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幼年期 十五話 『頼み事』

このまま俺のモチベーション止まるんじゃねぇぞ…。

食堂でしばらく待ってから家族が揃い、いつものように楽しく食事をし始める。会話が止まったとき、お父様に例の件を問い詰める。


「お父様?何か俺に伝え忘れていることはありませんか?」


「ん?伝え忘れていること?思い当たらないな…」


とぼけているのか忘れているのか、それともフレッドが勘違いをしたのかわからないがフィリナを家族にすることを伝え忘れているようならきっとこの王国誕生祭についても忘れているのだろう。


「王国誕生祭…」


とぼそりと呟いてみるとお父様は案の定忘れていてハッとした顔を見せる。


「大事なことを忘れていた!来週に行われる王国誕生祭にルキ、お前も出席することだ。ハハハハ、フィリナ件といいどうも俺は忘れっぽい…」


「お父様は伯爵なのでしょう?そこら辺をしっかりとしてください。俺に関わることならなおさら!」


陽気で明るいお父様は嫌いじゃないがこういうところはしっかりとしてもらわなくてはならない。


「お、おう。お前はちょっとサラに似ているな…その感じ…。」


「ふふ、あなたが情けないだけよ。きっと爵位だってすぐにあなたを抜かすわよ?」


そうか、お父様はお母様に助けられてここまで来ていたのか。じゃなきゃこんな様子で伯爵様は勤められない。俺はお父様を絶対に越えようと心に決めた。俺の向かい側でフィリナもアゲダさんたちも笑っている。


「それで、王国誕生祭とは何をするんですか?」


「ああ、王国誕生祭は毎年不定期に行われている行事で貴族全員参加のイベントだ。まぁいつも同じ時期にやっていないのはオスル帝国に目をつけられるからだろうな。」


「去年は行っていないような気がしますが?」


「ああ、ルキは今年からだ。まだ1、2歳児がいっても正直お荷物になってしまうからな。ルキもまだ3歳だが、お前はもう言葉も流暢で剣術や魔法の才もすごいからな。」


ん?なぜお父様が俺が剣術や魔法を使えることを知っているんだ?後から自慢でもしようと思って隠しておいたのだが。


「剣術や魔法が使えるって言ってましたっけ?」


「ふふ、ルキのことなら私たちなんでも知っているつもりよ。」


…全然気づかなかった。鍛練に集中していてお父様方が見ていることに気づかなかったのか?まぁ、そんなことはどうでもいいか。


「あ、フィリナは?フィリナもまだ…そういえば年齢聞いていなかったね。」


王国誕生祭にフィリナも出席するかどうか訊こうと思ったらまだフィリナの年齢が知らないことがわかったので突如顔を彼女に向ける。


「わ、私?4歳だよ??」


「え、同い年だと思ってたけど年上だったのか。」


あれ、この場合俺はフィリナに敬語を使った方がいいのか?お姉さまと呼ぶのか?今更呼ぶのはちょっと恥ずかしいし…


「フィリナも参加させようと思う。フィリナも4歳にしては随分と賢いからな。」


お父様が俺の余計な思考を遮ってくれた。そうか、フィリナも参加するのか。しかし、それだと耳をどうにかしなければ騒ぎになってしまうのではないだろうか。


「ありがとうございます。でも、私この耳があるし…」


「それについてはご心配なくフィリナ様、私の白魔法で見えなくして、人間の耳を作ることができます。」


マーゴットが驚きのことを言う。


「フィリナは嫌か?別に無理して参加しなくてもいいんだぞ。10歳くらいからは行かなくてはならないだろうけど。」


マーゴットが言ったことを誰も疑問に思わないで話が進んでいく。


「い、いえ!是非!!」


「さ、食事の続きをしましょう?さっきからみんな手が止まってるわ。」


俺が話についていけないほどのスピードで事が運んでいく。正直、王国誕生祭の具体的なことも聞いていなしいフィリナの耳を見えなくする魔法だって知りたい。ああ、頭が混乱する。まだ小さい頭脳じゃ情報が整理しきれないか?


食事も終わり、各々自分達の仕事に戻っていく。俺は早速フィリナに訊く。


「フィリナ?いや、お姉さまと呼んだほうがいいですか?」


「え、いいよ!今更お姉さまだなんて…悪くはない…けど恥ずかしいよ……。」


「へぇ、悪くはないんだ。お姉さま?」


俯いていているところをちょっといじめたくなったので顔を覗きこんでそんなことを言ってみる。そこにはしっかりと赤くなっている可愛らしいフィリナの顔があった。


「だ、だから恥ずかしいって!」


「わかったよ、フィリナ。もう言わないから。」


必死な彼女も俺のイタズラ心をくすぶるがあんまりいじめてもかわいそうだ。今日はもう止めておこう。


「それで、フィリナ。さっきマーゴットが耳を見えなくするって言ってたよね。今から消しに行くの?」


「え、うん。」


「じゃあさ、頼みがあるんだけどいいかな?」


「私にできることなら何でも!」


フィリナに出会ってから一度はやってみたかったことがある。それは彼女の耳を触ることだ。ちょっと気持ち悪いことかも知れないけど人生で一回はあのふわふわそうな耳を触ってみたいと思ってしまったのだ。


「耳、触ってみていいかな?」


「ッッ!」


フィリナの顔は急に真っ赤になってしまう。


「いっいいよ!でも、どうせなら頭も撫でて…欲しいな…。」


消え入りそうな声で言う。耳を触らしてもらうんだから撫でることなんて容易。


「じゃあ失礼して…うわぁふわふわしてて気持ちいいね。」


しばらく触っていても相変わらず彼女は真っ赤になって固まっている。なんだか可愛そうになってきたので頭を軽く撫でて止める。


「ありがとう、変な頼み事しちゃって。」


「う、うん。とても優しい手だったよ?あの…もうちょっと大きくなってからもう一回してもらって…いいかな?」


おいおい、まだ顔が赤いぞ?さっきからなんだか様子がおかしい。後で獣人の耳について調べてみるか。


「まさかそっちから言ってくれるなんてね、勿論だよ。」


フィリナは可愛らしく俯く。


「さて、マーゴットさんの魔法も見てみたいし、そろそろ使用人の部屋へ行こう!」


さっきから固まっているフィリナの腕を掴み食堂を飛び出る。さぁ、獣人の耳を消して人の耳を作る魔法見せてもらおうか!


ルキ羨ましいな、耳触らせてもらって!

ここまで読んでくれありがとうございます。

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