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電波時計

作者: 新米小説家

 時間の正確さが求められるようになった今の時代の時計は電波時計がほとんどだった。

エヌ氏は今の生活に心底退屈していた。なにもかも正確で分きざみで動くように決められていたからだ。そんなときエヌ氏はとびきりナイスなアイデアを思いついた。それは世界中の電波時計の時間を狂わせるということだ。


「なんていいアイデアだ。さっそく実行にとりかかろう」


だがすぐには実行にうつせなかった。


「世界中の時間を狂わせるといことはそれだけ時間と労力を要するということだ。時計を大きく狂わせるといことは、さすがにできそうもない。しかし数分ほどなら遅らせられよう」


考えついたのは時間を五分遅らせるものだった。それにしてもどうやって時間を遅らせようかエヌ氏にはまったく、見当もつかなかった。そこでエヌ氏は、知人のエル博士に相談することにした。


「···というわけで博士のお力をかりたいのです」


「たしかにおもしろい話だがそんな事をしても意味ないと思うのだが」


「そんなことおっしゃらないで、力をかしてくれませんでしょうか。頼みますよ」


「よかろう、君がそこまで言うのなら力をかそう。しかし問題点がある。どうやって時計を遅らせるのだ」


「そのために博士のもとへ来たのです。費用はこちらで持ちますし時間はいくらかかってもいいので、何かありませんか」


「無いこともないが。よし悪いが一月ほど待ってくれたまえ。出来上がりしだい連絡する」


エヌ氏は喜んだ。世界中の時計を五分遅らせたら何が起こるのだろう。五分遅らせればまず電車や飛行機などは大きく予定が狂うだろう。他にも学校、会社なんかも遅れるだろう。やっとあの分刻みの生活から解放されると思うと嬉しくてたまらなかった。

 気がつくと、一月経っていた。人というものは不思議だ嬉しいことがひかえていると、こうも時間を忘れてしまうものなのか。エル博士からの連絡も入っていた。さっそく行ってみると。


「遅かったじゃないか。こっちはもうできていると言うのに」


「申し訳ありません。いやあ。時間というものはたつのがはやいです。」


「それよりこっちにこい。三日ほどまえに完成したのだ。強力電波送信機という」


そこにはまるで、蓄音機のような形をしたものがあった。おそらく筒状の所から電波を送信するのだろう。


「どうだ、この装置で世界の時計を五分遅らせるのだ。しかし本当にいいのか。こんなことをしてもなにも変わらないと思うが」


「何をいってるのですか。はやく実行しましょう。」


エヌ氏のわくわくは頂点に達していた。ようやくあの生活から解放されるのだ。


「よし。では電波送信するぞ。三、ニ、一送信。」


すると、部屋の時計の針が反対方向に進んでいるではないか。時計の針は現在の時刻より五分遅れた場所を指し、何事もなかったかのように動き出した。


「すごい。成功だ。」


エヌ氏は喜んだ。だがすぐには気づかなかった。何も変化がないことに。世界中の時計を五分遅らせたのに。




当然だ。時計を遅らせたとしても、世界中で遅れているのだから。変わらないのと同じようなものだ。変わったことと言えば、日没の時間が五分はやくなったぐらいだ。

今回が初投稿なのでよろしくお願いします。

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