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第1話 御前会議

1910年(明治 43年)8月1日早朝、伊藤博文は宮内庁が手配したハイヤーで皇居に到達した。

前年の1909 年(明治42年)10月26日に、ハルビン駅で朝鮮民族主義活動家の安重根に狙撃され、一命を取り留めたものの、下半身不随となり、自力での歩行は不可能となっていた。

玄関で車椅子を用意して待機していた侍従は、ハイヤーのドアを素早く開けると、深々とお辞儀をし、「閣下、早朝よりお疲れさまです。早速ですが、陛下がお待ちしております会議室にご案内致します。」と言うと、伊藤を抱き抱えて車椅子に移し、天皇が待つ会議室に向けて車椅子を押し始めた。

絨毯敷きの廊下をしばらく行くと、重厚な観音開きの扉の前で立ち止まり、「伊藤閣下が到着されました」と侍従が言うと、扉の向こうで待機していた別の侍従二名が観音開きの扉を開けた。

部屋の一番奥に玉座があり、天皇は既に着席しており、玉座前の長方形の長テーブルには、天皇の左右に計11名の大臣達が着席していた。

伊藤に目を向けた天皇は、「傷がまだ癒えていないところ大儀であった。」と満面の笑みで言うと、正面の席に着席するように促した。

天皇の笑みとは反対に、首相の桂太郎は仏頂面であり、他の閣僚からも殺気に似た気配を感じた伊藤は、今一度出席している閣僚を見渡した。


内閣総理大臣 桂太郎(侯爵・陸軍大将)

大蔵大臣兼務


外務大臣 小村寿太郎(伯爵)


内務大臣 平田東助(子爵)


陸軍大臣 寺内正毅 (伯爵・陸軍大将)


海軍大臣 斎藤実(男爵・海軍中将)


司法大臣 岡部長職(子爵)


文部大臣 小松原英太郎


農商務大臣 大浦兼武(子爵)


逓信大臣 後藤新平(男爵)


内閣書記官長 柴田家門


法制局長官 安広伴一郎


いづれも複数の閣僚経験者であり、曲者ばかりだ。

首相の桂に到っては、伊藤自身の内閣で二回も陸軍大臣として入閣している。

会議開始前から憂鬱になった伊藤であったが、まだ聞かされていない議題が、大日本帝国の将来を大きく左右すると直感し、気持ちを引き締めていた。


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