超時空名作劇場「裸の王様」
昔々、ある国に裸の王様がいました。
王様はマントひとつで城の中や城下町を練り歩き、その鍛え上げられた肉体を人々に見せびらかしていました。
そんなある日、王様は隣の国の有名な仕立て屋を呼びました。自分の筋肉にふさわしいマントを作らせるためでした。
「シースルーで頼む」
「は、はい……」
仕立て屋は王様のサイズを測っている最中、叫びたいのを必死に我慢していました。
そして城からの帰り道、町のはずれの森の中に入った仕立て屋は、深い穴を掘ってそこにむかって叫びました。
「王様は裸だー!!」
しばらくして、また仕立て屋は王様に呼ばれました。
「今度は黒の革で頼む」
「は、はい……」
そして城からの帰り道、町のはずれの森の中に入った仕立て屋は、以前掘った穴を掘りかえしてそこにむかって叫びました。
「王様は裸だー!!!」
そんな事が幾度かくり返されたある日。町のはずれの森の中、仕立て屋が掘った穴から叫び声が聞こえ始めました。
「王様は裸だー!!」
「王様は裸だー!!!」
みんな知ってることなので、特にだれも気にしませんでした。
ある日のこと。
裸の王様は今日も元気。
街の人々にその鍛え上げられた肉体を見せてまわっています。
その後城に帰り特注の鏡に向かってポーズを決める王様。
「鏡よ、この世で一番美しい肉体を持っているのは誰だ」
普通の鏡だったので、別に何も答えませんでした。
その様子を水晶球を通して見ている人物がいました。
「おのれ……この私よりも美しい肉体など認めん」
それは城から離れた場所の森を支配する森の魔王です。
森の魔王は王様の肉体に強く嫉妬していました。
「奴さえいなくなればこの私が一番だ……」
森の魔王は一計を案じました。
毒入りのプロテインを摂取させて、王様を亡き者にしようというのです。
森の魔王はその鍛え上げられた肉体にオイルを塗り、毒入りプロテインをもって王様の城へ向かいました。
堂々と城下町を歩く森の魔王。
王様の痴態に慣れた人々も、森の魔王に注目しています。
何しろ全身オイルで鈍く輝いています。ち○こも揺れるたびにきらきら。
明らかな不審人物です。
人々の視線を一身に受けつつ、森の魔王は城の門に到着しました。
城の門には衛兵がいました。
森の魔王は上腕二頭筋を強調しつつ衛兵に話し掛けます。
「王様に献上したい品があるのだ。通してくれ」
「帰れ」
すばやい切り返しでした。
しかし森の魔王はあきらめません。
「とても大切な物なのだ。通してくれ」
「おまえみたいなのは王様一人で十分だ。帰れ」
衛兵もつい本音が出てしまいます。
「ふふふ、この森の魔王にそのような口を利くとはな……おぼえておけ」
森の魔王は帰る事にしました。
日差しのとても強い日の事でした。
森の魔王は帰る途中、茂みで小用中ち○こを毒蛇に噛まれて死にました。
また別の日のことでした。
裸の王様はいつでも元気。
毎日のように人々にその鍛え上げられた肉体を見せてまわっています。
そして今日は王様主催の肉体コンテストの日。
肉自慢たちが集まって、その肉の美しさを競うコンテストです。
そこで王様は、全ての賞を独占。
ちなみに、参加者は一人だけでした。
その様子を水晶球を通して見ている人物がいました。
「ふ……今のうちに笑っておくがいい」
城の近くを流れる川を支配する川の魔王です。
川の魔王は、以前から王様の肉体の事をを邪魔だと思っていました。
「ふん、奴さえいなくなれば私がナンバー1だ」
川の魔王は一計を案じました。
毒入りのプロテインを摂取させて、王様を亡き者にしようというのです。
「ふふふ、森の魔王の轍は踏まぬ……」
川の魔王は、その鍛え上げられた肉体を、大きめのフードとマントですっぽり覆ってしまいました。
「ふふん、最後に笑うためにこの程度は我慢せねばな」
不敵に笑う川の魔王は毒入りプロテインを持って、王様の城へむかいました。
城下町を歩く川の魔王。
夏真っ盛りの焼け付くような日差しの中、呼吸も荒く全身を黒い布で覆った姿は、街ゆく人々の不安を無駄に煽ります。
川の魔王が城下町を歩き出して5分後、市民の知らせを受けた衛兵がやってきました。
「そこの君! ちょっと待ちたまえ!」
衛兵が川の魔王のマントを掴みます。
「何をする! 私を誰だと思っているんだ!」
「いいからこっちに来なさい」
川の魔王は威厳を込めた声で威嚇しますが、衛兵は特に動揺する事無く連行しようとします。
魔王としてのプライドを傷つけられた川の魔王は、マントを脱ぎ捨ててその肉体をあらわにしました。
「この私の肉体に許可無く触れることは許さん!」
「分かったからちょっとこっちに来なさい」
剥き出しになった魔王の肉体にすら動じない衛兵の様子に、川の魔王は怒りを覚えました。
「おのれ……ならば私の本当の肉体を見せてやろう! プロテインを摂取した後、ベンチプレス100回とスクワット200回行う事により発現する我が肉体の真なる威力におののくがいい!」
そう言うと川の魔王は持っていたプロテインの缶を開けて、手づかみで摂取し始めました。
即死でした。
季節は移り変わり、今はもうすっかり冬。
雪のちらつく城下町を今日も裸の王様がマント一つで歩き回っています。
その姿を見た子供が王様に質問しました。
「王様、寒くないの?」
王様はにこやかにサイドチェストのポーズを決めつつ答えます。
「少年、この肉はどうだ?」
少年は王様の圧倒的な肉量の重圧に気おされながらも質問を繰り返します。
「寒く、ない……の?」
「んんん! これならどうだ!」
王様は得意のフロントトラットスプレッドのポーズで少年に迫ります。
あわやという所で異常事態に気付いた近所の旦那さんが王様を食い止め、その隙に隣の奥さんが少年を救助。
少年はすぐにカウンセラーの処置を受けて事なきをえました。
その様子を水晶球を通して見ている人物がいました。
「ふん! 森も川も姑息な手段を取ろうとするから敗れ去るのだ」
城の裏の山を支配する山の魔王です。
「肉のついた男ならば真直ぐ正面から行くべし!」
そう言うと山の魔王は家を出てわき目も振らず直進、そのまま崖から落ちて死にました。