる。」


外から恐らくリーダー格の賊がそう言った。


「我等が主グラン様に矛先を向ける無礼、赦されると思うな。かかれ!」


賊の言うことなく聞く耳も持たずにフレッドがそう告げると途端に辺りは金属音と怒声に包まれた。数分も経たない内にそれらは聞こえなくなり、唸り声や罵声に変わった。頃合いをみて外に出てみるとそこには20人いたという賊は18人に減っており、そのうち2人は縄で捕らえられ、残りは倒れていた。息はあるだろうが致命傷だろう。


「さすが、精鋭だね。数分で片付けるなんて。」


「はい、時間が惜しいですから。しかし、2人ほど逃してしまいました。誠に申し訳ありません。」


フレッドは深々と頭を下げる。


「いいよ、堅苦しい。それで、その2人は今も追いかけてるの?1人護衛が足りないよね。」


8人いたはずの護衛は7人になっていた。


「はい、誠に勝手ながら現在逃走している2人を追跡中です。あの規模になるとこの道を通る商人や平民に大きな被害が及んでしまうのですが呼び戻しますか?」


そんな言い方されたら嫌でも出すしかないだろ…。別に嫌になることはないだろうけど。


「いや、続けてくれ。見つけ次第、ルミナス領から兵を出すんだろ?」


「はい、その通りでございます。」


「ところでお父様は?」


「グラン様は恐らくお休みしておられると思われます。」


お休み?まさか寝ているのか??あんな状況で良く寝れるものだ…。


「そうか、頼もしい護衛がついているから安心しているんだろうな。進もう。」


「はい。」


馬車に乗るとフィリナがまだ心配そうな顔をしていた。


「あまり、話が聞こえなかったんだけど大丈夫だったの?」


「ああ、心配ないよ。」


それを聞いて彼女はようやくホッとした表情になる。出発してから僅か数時間で賊に襲われるとは思っていなかった。しかし、その緊張感のおかげで俺は眠たくなった…。


ルミ活躍してないじゃん!と思う方、安心してください、次回活躍します。

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