幼年期 十二話 『ルキの志』
なんとか書ききれました。
武器屋の前まで戻ってくると馬車はあったがフレッドさんの姿はなかった。やはり、剣の使い手だから興味があるのか。早く先ほどあったケンカ?を彼に自慢したいな。3歳で8~10歳くらいの相手に買ったんだ!
店に入るとどうやらフレッドさんと店の店長が意気揚々と語り合っていてた。
「いやぁ~わかってますなハーマン殿、そう、オルデッドの戦いにはこの剣ではなくあちらの槍の方が戦術的に有利だったのですよ。」
「勿論だとも!上からの命令で両手剣を使ったがあれじゃリーチが短いんだ。」
どうやら戦争の戦いをしているらしいが俺には全く分からない。自分では知識はある程度ついていると思っていたがまだまだだな。フレッドさんと店主の間に入り、もう帰るように言うのはちょっと勇気がいる。しかし、このままだといつになるか分からない。
「フレッドさん、そろそろ帰りましょう。ここの店主とずいぶんと仲良くなりましたね。」
「おぉ、ルキ様、紹介します。この方はハーマン殿といって数年前のオルデッドの戦いで私と共に戦っていたのです。まぁ、実際戦場で会ってはいませんが…。」
「ここで武器屋を経営しているハーマンです。ルキ様、今後も是非ともここで買って頂けると…内の嫁と娘たちが喜びます。」
ペコリと頭を下げたのは陽気そうだが体はしっかりとしているお父様より10歳くらい年上のハーマンと名乗る人だった。
「ルキ・グランです。はい、まぁ実戦で使ってみて良かったらまた来ますよ。」
ハーマンさんはちょっと渋い顔をしてからすぐに笑顔で
「最高の商品を使ってますからこれでお得意様ゲッドですね。」
とか言っている。この冗談でフレッドさんともすぐに会話が続き、さっきまで話していたということか。
「少し、惜しいが今日はもう帰ります。また話しましょうハーマン殿。」
「ああ、また待ってるぜ。」
俺たちは武器屋を後にした。ちなみにその武器屋の名前はハマーン店。なんと分かりやすくてネーミングセンスが名前だろうか、これは覚えやすい。
「もうこんなに暗くなっているとは…ルキ様、私たちはどれくらいあの店にいたのでしょうか?」
馬車に乗るとフレッドさんがそんなことを言ってきたので彼はやはり話と武器に夢中になっていて俺のことも時間も忘れていたことがわかった。
「僕は武器屋を出て商店街に出ましたよ?あ!そうだ、聞いてくださいよフレッドさ…」
路地裏であった出来事を早速誉めてもらおうとしたがフレッドさんはひどく落ち込んでいた。
「なんと…私が話に夢中になっているときに……ルキ様にもし何かありでもしていたら私は…」
「あぁ、そんなに落ち込まないでくださいよ。」
「この度は私の勝手でルキ様を危険な目に遭わせてしまって本当に申し訳ありませんでした!」
いきなり馬車を止めて俺のところに来て土下座をして謝ってきた。別にそこまでしなくてもいいんじゃないか?勝手に側を離れたのは俺だし…。
「ちょ、ちょっと顔を上げてください。別に許すも何も僕が何も言わずに出ていったのが悪いんですから。」
「それでも、気づかなかった私が悪いのです。」
「だから、顔を上げてください。…分かりました。今回の件は許すから顔を上げろ、そして今後とも俺の護衛になってくれるな?」
「誠に有難うございます、2度とあのような真似はしません。」
「よし、終わり。今回の件をあまり気にしないでくださいね?」
「はい。」
ようやくフレッドさんの険しいが少し緩んだ。
「そんなことよりも聞いてくださいよ、僕…獣人をみたんですよ。」
本当は女の子を虐めていた奴等を倒したということを言いたかったがこれを言うとまた謝ってきそうだから言えなかった。
「ほう、獣人とはここら辺では珍しいですな。」
「初めて見たときは驚きましたよ。女の子でした。ものすごく可愛かったですよ?勿論ペットとかの意味じゃなくて。」
「はっはっは、まさかルキ様からそんなことを聞くなんてまだあなたは3歳ですよ?」
3歳ではあまり自我が芽生えてないからそういう感情はないはずなんだ。しかし、なぜか俺はもう3歳ではない気がする。
「…それで、聞きたいことがあるんですが。」
「はい。」
「亜人というのは人から嫌われているんですか?」
「…まぁ、人間とは見た目が違うというのもありますが、やはり魔族に近いということから嫌う人もいるでしょうな。」
なるほど。近年まで、魔族と人間は対立していたからその影響がまだ残っているのか。しかし、路地裏のあれはないだろ…。獣人といっても耳がついているくらいで人間とあまり変わらないのに。
「正直、ここアミノマ王国で亜人の差別は禁止していますが、それは表向きだけです。普通に人身売買などもあります。」
そこまでするのか!将来、俺は1領主として亜人への差別意識を撤廃させなくてはいけないな。あんなやからが大勢いるのなんて許せない。
「ルミナス領での犯罪件数はどの領地よりも少ないです。何よりグラン様がそういうことを許しませんから。しかし、衛兵の目が届かないところではやはり行われてるかもしれません。」
「僕がそんなことをさせないさ。」
「良い志だと思いますよ。」
彼が優しい口調で言ったそのあとは沈黙が続き、数分経過した。
「さぁ、もうそろそろ到着ですよ。」
もう辺りはすっかり夜の始めとなっていて暗かったがその日はやけに月の光が強かった。
ここでもフィリナちゃんを登場させるつもりでしたがそこまでいきませんでした(笑)
ここまで読んでくれてありがとうございます。