幼年期 十話 『神は突然に』
ヒロインをようやく次回辺りに出そうと思います。ハーレムって書いてあるのに遅いですよね…。
「はい、左、右、隙あり!」
フレッドさんは俺の右手を木剣で叩き、俺が手に持っていた木剣を落とした後、間髪入れずに首を狙ってきた。
覚悟して目を瞑っても痛みはやって来なかった。ゆっくりと目を開ける。彼の剣は俺の首のすぐそばでピタリと止まっていた。
「ふむ、なかなか筋がありますよ。私の思った通りルキ様は飲み込みが早いようです。」
とは言ってくれてはいるもののフレッドさんの力強い攻めを一心不乱に防いでただけだ。
「は、ははは。フレッドさんは剣の猛者と聞いていましたがここまでとは…。」
フレッドさんの攻め方は力強く恐怖した反面、隙のない動きに美しさを感じた。
俺は3歳で魔法を取得したということだけあって慢心していたのだ。きっと「魔法もできたのだから剣術だってすぐにできるさ」なんて心のどこかで思っていたんだ。
魔法は便利だからとか、後々役に立ちそうだからなんていう意志で始めてみたのだが剣術はそれとは違い、胸が高ぶり、自分もあんな風に剣を振ってみたいと願ったのだ。
「是非、もう一度手合わせ願います。」
あんなにボコボコにされたのに関わらず、俺は懲りることなく模擬戦を挑んだ…。
「もうそろそろ止めにしませんか?もう昼ですよ?その歳であまろ動きすぎてもお体に障りますよ。」
二度目の模擬戦を挑んでからどれくらい経ったのか。日はさっきよりも昇っている気がする。荒い息を整えてやっと先程の提案について応える。
「そ、そうですね。あまりフレッドさんに迷惑かけさせても駄目でしょうし、そろそろお昼時ですからね。良かったらご一緒に?」
「私は一向に構いませんよ。昼食なら喜んで。しかし、まぁ…ルキ様は私に少々丁寧過ぎるのでは?」
「いいえ、そんなことありませんよ。敬語とは相手を敬う意味で使われるますが、そうとは限りません。自分自身の上品さを表すためにも使われるのです。」
「…まったく、ルキ様には驚かされてばかりです。素晴らしい考えだと思いますよ。しかし、いずれは私のことを呼び捨てにしてくださいね?いや、させましょう。」
フレッドさんの謎の意気込みを聞いたあとに俺たちは食堂へ向かった。
食堂ではフレッドさんと色々なことを話した。フレッドさんは元騎士団長でダリエル団長とは戦友だったそうだ。しかし、自分の衰えを感じて現役を引退したのだという。
フレッドさんには良き妻もいるそうで今はこの領内の城壁ぎりぎりの郊外で住んでいるそうだ。だからあまり俺の側にいさせるのも悪いので週に一度は家へ帰るように言っておいた。フレッドさん自身はそんな休暇はいらないと言っていたが家族の大切な時間を俺が奪うわけにもいかない。他にもフレッドさんは過去にお父様の剣術を教えていたということなども分かった。
昼食が終わった後はフレッドさんに別れを告げて自室へと戻った。朝から沢山動いたせいで疲れて今日は久しぶりの昼寝をしようと思った矢先に神はきた。
「やぁ、ルキ元気にしてるか?」
どこからともなく聞こえてくる懐かしい声に俺は驚いて体をビクッとさせてしまう。この声は約三年ぶりとなるカミューの声だと気付くまでそう時間はかからなかった。
「神様、何でしょうか?今は非常に眠たいのですが…。」
「そう言うな、私だって時間の都合があるのだ。して、今日の件だが……。」
カミューはそれからしばらくの沈黙の後に意味不明なことを言ってきた。
「お前には魔王ジェミスを倒してほしい。」
「は?」
魔王?魔王ってのはあの勇者ルキナが封印したっていう魔族を束ねていた者のことか?
「その通り、まさかガウスがこちらの世界の魔王を代理として選ぶとはな…すまぬ、予想ができていなかった。」
なんでこの俺が。勇者とやらに任せておけば良いのに。第一に、俺は魔族に悪い印象を抱いていない。かつて人間と争っていた敵とはいえもう過ぎたことで外交も回復している。第二に、その代理とかの意味がわからない。意味がわからないことだらけだ。
「記憶なんて消すんじゃなかったかもしれんな…。」
なんの話だろうか?
「いいや、こっちの話だ。…で、現魔王ジャミスを倒すには色々と方法が合ってな。何も殺めることはない、相手の戦意を無くしたり説得をしたりと何らかの方法で負けさせるのだ。勿論、殺めてもいいのだがな。」
ふむ。一つ謎は解けたがまだ一つある。代理とはなんだ?
「それはまだ知らなくてもいいな。ああそうそう、自分にメリットがないなんて思わないでくれよ?もっとも、思ったとしてもそんな思いなんて私が消えさせてやるけどな。」
やはり何を言っているのかわからない…。こんな話でメリットがないなんて思うのは当たり前じゃないか。
「神様、それは神としての命令ですか?」
「命令ではないぞ。これはルキの、お前の運命だからな。」
姿は見えないが何処かでカミューが不敵な笑顔で笑ったような気がした。
「…後々の人生のイベントとでも思っておけ。さて、重い話ばかりしていてもつまらないからな。ルキよ、今日の夕方頃に商店街に出向いてみるといい。神からの告げだ。では、またいつか。」
そう言うとカミューの声は聞こえなくなった。何なんだあの神様は…。まぁ、別に悪いやつじゃなさそうだし、魔法のことを教えてくれたからな。まだ先のことだろうし、頭の片隅にでも置いておこう。
ほどなくして、猛烈な眠気が襲ってきたので俺は抵抗なく目蓋を閉じた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
ここ最近投稿できていないですが失踪はしていません。
日曜日に投稿できたらいいなー(遠い目)
見てくれている人はいるのだろうか…。