第80話 かたちのない宝物
そうして、美幸の新素体を話題に3人で盛り上がる中、遥は何気ない口調で、
その換装の核心ともいえる部分について、美幸に一つ質問することにした。
「ところで、少し気になっていたのだけれど…
“代理出産のテスト”ということは、当然だけれど“子供を産む”ということよね?」
「あ、はい。そうですね、そうなります」
「代理…ということなら、当然、体外受精させたものを使うのだろうけれど…
それは、一体どうする予定なのかしら?」
「あ~…そっか。
新しい素体のことは純粋に羨ましいけど、それがあったんだね…」
話題がその話に及ぶと、それまで喧しくしていたのが嘘のように、室内の空気が
少し暗いものに変わっていく。
それもそのはず、美幸に既に婚約者でも居るのなら話は変わってくるが、相手が
居ない現状なら、ただ試験のためだけに子供を産む…ということになる。
普通に考えれば、高槻夫妻の第二子を産む…というのが順当な案なのだろうが…
やはり、それでも美幸の心中は複雑なものとなるだろうことは想像に難くない。
『実際にアンドロイドに代理出産が可能なのか』を検証する分には、それでも問題
はないのだろうが…。
美幸の場合は心に制限が掛かっていない分、その辺りの事情がMIシリーズとは
致命的に違った。
これがMIシリーズでの実施なら、“代理”というものに対して割り切って考える
ように事前に設定さえすれば、全く問題はないだろう。
だが、美幸の最大の魅力は、“一度もAIを調整していないこと”にある。
つまり、結局はそういった心情面での問題は技術的な対応ではクリア出来ない…
ということになる。
「それが、ですね…。今…少しだけ、ややこしい状況になっていまして…。
実は今日、お2人に相談したいと思っているのは、そのことなんです」
「なるほど…。それが、本当の“今日の本題”ということなのね?」
「美幸っちの試験の相談、か~…。…何だか、ちょっと懐かしいなぁ…。
昔、この部屋で由利子さんも一緒に4人で作戦会議したこともあったよね…」
「ああ…。あの、結局は莉緒の案で銀細工を作ることに決まった時の話ね。
あの頃から莉緒は騒がしくて、大変だったわ―――って…あら?
そういえば…莉緒がいつも跨っていた、あの巨大な兎のぬいぐるみが無いわね。
あれは、どうしたのかしら?」
思い出の中の情景に、ふと違和感を覚えたのか…。
そう言うと、遥は不思議そうな表情で室内を軽く見回し始めた。
由利子の部屋に入る度にベッドの隣で強烈な存在感を放っていた、あの姿が何時
の間にか無くなっている。
隆幸と美月からのプレゼントということもあり、美幸があのぬいぐるみをとても
大切にしていた経緯も知っていた遥が、それが無いことに違和感を覚えるのも無理
はなかった。
…しかし、そんな遥に対して、莉緒が何でもないことのように答え返してきた。
「あー…もしかして、うさピョンのこと?
実はアレ、1年くらい前に私が美幸っちに譲ってもらったんだ。
今はうちの家で息子の抱き枕の代わりになってるよ。
…まぁ、サイズが大き過ぎて“抱く”というより、“乗る”って感じになってるけど」
「そういえば…あなた、事ある毎に『コレちょうだい!』って言っていたものね…
正に18年の粘り勝ち…といったところかしら。
執念深い女ね…恐ろしいわ…」
「遥ちんっ! 言葉のチョイス! 相変わらず言い方が酷いよ!?」
「あはは…。そうですね…。
私も、ずっと大事にしていたんですが……根負けしてしまいました。
…まぁ、莉緒さんなら、私と同じくらい大切にしてくれそうでしたし」
そう遥に答えながらも『しょうがないなぁ…』といった様子の美幸。
その表情で、再び話が脱線していることに気付いた遥は、慌てて修正する。
「…ごめんなさい。また話が逸れてしまっていたわ…。
真面目な話の最中に、思いつきで余計なことを言うものじゃないわね…」
「いいえ、良いんです。そういうのも嫌いじゃないですからね…。
…ただ、やっぱり相談にも乗ってもらいたくて…ですね」
「…そうよね。本当にごめんなさい」
3人で集まる機会が減った所為か、ついつい話を広げてしまう。
いつも通りならそれでも良かったのだろうが、“相談”という本題が出た以上は、
まずはそれを話し合うべきだろう。
そう思った遥は素直に謝って美幸の相談内容を真剣に聞く体制をとった。
…隣で『遥ちん、美幸っちに怒られてる~』と言って笑っている莉緒への反撃は、
一旦後回しにしよう…と、思いながら。
「…というわけで、先日、佳祥君に正式に交際を申し込まれまして…。
美咲さんが言うには、実験の開始まで最大で1年の猶予期間を頂けるらしいので、
その間にそれを含めてじっくり考えるように…と」
「…なるほどね。つまり―――
佳祥君と付き合うことにするなら、相手は佳祥君で美幸達の子供という扱いに。
佳祥君と交際せず、尚且つ他に相手が見つからない場合は、隆幸さん達の第二子を
代理出産、高槻夫妻の子供にする…ということなのね?」
「はい。今のところ、そういう計画らしいです」
美幸は先日、美咲から説明されたその話を遥達にそのまま伝えることにした。
…結果的に告白の事実を周囲の関係者ほぼ全てに伝えることになったため、佳祥に
は少々、申し訳ない気持ちにはなったが。
「期限は1年…ね。…重要な案件の割には、随分と猶予が短いのね?」
「それは、仕方がない部分もあるらしいんです。
元々、その要望が以前から出ていたこともあって、案件自体が急がれているという
理由もあるのですが…。
それとは別に、“私の扱いに関しての事情”もあるらしくて。
その事情もあって、延ばすにしても一年くらいにしたいのだそうです」
「…美幸の扱いに関する事情?」
その美幸の言い回しに、『また何か問題でもあるのか…』と顔を顰める遥。
だが、そんな遥に美幸は誤解が無いよう、慌ててその詳しい事情を説明する。
「ああ! 違うんです、遥! 今回は別に悪いことというわけではなくて!」
「…そうなの? それで…その内容は、詳しく聞いても良いのかしら?」
「…実は、ですね。
今度の換装で、私の身体が通常の人間に限りなく近くなるので、試験的に戸籍を
設けて、実際の人間として過ごさせてみよう…という話になっているんです」
「…実際の人間として?」
「…はい。そうです。
今の私は容姿に全く変化がないので、長期的には人前で堂々と生活は出来ないの
ですが…新素体に変われば、その辺りの問題が無くなって、可能になります。
ですから…人間としての戸籍等も用意して、普通に過ごさせてみよう、と」
「…戸籍、ね。…成る程、『実際の人間』というのはそういう意味なのね」
つまりは、“社会的に人間と同じ扱いにする”ということらしい。
そこまで聞いた遥は美幸の言っている内容を理解出来たらしく、軽く頷いた。
遥の目に理解の色が浮かんだのを確認した美幸は、一際、明るい表情で続けた。
「…ええ、そうなんです。
…ですが、私としてはこれはとても大きい変化であり、嬉しい試みでして…。
―――これが通れば…私は本来の意味で、美咲さん達の家族になれますから」
それが余程嬉しかったのだろう。
美幸は、そう噛み締めるように言うと、こちらまで微笑んでしまうような柔らかな
笑顔を浮かべた。
「勿論、実際に将来、アンドロイドの戸籍制度を施行する…ということになれば、
専用の制度を新設することになるらしいのですが…。
まだ、今はありませんからね…。
とりあえず、私は普通の戸籍に登録されることになります。
…まぁ、仮にアンドロイド用の戸籍が既にあったとしても、私の存在は秘匿対象
ですから、どのみち登録は無理だったのでしょうけれど…」
「…そう。それで…登録時の扱いは、やっぱり『美咲さんの娘』なのかしら?」
「あはは…。当初はそういう案になっていたのですが…。
結局は、『年の離れた妹』という扱いになることに決まったらしいです」
「…あれ? そうなの?
いつも嬉しそうに美幸っちに“娘”って言ってるのに、扱いは“妹”なんだ?」
戸籍等の真面目な話をしていたため、黙って聞き手に徹していた莉緒だったが…
その点が引っかかったために、話に割り込むような形でその疑問を口にする。
そんな莉緒に、少し困った顔で美幸はその理由について補足してきた。
「最近では、そう頻繁に出ているわけではないですが…。
美咲さんって、時折、メディアに顔を出す機会もあるような立場でしょう?
ですから、極力目立たないようにするために、遠い親戚を妹として引き取った…
という体にする方がトラブルが少ないらしいんです」
「あ~…言われてみれば、それもそっか。
未婚の有名人にいきなり娘が出来るのは、やっぱりマズイのかぁ…」
「まぁ…それはそうよね…」
目立たせないようにしたいのに、美咲にとってスキャンダル要素の高い立場での
登録は逆効果だろう。
…莉緒と共に遥も納得するような、至極、真っ当な理由だった。
「でも、私は美咲さんのキャラだと別に驚かないけどね~。
『実は……私には20歳になる隠し子が居たんだよ!』って言われても」
「…否定しきれないわ。あの人、時々とんでもなく破天荒なことを言うものね…」
莉緒のその発言に、微妙な顔をしながらも全面的に同意する遥。
この20年間に、より親しくなったことで逆に遠慮がなくなってしまい、結果的に
何度も美咲のイタズラの被害に遭っていたからだ。
…まぁ、最終的には美月と遥に加えて、美幸も含めた3人に集中的に説教をされる
羽目になるため、美咲的にはかなりリスクが高いことのようだが。
「まぁ…大体の事情は分かったわ。ふぅん…そう……戸籍に、ね。
ふふっ…それは美咲さんとしては、可能な限り急ぎたいところでしょうね」
「…流石は遥ですね。…恐らく、想像している通りの理由です。
だから、今回の件は主に美咲さんが主導して実施を急がせた…と言っても過言では
ないんですよ」
「ふふふっ…その辺りは相変わらずの親バカなのね?」
「…クスッ…そうですね。そこは、やはり美咲さんらしいです」
莉緒を置き去りにして、訳知り顔で笑い合う2人。
言葉の意味がよく分からなかった莉緒は、笑顔を浮かべる美幸達に理由を尋ねた。
「?? 何? どういうこと? 急ぐと何か良いことでもあるの?」
「それは簡単です。私が妹として登録されるということは、当然ですが普通の人間
として扱われるわけです。
その状態で―――例えばテレビにでも偶然を装って一緒に映って、そのタイミング
で『私の妹だ』と紹介してしまえば、国も急に介入しにくくなります。
MIシリーズのプロトタイプという立場を隠すべきである私が、“美咲さんの妹”と
して…人間として広く認知されるということは…
アンドロイドとしては途端に手を出しにくくなる…ということになるでしょう?
美咲さんからすれば、私を個人的な管理下に置く、絶好のチャンスなんですよ」
「うわぁ…美咲さん、えげつないね…。
それって、つまりマスコミを利用して無理やり美幸っちを自分の勝手に出来る立場
へ引きずり込むってことでしょ?」
「はい。国の方々からすれば、表向き世間を納得させられる理由も無く、ある程度
有名になってしまっている美咲さんを一方的に処罰するのも難しいでしょうし…。
だからといって、私の正体を公表すれば、新たな混乱を生んでしまいますからね」
研究者の間では、未だに“史上最も優れたアンドロイド”と言われている美幸。
正体を公表することで注目されるのは、国としても避けたいところだった。
商品として国の直下の指示で生産、販売されているMIシリーズの売り上げを
上げたいこのタイミングで、世間からプロトタイプの方が高く評価をされるのは
MIシリーズ全体へのマイナスイメージにもなりかねない。
「…予想では、小言を言われる程度に収まるだろう…ということです。
普通の人間として扱っても、代理出産さえ可能なことを検証出来るのなら、国の
側からしても当面の問題は無いはずですし…。
…何より、MIシリーズの評判が想像以上に良いらしくて。
そろそろ“私が居なくても問題ない”と判断される段階に来ているだろう、と」
相当な研究費をかけて開発された美幸だったが、その効果は掛かった予算から
考えても、既に十分過ぎるくらいに貢献出来ているらしい。
更に言えば、MIシリーズの生産も安定して可能になっている今、業界内での
評判が飛び抜けて良いとは言っても、新しい試験を行う際、これからもわざわざ
プロトタイプで実施し続ける必要も、特に無い。
それ故に、この先の時間を人間として生きて、そのまま人間として死んでいく…
というのなら、むしろ今後の存在秘匿をする分の費用が浮く…という考え方もある
だろう、という予想らしかった。
「…現金なものね。散々、試験だなんだと引きずり回しておいて…。
必要がなくなったら、『勝手に消えてくれるなら、手間が省ける』だなんて。
…なんだか、自分の親友が馬鹿にされているようで……不愉快だわ」
「ふふっ…そう言わないで下さい、遥。
その気持ちはとても嬉しいですが、そういう解釈をしてくれることで助かるのは、
むしろ私の方なんですから」
そういうものとはいえ、予想される国側の自分勝手な反応に憤る遥に、美幸は
少し困った顔でフォローする。
…実際、自由に出来る物事の範囲が劇的に広がるのなら、どう認識されていようと
構わないと美幸は考えていたからだ。
「…まぁ、美幸がそれで良いのなら、それはもう良いわ。
随分、前置きが長くなってしまったけれど、要はこの1年で別の相手が見つかるか
は置いておいて、まず保留にしている佳祥君とのことをどうすべきか…ということ
を相談したいのね?」
「はい。今日、2人にはその件について相談に乗ってもらいたいんです」
「…わかったわ。それなら、続きは明日にしましょう」
「…え? 明日…ですか? あ、まさかこの後に何か予定でも?」
現在は非常に忙しい身である遥のこと。
『無理をして時間を作ってくれたのでは?』と申し訳なさそうな顔をする美幸。
…しかし遥の方は、そんな美幸に少し呆れたような視線を送りながら、その理由を
告げた。
「美幸、何を言っているのよ…。
確かに、これが何処の誰かも知らない人物が相手なら、このまま話していけば良い
でしょうけれど…相手は佳祥君なのでしょう?
それなら、佳祥君も加えて、直接話を進めた方が手っ取り早いじゃない」
「ええっ!? 告白の返事に悩んでる状態で、なんで本人を巻き込むの!?
それ、もう相談じゃないよね!?」
遥の大胆な提案に、莉緒が思わずツッコミを入れた。
「ええ、そうね…。どちらかというと、相談というより面接…かしら?
佳祥君のことは私も知っているけれど…いくら良い子でも、それが美幸の婚約相手
に相応しいかどうかということなら話は別よ。
…私も相談された身として、きちんと見極めないといけないし」
「う、うわぁ…。何だか…とんでもない圧迫面接の予感がするよ?」
遥の眼光が『見極める』と言った瞬間に鋭くなったのを莉緒は見逃さなかった。
しかし、告白したことをバラされた上に、その告白相手の親友に面接される事態
になるとは…。
…莉緒はここにきて少々、佳祥が不憫に思えてきた。
そして当事者の1人である美幸も、遥のその提案に対して微妙な顔をする。
「あの……どうしても、佳祥君を交えて話す必要があるんでしょうか?
きっと、佳祥君の精神的にも結構な負担になると思いますよ?」
「そうでしょうね。…でも、私はそうすべきだと思うわ。
だって、その様子だとあなた…代理出産の件もそうだけど、新素体のこともまだ
佳祥君には話していないのでしょう?」
「え、ええ……それは、まぁ…」
「ただ単に“恋人として付き合う”のと、“結婚して子供を儲けることを前提として
付き合う”のとでは、天と地ほどの差があるわ。
しかも、換装予定の新しい素体は20歳の時の美月さんなのよ?
佳祥君からすれば、“少し前の母親と同じ容姿になる”ことになるでしょう?
しっかりとその事実を伝えた上で、それでも佳祥君は美幸との交際を望むのか…
まずはそれを確認しないことには、何も始まらないわよ」
「それは……そうかもしれませんが…」
確かに、その説明には納得出来ることもあるにはあるが…。
やはり、美幸としては佳祥への負担が大きいことが懸念されるところではあった。
告白の件を別にしても、佳祥は美幸にとって弟であり、息子でもあるのだ。
…その佳祥を精神的に追い詰めることにならないかが心配になる程度には、美幸は
佳祥に対して過保護だった。
しかし、悩む美幸に対し、莉緒が横からある意味無情な宣告をする。
「…無理だよ、美幸っち。
ここで拒否しても、タイミングがちょっと後にずれるだけで…
結局は遥ちんの圧迫面接は実施されると思うよ? 多分だけど…」
その莉緒の言葉には、驚くほどの説得力があった。
美幸が佳祥に対してそうであるように、遥も美咲と同様に、美幸に対して過保護で
あることは間違いないからだ。
「ふぅ…。…わかりました。
それでは明日、佳祥君をここに呼んで一緒に話しましょうか」
莉緒の指摘を聞いて思案した結果、渋々…といった表情で遥の提案を受け入れる
ことにした美幸。
何時になるかわからない後日ならともかく、少なくとも明日ならば、確実に遥の
佳祥に対する面接の場に自分も同席出来るからだ。
「…そう。ありがとう。私の提案を受け入れてくれて、嬉しいわ。
それなら、この話の続きは明日にしましょうか」
少しホッとした様子で、そう美幸にお礼を言う遥。
…だが、今度は莉緒がその提案に対して不満そうに口を挟んでくる。
「ねぇ…せっかく話がまとまりそうなところで、悪いんだけどさ…。
私からも、一つだけ良いかな?」
「…はい。何でしょうか?」
珍しく真面目な顔をしている莉緒の様子に気づくと、すぐに背筋を伸ばして話を
聞く体制をとる美幸。
…しかし、莉緒はそんな美幸にではなく、遥に向かって勢いよく言い放った。
「続きは明日って……平日じゃん!!
2人は大丈夫かもしれないけど、私は仕事だから参加出来ないよ!?
せっかく面白そうなイベントなのに……遥ちんだけズルイよ!!」
「………お…面白そうな…イベント……」
莉緒の発言の内容に、真面目な態度を取っていた美幸が思わず崩れ落ちた。
…そして、それに対して、遥は余裕の笑みを口元に浮かべながら答える。
「当然、わざとに決まっているでしょう?
あなたが居ない方が、明らかに話が円滑に進むもの」
…この後、莉緒は日付を変えるようにしつこく食い下がってきたが、遥は常に冷静
な態度で、それをあしらっていたのだった。
結局、遥の提案の通りに、この日の相談はここで終了となり、続きは翌日へと
持越しとなった。
拗ねる莉緒を美幸が宥めているうちに、自然と話題は各々の近況を含めた雑談へ
と次第に変わっていく…。
その会話は尽きること無く、3人の会話は日が暮れるまで続くことになった。
かつて、ほんの2ヶ月間、同じ学園に通ったクラスメイトというだけの間柄の
3人は、気付けばただ集まるだけで笑い合えるような親友同士になっていた。
その関係がそのままこうして20年近く続き、今でも支えあい、信頼し合える
ものとしてここにあることは、美幸にとってかけがえの無い、『宝物』だった。




